カープダイアリー第8281話「藤井聡太棋聖とAIと交流戦の掟と新井カープと…」(2023年6月5日)

交流戦の掟。「あっという間に終わる」(新井監督)。3試合ずつの計18試合では“負け組”が“勝ち組”に完膚なきまでに叩かれる。仮に3連敗してしまうと、それっきり、もう同じ相手から取り返すチャンスはない。勝ち逃げされた者が沈む。

新型コロナによる開幕遅れのため中止された2020年を挟み19、21、22年と3季連続最下位のチームは最初からそういう目で見られる。

王将、竜王、名人、王位、叡王、棋王を含む7冠の藤井聡太棋聖(20)と対戦する群雄割拠のライバル棋士たちは、その対局で自ら疑心暗鬼に陥るという。考えなくてもいい局面でも「藤井さんだからきっと何かある」と深読みして悪手の方へ引っ張られる。その影の大きさに常に怯えているのだ。
 
その逆が今までのカープ。「交流戦に弱い」の定説により最初から不利な状況にある。決して見くびられている訳ではない。しかし対戦相手からは「カープにだけは負けられない」と思われているはずだ。
 
25年ぶりリーグ優勝した16年、交流戦順位は3位、リーグ連覇の17年は2位だったのに、3連覇した18年は10位に後退した。
 
18年は新井監督の現役ラストイヤー。そして出場機会も減っていた。ゆえに新井監督はベンチでその時の状況をじっと見守っていたことになる。
 
緒方監督4シーズン目のこの年、チームは開幕ダッシュに成功、交流戦前で最大12の貯金があり、2位以下を引き離していた。
 
圧倒的な攻撃力で2年連続優勝した打線の勢いはまだこの時も健在だった。交流戦前までで1試合平均4・6得点。ここまで3・4得点の今のチームより各段に迫力があった。
 
しかし交流戦では投手陣が踏ん張りきれず苦しい展開に。終盤のオリックス、ソフトバンク6連戦で5連敗を喫して順位を下げた。
 
京セラドームとヤフオクドーム(現PayPayドーム)で1-4、5-12、2-8、0-8、2-6、13-4という衝撃的な戦いになった。
 
この“敗北”は翌19年、新井監督引退後のチームに破滅的な結果をもたらした。
 
この年、5月の9連勝などで勢いづくチームは交流戦直前で貯金14。首位にいた。しかし楽天以外の5チームに、3連敗のオリックスも含めて負け越した結果、貯金が6に目減りして巨人に抜かれ2位に後退した。
 
それだけじゃない。
 
交流戦明け、1分けを挟み11連敗。
 
その主たる原因は緒方監督自身にあった。連敗が始まった横浜遠征で野間に「掌底打」を食らわせた。球団はその事実を把握しながら伏せていたが、
7月25日発売の週刊新潮が「11連敗の陰に秘された事件 怠慢選手に「嵐の掌底」連打!広島緒方監督の鉄拳制裁は是か非か」のタイトルの記事を報じて、事件が表面化したのである。
 
この話にはさらに続きがある。けっきょく4位に終わった緒方監督は10月1日、退任会見の席についた。ところがファンや選手らへの感謝の言葉を述べ4連覇を逃したことを謝罪すると一方的に会見を終了した。時間にしてわずかに4分。記者からの質問を受けずに会場を後にした。
 
そんなショッキングな幕引きは今なお尾を引き、緒方孝市氏が“野球に関わる”ケースは極めて限定的なものになっている。
 
“全国区”で見かけることはあっても、広島のテレビ、新聞では不思議なぐらいその姿を見かけない。2月のキャンプでも古巣を訪れるのは最後の方だし、回数も少ない。“事件”がボディブローのように効いているためだろう。
 
言い換えれば緒方監督の栄光のはずの5年間は、交流戦によってまったく別のものになってしまったことになる。
 
新聞テレビは、こうした過去の事実を知ってか知らずか、新井監督に「苦手の交流戦」の話を振り続けている。
 
ここまで散々痛い目に遭わされてきたオリックスとソフトバンク相手にともに1勝2敗。3連敗の危機的状況を見事にクリアしてきたという表現でいいかもしれない。
 
藤井聡太棋聖は「AIと共存している」と言われているが、すでにAI活用は汎用化されておりAIのおかげで強い訳では決してない。
 
仮に交流戦の行方をAIに予想してもらえばおそらくカープは今年もまた下位に来るだろう。ただし、分析するのは過去の対戦成績や選手個々の能力を数値化したものであり、緒方監督の掌底打事件のような類のグラウンド外での条件は含まれない。
 
ところが今のカープはソフトバンク第3戦の解説で黒田アドバイザーが指摘していたように新井監督の方針が選手個々の能力に関する“ブースター”(増幅器)としての役割を果たしている。
 
もちろん、今のチームもいい話ばかりではない。
 
この日、ファンから大いに注目されていた中村貴浩が出場登録を抹消された。

プロ初安打、初打点。晴れやかなデビューを飾った育成出身の期待の星は交流戦開幕スタメンに名を連ねた。しかしオリックス山本由伸の前には2打席とも4球で片付けられ、その後は代打などに出番が限定されることとなり、迎えたソフトバンク第3の九回、モイネロとの対戦を“ご褒美”に二軍再調整を告げられた。
 
それでも同じモイネロ相手に羽月が12球も粘ったように選手たちが持てる能力を限界ギリギリまで発揮する場面は枚挙にいとまがない。
 
新井監督は自分たちから相手の影を大きくするような発想をまずシャットアウトして自分たちのパフォーマンスの向上にのみまい進することを試みる。
 
藤井聡太棋聖は相手を気に掛けることなく碁盤とのみ向き合っているのだという。新井カープももしかしたら似た境地にあるのかもしれない。
 
それにしても…

いい加減、マスコミと称される面々もその取材手法を改めた方が良くないか?そのメディア自体がすでにAIによって自分たちの守備範囲をどんどん狭められている(AIニュースなどなど…)というのに、いまだ旧態依然…

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