カープダイアリー第8470話「限りなく透明に近いドジャーブルー、1480億円のシナリオ」(2023年12月22日)

イスラエルとハマスによる殺りくの都市が二カ月と半を経過して瓦礫の山と化し、ロシアに侵攻されたウクライナが戦時下での2度目のクリスマスを迎えようとする中、日本国内のメディアは山本由伸の動向に聞き耳を立てていた。

日本時間の朝から情報が錯そうしたから。だ。

「ヤンキースと9年契約、3億2600万ドルで合意か」という話がSNSにアップされたり、一部のメディアが「ロサンゼルスで開催されるアメフットのゲームと大谷翔平と山本由伸が観戦する」と報じたり…

そして日本時間の午後2時前、MLBが公式にロサンゼルス・ドジャースとの契約完了を伝えた。TBSは「ひるおび!」の天気予報のコーナーを「速報」に差し替え、NHK総合テレビも午後1時54分に生番組の中でアナウンサーが報じた。ネットでは日刊スポーツが一番乗りで午後1時44分にはニュースをアップした。

けっきょく大谷翔平と山本由伸が“同期”することになった。

WBCでともに戦い、ともに世界一になり、現地時間の12月14日にカリフォルニアの青空の下でドジャース入団会見を行った大谷翔平がその前日に、同じくドジャー・スタジアムで山本由伸と球団側との面談に参加していたことものちに判明した。

こうした流れから考えれば結末は見えていたようなもの。リアル二刀流の「後払い」契約の理由の一端も伺えようというものだ。

この夢のようなシナリオをリアルに変えるのも大谷流、ということか?

Dodgers strike again: LA signing

Japanese pitching star to $325M deal

米メディアはこの結末を、またしてもセンセーショナルに報じるしかなかった。シナリオの存在を知らなかったから、だ⁉

リアル二刀流が10年7億ドル、1015億円。パ・リーグ3年連続四冠、3年連続沢村賞右腕が12年3億2500万ドル、465億円。

ふたり合わせると1480億円になる。田中将大はニューヨーク・ヤンキースと7年で161億円、千賀滉大はニューヨーク・メッツと5年で103億円。西川龍馬と先日、福井県敦賀市でイベントに出席した吉田正尚はボストン・レッドソックスと5年で123億円、カープをリーグ3連覇に導いた鈴木誠也もシカゴ・カブスと5年で101億円だったから今回のドジャースが、いかに太っ腹かがわかる。

テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」はこの日の放送の中で日本人訪問客による「チケット価格」高騰について触れつつ「メジャーリーグ中継はドル箱コンテツ」であり、このふたりの単純計算による年俸合計がNPB12球団の全選手の4割に相当する、とした。

そして「日本とアメリカの選手の実力の差は非常に接近しているのに、ビジネスとしてのスケールの違いは依然として非常に大きい」と結んだ。

ただ、要らぬ世話だろうけども、ひとりのアスリート、選手が家族などを養いながら一生のうちに使うことのできる額には、よほどのことを目指さない限り自ずと限界がある。

2014年、街がクリスマスのイルミネーションに彩られるころ、黒田博樹さんは腹を決め、ヤンキースからの20億円オファーを振り切り、カープの鈴木清明球団本部長に「僕は、帰ります」と電話で告げた。

あれからもう9年。今では、カープのユニホームを着てともに戦った新井貴浩監督を補佐する球団アドバイザーとして活動しながら「カープで幸せな人生を歩ませてもらいました」と感謝の言葉を口にするのである。

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