カープダイアリー第8381話「先頭打者四球で沈んだ大瀬良の90球と、七回ピンチで右長距離砲3門真っ向勝負で無四球11連勝の東の92球」(2023年9月20日)

開幕から137試合目である意味、新井カープの力量が試されることになった。2ゲーム差に迫ってきた3位DeNAとの直接対決最終戦。DeNAの先発は10連勝中の東。

龍馬、野間、菊池、上本を欠く打線は、発熱による体調不良で秋山までも不在となった。

代わりに一番センター中村奨成。ほかにいくらでも選択肢はありそうなものだが…

オーダー
センター中村奨成
セカンド矢野
ショート小園
ライト末包
ファーストライアン
サードマット
キャッチャー曾澤
ピッチャー大瀬良

だが思案した打順を試さないうちに、この日の勝敗はほぼ決っしてしまった。立ち上がりの大瀬良が先頭の大田をフルカウントから歩かせたからだ。

桑原に初球で送りバントを決められたあと、佐野は見逃し三振に仕留めた。

二死一塁で打席に牧を迎えると、真っすぐで2ストライクを奪いながら5球目のカットボールは外に大きく外れ、6球目のフォークもさらに外側でバウンドして曾澤のミットに収まった。これでフルカウント。

佐野の時までは平常心だった大瀬良の顔から一気に汗が噴き出てきた。日中は30度を超える夏日が続く。ビジターパフォーマンスのベイスターズファンが奏でる応援歌もまた熱かった。

そしてフルカウントから投じたこの日20球目。次の瞬間、100打点やリーグ最多安打を叩き出す牧のバットから快音が発せられ、センター方向に伸びる打球はそのままスタンドに飛び込んだ。

大瀬良は何度でも同じ“ミス”をしてきた。5年連続の栄誉となった開幕投手の舞台では初回、ヤクルト村上に2ランを打たれた。DeNAとの前回対戦は6日のマツダスタジアムだったが、やはり初回に佐野に右中間スタンドに持っていかれた。

一週間前の神宮球場でも初回に先頭の塩見を歩かせて二番オスナに2ランを許すと、それだけでは終わらずにまた村上に柵越えされた。

塩見も村上もフルカウントから。だから”何度でも同じことが繰り返されている”としか言いようがない。

けっきょく大瀬良は六回途中、2失点のまま90球でマウンドを降りたが、いきなりの2点は敵に塩を送るだけで、自軍にとっても何のプラスにもならない。

打線は今季、東に5度の対戦で3勝を献上し、一度も土をつけることができていないから案の定、五回ワンアウトまでパーフェクトに抑えられた。

右越え二塁打の末包が初めて塁に出たあとは、ライアン、マットの後続が倒れた。

3点目を追加された直後の七回には、先頭矢野の打ち上げた打球がセカンド後方に落ちて二塁打になった。小園の一ゴロも内野安打で無死一、三塁。堂林の遊ゴロも適時内野安打にすり替わりなおも無死一、二塁、一発出れば逆転…

末包、ライアン、マットと東のガチンコ勝負は、空振り三振、右飛、空振り三振に終わった。昨季と今季合わせて14打数6安打1本塁打と左腕を打っている末包に送りバントをさせず「打て」を命じたベンチの強気の采配は、しかし否定されるものではないだろう。

「七回が始まる前からヤマ場になると(バッテリーを組む)祐大と話していて、1点取られましたけど祐大が強気のリードで引っ張ってくれたおかげで、何とか1点で食い止めることができました」(7回92球で自身11連勝となった東)

その言葉の通り、DeNAバッテリーは今季、ホームランを打たれているその3人に対してゾーンの中でのせめぎ合いを挑んできた。東はけっきょくこの日、今季3度目の無四球試合となった。そこが大瀬良との大きな違いだろう。

敵の1失点ピッチングによって新井監督は攻撃面で策を講ずることがほとんどできなくなり、継投の方は矢崎、島内、栗林をビハインドでも注ぎ込んだ。クライマックス・シリーズではこういうケースも出てくるだろう。

ただ“スミ2”の重圧は想像以上で、けっきょく1対3のスコアでDeNAに押し切られた。本来なら3対1で勝っておくべきだったのに、だ。

これでDeNAの自力2位の可能性が生まれ、カープの自力2位が消滅した。新井監督は「自分のマネージメントミス」と故障者続出の責任をかぶったが、故障につながる疲労が蓄積されるのはマツダスタジアムの暑さ対策の遅れと無関係ではない。

この日は彼岸の入りで実り多き秋に向け、レギュラーシーズン残すは6試合。DeNAの動向とともに10月まで、息の抜けない日々が続く。ナイトゲームではオリックスがリーグ3連覇を決めた。新井監督は「水本さんや梵」が待つであろう日本シリーズへの挑戦権をつかむことができるだろうか。


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