カープダイアリー第8320話「開幕から85試合を戦い貯金9で2位ターン、今”カープという大きな家”で起こっていること」(2023年7月17日)

横浜市内は35度を超える暑さになり、午後5時開始の横浜スタジアムも3日連続の熱量になった。

その結果、九回裏のDeNAは3日とも1点を追いかけて上位打線が打席に入るここととなり、マウンドには3日とも矢崎、受けるキャッチャーは3日とも坂倉となった。

そして3日とも超満員のスタンドからベイスターズファンの大声援。

多くのプロ野球解説者やメディアが最下位を予想する中で開幕を迎え、85試合目となったこの試合に勝てば2位ターン、貯金も最多の9となりリーグ最多の49勝目…
 
2022年11月14日、秋季キャンプに初めて足を運んだ新井監督が選手を集めて語った「お前たちはカープという大きな家にいる」とはこういうことだったのか、ともうそろそろ理解してもいい頃だろう。
 
勝利までアウト3つ。
 
フォークで佐野、牧を打ち取りあとひとり。しかし桑原をストレートの四球で歩かるのが矢崎…
 
桑原は前日の試合で八回に決勝点に直結する落球を犯した関根と同じ立場だった。七回、床田の放った中前打を弾いてエラーが記録され、頼みのバウアーが踏ん張りきれず秋山にタイムリーを浴びた。
 
横山投手コーチがマウンドにやってきて間を取り試合再開。打席には大和。強い打球が三遊間に飛んで、飛び込んだ小園から二塁カバーの上本へ。しかし送球が逸れて一、二塁になった。
 
小園は八回、抜けそうな当たりをダイブして掴み二塁に投げてアウトにしたばかり。ナインの「球際の強さ」を再々口にするようになった新井監督の目の前で同じようなシーンが何度も繰り返された。
 
3連戦を通じて同じ打順で出続けた選手は5人。上本、野間の一、二番と三番を任されている秋山、五番坂倉、そして七番小園だ。守ることへの課題を指摘されて二軍再調整となり、長らく太陽の下で汗と泥に塗れてきた。そんな51番がチームに欠かせぬ存在になるための、大事な時間も流れている。
 
マウンドに足を運び上本とグータッチした小園はそのあとファーストを守る松山と言葉を交わした。サードでスタメンの田中広輔は真っ先に矢崎に声をかけた。
 
ほとんど「暫定」の文字が消えかけている右腕は、いつものようにぴょんぴょんと2度跳ねてからサインの交換に入った。かつては跳ねたあとよく球が暴れていた。だが幾多の経験を積んだ昨季を経て最後を任されるようになったからには抑えてみんなと喜び合うだけだ。
 
スタメンマスク65試合目の坂倉が大きく構えて、戸柱への第1投はフォーク。セカンド上本からベースカバーの小園にトスされてスタンドは大きなため息に包まれた。
 
3日連続で“レッドファイトヨコハマ”を“満喫”した新井監督、藤井ヘッドは笑顔でナインを出迎えながら何を思ったか。

ヒーローインタビューの床田は「暑さに負けないようにしっかり準備して入りました」と頼もしかった。
 
投げては6回2/3をスミ1としてキャリアハイの8勝目をマーク。打っては五回の右前打と合わせてバウアーから2安打2得点。1年前の8月3日、走塁中に右足首骨折の重傷を負ったグラウンドを「あんまり足のことを気にせず」駆け回った。
 
ゲームセットの瞬間、グラウンドにいたのは、矢崎以外スタメンのままだった。
 
ライアンは二軍でも調子が上がらず、前日の2ランで9ホーマーのマットも打率は2割を切るかどうかという状況。“飛車・角にも金にも銀も桂馬にもなる”の龍馬もいない。さらにアンダーソンもいなければ「即戦力」と騒がれた面々もひとりも戦力になっていない。
 
大瀬良の勝ち星が増えない分を床田、九里、森下でカバー。すでに6敗を喫している栗林はこの日、今季初めて七回途中で島内を救援して新たな仕事場で自信を取り戻しつつある。
 
それもこれも全部含めて「カープという大きな家」。球宴を挟んで後半戦でもきっと同じように「最後まで諦めない」戦いを続けるのだろう、だが、ただ勝つ野球を目指すのではない。ベンチには高卒2年目の田村俊介や足の使える羽月が、ブルペンには完全復活の域に達しつつある中崎やどんな場面でも力の投球を続ける大道がいる。
 
ひとりひとりが一番輝くことのできる、そんな環境作り。長期スパンでは「日本一」を常に争うようなチームの骨格作り。そう、カープの家を支える「柱作り」も少しずつ進められている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?