カープダイアリー第8419話「ワールドシリーズ、日本シリーズ開幕…勝敗を分けたのはひとつの四球、ひとつの盗塁」(2023年10月28日)

現地時間で10月27日午後7時過ぎ(日本時間28日午前9時過ぎ)から米国テキサス州タラント郡アーリントン市の グローブライフ・フィールドで始まった第119回ワールドシリーズ。
 
その劇的な展開は「日本一」へ再度“照準”を合わせて2シーズン目に臨む新井監督と首脳陣にとっても大いに学びの場となったに違いない。
 
実に100億円以上の巨費を投じて2020年に開場したテキサス・レンジャーズの本拠地はアイゾナ・ダイヤモンドバックスを迎えて4万2472人のファンで埋め尽くされた。
 
両者はともにワイルドカードから勝ち上がってきた。史上3度目の下剋上王者決定戦だ。

ア・リーグ覇者のレンジャーズはレギュラーシーズン最終日にヒューストン・アストロズに逆転されて地区優勝をさらわれ、第5シードでポストシーズンに進出した。ワイルドカードシリーズではタンパベイ・レイズを、続く地区シリーズでボルティモア・オリオールズを連続スイープ。

リーグ優勝決定シリーズではアストロズを第7戦で下してリーグチャンピオンに輝いた。目指すは初のワールドシリーズ制覇。

22年ぶりのワールドシリーズ進出を果たしたDバックスもレギュラーシーズンではナ・リーグ西地区2位。しかし、圧倒的な強さを発揮した首位ドジャースには16ゲーム差をつけられた。どこかで聞いた話と似た状況だった。
 
結果、第6シードでのポストシーズンになったが、下剋上を地でいく戦いを続け最後はフィラデルフィア・フィリーズをやはり第7戦で撃破した。
 
自力で回るのはレギュラーシーズン得失点差+165のレンジャーズ。同じく-15のDバックスを率いるトーリ・ロブロ監督は、2000年にヤクルトに在籍した過去があり、スモールベースボールでオフェンス力、ディフェンス力両面での劣勢をカバーする。
 
Dバックスがレギュラーシーズンで記録した犠打数は今季メジャー最多。さらに盗塁数と盗塁成功率も同2位だった。
 
注目の初戦ではホームアドバンテージも追い風にして初回、レンジャーズが2点を先制した。
 
21歳の外野手、三番エバン・カーターのタイムリーでまず1点。四番アドリス・ガルシアが引っ張ってレフト前にタイムリー。若手と中堅・ベテランの融合…これもまた、どこかでよく聞くフレーズだ。
 
追いかけるDバックスは三回、連打に送りバントで一死二、三塁として一番コービン・キャロルの三塁打で1点差に詰め寄った。この打球、センターややレフト側の強烈なライナーになり、センターのレオディ・タベラスはホームなのにその距離感で目測を誤った。これも、どこかで見たようなシーン…
 
さらに二番ケテル・マルテの一ゴロではバックホームが逸れて野選になった。ミス絡みで逆転を許したレンジャーズはその裏すぐに追いついた。
 
しかし流れはDバックス。続く四回、先頭の五番トミー・ファムが勝ち越しソロ。五回には盗塁を絡めて加点した。
 
試合はDバックス2点リードのまま九回へ。六回から継投策のDバックスはクローザーのポール・シーウォルドのマウンドに送った。レギュラーシーズンの奪三振率は11・87、34セーブ…
 
しかし先頭を歩かせたのが運の尽き。三振ひとつを挟み二番コーリー・シガーに高目に投じた150キロ初球を完璧に振り切られた。スタジアム空間が興奮のるつぼと化すライトスタンド上階席にまで届く大アーチ…
 
同点で迎えた延長十一回、今度は主砲アドリス・ガルシアが外角一辺倒の5球目をライトスタンドに運んで劇的な幕切れとなった。
 
日本時間午後6時30分。京セラドーム大阪でオリックスと阪神の間で覇権を争う日本シリーズも始まった。
 
オリックス先発の山本由伸は四回まで2安打ピッチング。最高球速は159キロで付け入る隙はなさそうに見えた。
 
しかし五回、岡田マジックによってその投球リズムが狂い始める。先頭の五番佐藤輝明に152キロを中前打され、次打者ノイジーの初球で二盗を許した。初回の一死一塁走者中野の場面は三振ゲッツーで切り抜けたオリックスバッテリー。スタメンマスクの若月にも油断があったのかもしれない。
 
ノイジー右飛で一死三塁となり打席に迎えたのは七番DH渡邉諒。初球に投じた内角への155キロで詰まらせた打球が中前に落ちた。

三回の第1打席ではカットボール2球とフォークで空振り三振。渡邉諒は押されっぱなしのように見えたが「まっすぐに強い」というその持ち味が、大事な場面で発揮されたかっこうになった。

短期決戦は何本打つか、ではなくていつ打つか…。アリの一穴を開けたそのバットにスタメンが告げられたのは試合前ミーティングの時だったという。

先制点を許した山本由伸は両軍ベンチと3万3701人が見守るスタンドが驚くほどモロかった。

そのあと阪神の送りバント失敗があったにもかかわらず、一番近本に156キロをジャストミートされて2失点。続く中野にはフォークを逆方向に弾き返され適時打計3本で4失点。六回にも二死から木浪、坂本に連続適時打されてKO降板となった。

メジャースカウト陣垂涎の右腕と投げ合った村上の方は四回までパーフェク投!で7回2安打と無傷のままブルペン陣にバトンを渡した。

阪神はけっきょく完封リレーと思想的な形で第1戦を取った。しかも8対0という戦前には誰も予想できなかったようなスコアになり、安打数も阪神の13に対してオリックスは2。与四球も阪神は村上の1だけ。オリックスは全5投手が1つずつの5。

岡田監督はレギュラーシーズンで築き上げてきたものを、日本シリーズ初戦の大一番でもそのまま表現した。
 
3年連続パ四冠の右腕を立て後手に回った中嶋監督と水本ヘッドが、西勇輝と宮城の予告先発となった第2戦でどんな策を講じてくるか?岡田監督が敵地での先勝の流れをそのまま生かすのか?
 
それにしても村上はカープ打線にとってはますます手強い存在になりつつある。小園と坂倉の井端ジャパン組や野間、秋山、そして龍馬は日本シリーズの熱戦を目の当りにしてどんな思いでバットを振っているだろうか…

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