カープダイアリー第8341話「龍馬の四番復帰、ショート小園台頭で新井カープの『オンリーワン』次なる挑戦へ」(2023年8月7日)

「すぐ、また二軍に戻されますよ」

上本は応援してくれる関係者にそう返したという。「八番センター」で2022年開幕スタメンに名を連ね、チーム快進撃の立役者として大々的に報じられていた頃の話だ。

上本は2012年ドラフト3位。1位高橋大樹、2位 鈴木誠也、4位下水流昂、5位美間優槻 、育成は1位辻空、2位森下宗。
 
緒方監督の5年間では合計5安打、1年で1安打…入団から9年目までで見ると合計35安打。

10年目の昨季は飛躍のシーズンとなり80安打打率・307でプロ初本塁打を含む2発18打点だった。
 
二軍の数字を見ても2016年26安打以降、17年8安打、18年18安打、19年4安打、21年8安打…
 
いつクビと言われてもおかしくない数字が並ぶ。
 
ただ2020年は二軍戦出場がない。同年は佐々岡監督1年目。コロナ禍によるパニックでプロ野球界にも激震が走った。選手の出入りが激しさを増す中「ユーティリティ」上本の存在感が増した。
 
それでも、スタメンで使うという発想は佐々岡監督の頭にはなかったようだ。朝山打撃コーチが「三振も少ない、四球も選ぶ、使ってみてはどうか?」と進言してもダメ。マイナス材料の方が強いイメージだった。
 
だから上本は自らの一撃で自分の未来を変えた。2022年3月13日、マツダスタジアムであった日本ハムとのオープン戦。サヨラナ3ランをかっ飛ばしてファンやベンチを驚かせた。
 
「パワー不足」と見られていた評価を覆したのだ。
 
佐々岡監督からバトンを受け継いだ新井監督は、そのまま主力メンバーに上本を組み入れ、しかも「ユーティリティではない、オンリーワン」とコメントして報じる側の変化も促した。
 
結果「オンリーワン」スタイルの四番が誕生した。「四番目」を公言した上本は「プレッシャーとか知ったこっちゃないんで…」とお立ち台の上で強がった?
 
一方で、新井監督は内外野でスタメンに起用し、屋外球場での“激務”を続ける0番の姿をつぶさに観察してコンディションへの配慮も必要、という見方を示している。
 
右脇腹痛からの復調を目指す龍馬が、前日6日にわざわざ1試合だけのために福岡入りしてソフトバンクとの二軍戦にスタメン出場したのもそのためだ。
 
龍馬が戻ってくれば即、四番での出場が濃厚で、そうなると上本のポジションはサード、ショート。ただ、ショートでは小園がその地位を固めつつある。

内外野を守るからこそライバルが多い上本だが、それは逆に言えばチーム内に確たるライバルが存在しないことにもなる。実際、野間とはグラウンド外でも食事したりするし、チームの重石である曾澤の2つ下だから、このふたりの関係も良好だ。

今季すでに55安打1本塁打を放ち盗塁もキャリアハイの7個。打点は13で昨季の18を射程に捉えた。
 
8月22日で33歳になる背番号0、次なる挑戦がまた始まる。

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