カープダイアリー第8569話「新井マジックで未来を切り拓く…琢朗主義前面に押し出す横浜ブルー要警戒」(2024年3月29日

お立ち台からの景色いかがでしょう?
 
「サイコーでーす!」
 
2024年プロ野球の第1号を放った度会の、腹の底から出た声が超満員のスタンドに響き渡った。入場者数3万3312人は横浜スタジアム史上最多となった。
 
今永、バウアー、エスコバーが抜けて「順位予想」では低評価でも、あなどれない。なぜなら「青の風景」はマツダスタジアムの「赤の風景」をすでに上回っているのだから…
 
付け加えるなら、かつてマツダスタジアムで「悲願の優勝」を目指していた石井琢朗コーチの存在が大きい。その肩書はチーフ打撃コーチからチーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチに変わった。昨季、チーフ作戦兼バッテリーを担当した相川コーチは“ディフェンス”チーフ兼バッテリーと一歩引いたかっこうになった。
 
要するに“琢朗主義”がオフェンス面を司る。オープン戦12球団最多の24盗塁は完全にデザインされたもの、だ。
 
そんな新生ベイスターズの開幕投手は東。カープ首脳陣はありったけのデータと選手個々の特性を掛け合わせて昨季の二冠左腕攻略を目指した。
 
スタメン
一番セカンド菊池
二番センター上本
三番ショート小園
四番レフト堂林
五番キャッチャー坂倉
六番サードレイノルズ
七番ライト田村俊介
八番ファーストシャイナー
九番ピッチャー九里

2023年10月15日、マツダスタジアムであったクライマックス・シリーズ、ファーストステージ第1戦で、東から六回には犠飛で、八回にはスクイズで計2点を取った時のスタメンは…
 
一番セカンド菊池
二番センター野間
三番レフト龍馬
四番ファースト堂林
五番ショート小園
六番ライト末包
七番キャッチャー坂倉
八番サードデビッドソン
九番ピッチャー床田
 
…だった
 
昨季は6度交えて相手の4勝、対戦防御率も1・84。だが、三回に九里が空振り三振に倒れたあと、菊池の内野安打から天敵攻略に成功した。上本、小園が連続センター前ヒット。初めて開幕四番に指名された堂林も満塁のチャンスで中前適時打。坂倉も初球をうまく転がして右前適時打。なおも満塁でレイノルズがセンターに犠飛を上げた。見事なセンター返し攻撃…
 
初の大役に向けて万全の調整を重ねてきた九里にとって、この3点は大きなアドバンテージになるはずだった。ずっと目指してきた場所に11年目でやっと立てたのだから…
 
初回11球、二回8球でパーフェクトピッチング。しかし三回は下位打線に連打されて無死一、二塁とされた。ただし2本目は普通の一ゴロで、シャイナーが二塁送球を試みようとして内野安打にすり替えた。
 
「八番石上」はオープン戦チーム最多の5盗塁。ドラフト4位ルーキー琢朗主義がすぐに目をつけたことは容易に想像できる。悲願のショート固定プラン。当然、カープベンチも警戒する。ミーティングでの確認事項にその「足」があったことをシャイナーはちゃんと理解していなかった。
 
続く東は、打たれた動揺が静まらないまま打席に入ったのだろう。バントを3度ファウルにすると、バットを地面に叩きつけてベンチに戻った。
 
そしてこの試合、両軍最大のキーマンに打席が回ってきた。琢朗主義の今季の目玉、ドラ1ルーキー一番・度会。オープン戦打率・434もまた12球団トップだった。
 
坂倉の構えたミットよりすいぶん高目に入ったその初球、スライダーを「会心のスイング」(度会)で捉えられた。打球は青一色のライトスタンドに飛び込んだ。
 
マツダスタジアムでのオープン戦で2度、「一番度合」と対戦した。バッテリーは初戦が森下-坂倉、2戦目が曾澤-アドゥワだった。2試合で計5安打され、盗塁も2つ決められた。何度でも繰り返すが、琢朗主義恐るべし…
 
3対3同点のまま回は進み、八回、DeNAのマウンドにはウェンデルケン。レイノルズ、田村俊介、シャイナーは空振り三振に終わった。新井カープ最大の今季の目玉商品、田村俊介は4打席オール三振スタート…
 
その裏の島内の方は、2本の右前打と申告敬遠による一死満塁から決勝犠飛を上げられた。オースティンと佐野には154キロと152キロを打たれ、代打・大和にも154キロを持っていかれた。
 
九里は89球で降板したが、その気になれば100球でも130球でも投げられたはずだ。でもそれは長いシーズンを見据えた場合には“掟破り”になる。予定通りの継投が失敗したことは、あすからの戦いにも影響しかねない。
 
それでも試合後の新井監督は、いつもながらの前向きコメントを残した。“新井流”はこれまでも、そしてこれからも不変だ。
 
ただし、この1敗はただの1敗ではない。
 
今の時代にこんな表現をするメディアはいないだろうが、相手の“核弾頭”に、いきなりGOサインを出し、加えてウェンデルケン、森原の継投パターンの試運転も成功させた。オースティンはひとりで3安打、レイノルズとシャイナーは合わせて1安打。
 
野間と栗林がともにコンディショニング面で苦労していることを考えれば、プラス・マイナス。イコール相当の戦力差となってしまうようなことにはならないか?

あすの予告先発・平良に対して、森下に代えて黒原をぶつける新井監督は、継投策に加え打順変更も余儀なくされている。143試合全てで、今年もまた違う戦いを強いられる。「監督で野球は変わる」“マジック”の使い手として広く知られていた仰木彬さんの言葉は、そのまま今のカープにあてはまる。

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