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お爺ちゃんと犬

いつものように近所の池のある公園で写真を撮っていると、犬の散歩をしているお爺ちゃんがわたしの横で立ち止まった。気配に気づいたので撮影をやめ、「すみません」と頭を下げて、「どうぞ」と言った。カメラの前を通らないように気を遣っていただいて申し訳ないことをしてしまったな…

しかし、お爺ちゃんは立ち止まったまま此方をみている…

以前にも、この公園で写真の話しをしたお爺ちゃんだった。「どうもお久しぶりです」と言ったけど、お爺ちゃんは覚えていないようで、初めて会った時と同じ話しをしてくれた。若い頃に写真家になりたかったこと。アサヒカメラで優秀作品に選ばれたこと。浅間山を撮るならこの公園じゃ駄目だということ。夕焼けを撮るならあそこからとか。「写真は大変だから辞めた!」と言いながらも写真が好きなことは疑う余地がないこと。

プロの写真家を諦めて新幹線の運転手をやりながら稼いだお金でカメラとレンズを買い、家族だけではなく御近所の行事の写真を撮り現像や焼き増しまで自分でしていたという。写真はこだわればこだわるほど金がかかるものだ。

話しが永いので犬がクンクンないている。それでもおとなしく待っているので、しゃがんて犬に話しかけると、上から見るよりも歳をとっていることに気づく。
次に会うときも、お爺ちゃんは覚えてはいないだろうけど、同じように話しをして、お爺ちゃんと犬の名前くらいは教えてもらおうと思う。

最初の夕暮れは、お爺ちゃんに教えてもらった場所から。

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