カープダイアリー第8377話「床田に続いて森下も炎上…岡田阪神はクライマックス・シリーズに向け連日大入りのマツダスタジアムで情報戦着々…」(2023年9月16日)

9月の広島は暑い。この日の気温も32・8度まで上昇した。16日間で実に14度目の真夏日になった。

午後2時開始のデーゲーム。強い陽射しを浴びてマウンドに上がった森下は、20分間も投げ続けた初回だけでこの日の登板を台無しにした。前夜に続くチケット完売、大入りとなったスタンドも、さぞかし拍子抜けしたことだろう。

森下vs大竹。クライマックス・シリーズ仮想対決のはずが、いとも簡単に勝負あり、となったのだから…

初球に投じた真っすぐを快音とともに近本にライト前に弾き返された。一週間前の甲子園では二回に近本の二塁打などで4点を失い、五回でマウンドを降りた。リベンジするはずが、思わぬ入りになった。

一事が万事、最初でいきなりズッコケると、そこから立て直そうとすれば工夫やエナジーが要る。さざ波の心で中野を迎えた結果、真っすぐも変化球も浮いて早くも最初の四球を与えた。

三番の森下翔太も難敵だった。先週の甲子園で初回に四球を与えたのも、5月20日の同球場で九回、痛恨のサヨナラ打を許していたからだ。

この日は変化球多投で何とかゴロアウトにしたものの一死二、三塁になり、四番大山もまた歩かせた。大きく息を吹いたり、首を傾げたり、ポンポンと3者凡退で終わるはずだったのに、瞬く間にリズムが乱れたことになる。

9月のスーパー酷暑も手伝って一死満塁のピンチを招いたその立ち姿はすいぶん重そうに見えた。打席に迎えたのは直近3試合で8打点の佐藤輝明。外角に投じた初球のチェンジアップをこれもライト前に打ち返されてまず2失点、さらに七番坂本にも適時打されて初回3失点となった。

優勝を決めた岡田監督と阪神ナインの次なる目標はクライマックス・シリーズへの備えと個人記録。六番以降は控えメンバーだった前夜から一転、八番まで不動のオーダーに戻っていた。本来なら曾澤とのバッテリーで様々なテストを試みるはずだっただろうに、それが初回のもたつきによって不可となった。わずかに可能性の残されていた規程投球回クリアも、いきなり32球も要したことでもう届かない。

初回の各打者との対戦はそのあとの投球にも尾を引いた。三回にインローへの初球、カットボールをライト線二塁打にされた佐藤輝明には五回にもインハイ真っすぐをライト前に運ばれた。佐藤輝明ひとりに3打点を稼がれて、次打者ノイジーに投じた初球のインハイ、カットボールはレフトスタンド上階席前看板まで飛ばされた。3ラン被弾で締めて7失点。この回を投げ切ることすらできなかった。

ひとつ、言えるのはもう佐藤輝明は“かつてのテル”ではない、ということだ。速球系をインハイに投じて料理するスタイルはもう通用しそうもない。経験を重ねる中で見送る姿勢が良くなってきた左のスラッガーは例え近いところであっても投球との距離が取れるようになったようだ。

その傾向は前夜の床田のインハイ真っすぐをセンターフェンスぎりぎりまで運んだ三回の打席からも見て取れた。“敵”はどんどん進化している。

同様に進化が必要なカープ打線はまたしても大竹の前に5回3安打無得点に封じられた。

一週間前もやはり五回までゼロ行進で六回、相手のミスに乗じて1点を奪うのが精一杯だった。

先週はライアン以外左打者を並べて“不発”に終わったため、今度は秋山、田中広輔、小園,堂林、ライアン、田村俊介、曾澤、羽月の8人をぶつけてみたものの「いつものように、思ったところに投げられていない」(阪神・安藤投手コーチ)左腕に、今季6つ目となる勝ち星をプレゼントすることとなった。

七回にも益田武尚から8号2ランを放ったノイジーも「みんながしっかりつないで大竹投手もいいピッチングをして勝つことができて嬉しいです」と話していたから、“カープ大好き”になってしまうかもしれない。11勝中6勝がコイ料理の大竹同様、ノイジーも8発中半分がそうだ。

こうしたレギュラーシーズンの“傾向と対策”は間違いなくクライマックス・シリーズでの戦いに反映される。

岡田監督は六回途中から桐敷を、九回には岩貞を登板させたが、いずれも途中出場の九番坂倉からで「左対左」の駆け引きをそこで存分に見極めていたことになる。ともに無安打無四球だった。

戦力的には残念ながら阪神の方が相当充実している、という状況下にあって“情報戦”でも後手に回りつつあることが今回の2連戦で浮き彫りになった。幸いレギュラーシーズン最終の9月30日、10月1日にもマツダスタジアムで阪神2連戦が組まれている。ただし、岡田監督がその時も手の内を明かしてくれれば、の話だが…

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