カープダイアリー第8319話「新井カープ2位浮上、強さの秘密は手堅いデフェンス、そしてリーグ最多盗塁数など先の塁を狙う姿勢」(2023年7月16日)

午後5時プレーボールの横浜スタジアムは2日連続でチケット完売になった。そして連日の手に汗握る投手戦。八回にカープが勝ち越して3対2、九回時計の針が午後8時20分を回る頃、ボリュームマックスのベイスターズチャンテがグラウンドを包み込んだ。

ツーアウトランナー一、三塁で打席に牧。4球連続真っすぐのあと矢崎-坂倉のバッテリーが選択したのはフォーク。その間に一塁走者桑原が二塁へ進んだ。

6球目は三塁線ファウルでボールカウント2-2変わらず。7球目、坂倉のミットはインローだったが149キロが真ん中高目へ…芯で捉えられた打球はレフトポール際へと伸びて行っき、カープファンが両手を広げて「ファウル」…

8球目の前にサイン交換が長くなり、牧がタイムを取った。

栗林の離脱により暫定守護神に指名された矢崎が今季初セーブ目を挙げたのは5月9日の長良川球場だった。やはり八回に得点が入り1対0究極のセーブシチュエーション。チームの連敗を3で止めることに成功した。

以来、矢崎は無敗のまま計15個のセーブを積み重ねてきた。昨季は47試合で1セーブと17ホールド。この日がちょうど30試合目の出番となった。

開幕から四番に座る牧は巨人岡本和真に次ぐリーグ2位の16本塁打、リーグトップの56打点。この日の打撃はショート内野安打、右飛、右飛、四球。いい感じでバットのヘッドをボールの下にもぐり込ませていた。

力と力、レベル最高度の対決は8球目へ。牧が上体を捻じりながら快速球をかわしてフルカウントになった。

運命の9球目。絶妙の高さからボールになるフォークにバットが空を切り、牧はその場で右手を地面につくと尻もちもついた。しばらく座り込むDeNAの主砲、ため息のスタンド。一塁側ベンチではまた新井監督たちが喜びを爆発させていた。

前日は大瀬良7回1失点、今永8回無失点。この日は野村祐輔5回無失点、東7回2失点。

前日は九回に坂倉決勝2ラン。この日は二回にマット先制2ラン。そして相手のエラーでもらったチャンスに野間が決勝タイムリー…

「何とか必死に食らいついていきました」「目の前の1試合、自分たちのやれることを精一杯がんばってやってきたいなと思います」(ヒーローインタビューの野間)

よく耳にする「自分たちの野球」ではあるが、どうやら新井監督とナインはそうした目標と真摯な姿勢で向き合っているようだ。

「鬼門」とされた交流戦を9勝9敗で乗り切ったのもそう。そのあとリーグ戦に戻ってもこれで13勝7敗となったが実に12勝までが2失点以内と、Jリーグもビックリのディフェンスの固さを維持している。

一方、攻撃面ではこの日、相手ベンチの石井琢朗チーフ打撃コーチも舌を巻くようなシーンが繰り返された。

三回、二死一塁で打席に秋山という打撃重視の状況で上本が二盗。八回にはタイムリーの野間に代えて起用された矢野がまた秋山の打席の時に今度は三盗、さらに九回の二死一塁でも代走羽月が初球で二盗を決めた。

この結果、とうとうヤクルトの44盗塁を抜いてリーグトップの45盗塁。球団ワーストの26盗塁に終わった昨季から、あまりにも極端なこの変わりよう。それを可能にするのが新井監督の指導方針、ということになる。

ただDeNAを抜いて2位に浮上した新井監督は順位の変動には興味を示さないし、むしろ現状を踏まえていっそうのチーム引き締めを図ろうとしているように見える。

阪神が敗れて首位までゲーム差1となっても、大事なことはたくさんある。それはファンの笑顔のための最後まで勝負を諦めない姿勢を全員で貫くというファイティングスピリット。

3日前の東京ドームでは延長11回に5得点、この3連戦でDeNA球団プロデュース『BLUE☆LIGHT SERIES 2023 〜SUMMER〜』企画が展開中の横浜スタジアムでもそう。
 
敗れた三浦監督は「ミスからの失点なんで、そのあたりもしっかり隙を見せないようにしていかないと勝ちに近づいていかないのであすはまたしっかりとやっていきます」と振り返った。
 
ミスをきちんと突くことができるチームがより上位となり、突かれた側には痛手が残る。このカード第3戦は床田vsバウアー。また終盤まで縺れる展開が待っている。

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