「カープダイアリー第8303話「5連勝で貯金6、新井監督「選手は自信になったと思います」首位阪神までゲーム差3」(2023年6月29日)

二回に中断17分もあった雨のマツダスタジアム。この日一番の弾丸ライナーが九回、レフトポール際スタンドに飛び込んだ。打ったのは牧。48打点はリーグトップ、13本塁打も七回に代打で犠飛を上げた宮崎と並んで2位タイになった。

打たれたのは矢崎。5対2“安全圏”のリードで先頭の牧に対してフォーク3連投、ボールカウント1-2から高目に浮いた真っすぐを完璧に捉えられた。

かつての矢崎なら強烈なパンチを食らったあとは大いに動揺したはずだ。だが今はもう違う。後続を空振り三振、遊ゴロ、締めは3球三振でスタンドを最後にもう一度沸かせた。

ゲームセット直後、三塁側ベンチの三浦監督は帽子を脱ぎ、グラウンドに頭を下げた。表情に変化は見られなかったが内心は穏やかじゃないだろう。交流戦優勝の勢いで首位だった阪神を迎えて本拠地3連勝。意気揚々と乗り込んできた広島で3連敗となり両リームのゲーム差は4・5から1・5になった。

三浦監督を支える石井琢朗チーフ打撃コーチにとっても悔しい結果になった。先の阪神戦は3試合とも2点差勝ち。マツダスタジアムでは3試合とも中盤、もしくは終盤まで同点でそこからカープ打線の粘りに屈した。かつての教え子たちのその逞しい姿はその目にどう映っていたか…

一方の新井監督は試合後「強くて勢いのあるベイスターズに対して3連勝できたのは選手も自信になったと思いますし、あした移動ゲームになりますけどまた一丸となって戦っていきたいと思います」と話した。

「自信」になっているのは新井監督やコーチ陣もいっしょだろう。新体制でキャンプインしてまだ半年も経っていない。試行錯誤が続く中、現有戦力をどう引き上げていくか。選手が一番力を発揮しやすい環境とはどんなものか?

「抑えても打たれても勉強、次を見ていく」「うまくいかなかった時の次の登板や次の打席。どのようなマインドで臨んでいくのか…」
 
数ある新井語録が選手たちの背中を後押ししていることを否定する者はもういないはずだ。
 
その代表格がこの日が「彼にとってのきょうが開幕」(新井監督)だった野村祐輔。チーム投手陣最年長、5日前に34歳になったばかりだから、なおいっそう心の中では燃えていたに違いない。
 
6回74球で3安打無四球2三振の失点ゼロ。一度も球速140キロを超えていない中、チェンジアップ、カットボール、スライダー、カーブなどを駆使して坂倉とふたりで「100点のピッチング」(新井監督)を貫徹した。
 
昨年末の時点で新井監督からオープン戦での登板日を告げられた。その日は3月11日、マツダスタジアム初戦。結果は2回1安打無失点。しかし開幕は二軍で迎えることとなり、4月から5月前半にかけては極端に悪い状態が続いた。
 
そこから投球フォームの再点検が続き、6月14日のウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)で7回6安打無失点。三振も6個奪って力強い投球スタイルが戻ってきた。
 
交流戦明けの6月22日。由宇練習場に足を運んだ新井監督の前でソフトバンク打線、打者9人をピシャリと抑えて見せたのも、この日322日ぶりの勝利投手に近づく内容を残したのも、期待してくれる首脳陣とファンへ向けての恩返し…
 
七回のターリーが2点を失い(自責1、野間の返球エラー絡み)、勝ちが消えても「ほっとしています」という野村祐輔にはまた次回、勝利投手を目指す場が与えられる。昨季、先発9試合に終わった分、取り返したいものはたくさんある。
 
「選手がここだというポイントで集中力を高めて点数を入れてくれますので本当に頼もしい」(新井監督)という打線は2対2に追いつかれるとすぐにまた2点を取り返した。
 
エスコバーの代わりバナで野間が四球を選びクリーンアップへ。秋山は7球目で三ゴロに倒れたが龍馬の右前打で一、三塁の形を作り坂倉がエスコバーの足元を抜くタイムリー。代わった森原から田中広輔が左越えの適時二塁打を放った。
 
さらに八回の三嶋からも野間の二ゴロ併殺崩れの間に1点を加えた。3試合とも七回以降に大事な点をもぎ取った。終盤勝負へ持ち込む投手陣との歯車がうまく噛み合い今季2度目の5連勝で貯金最多の6、首位阪神へ3差として神宮球場ヤクルト3連戦、そのあとまたマツダスタジアムに戻って阪神3連戦…

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