カープダイアリー第8467話「限りなく透明に近いドジャーブルー、Cut my veins, and I bleed Dodger blue.」(2023年12月19日)

「マイナスからのスタートになると思っております」

福岡PayPayドームでの入団会見に臨んだ山川穂高の眼は半開きのように見えた。やはり、まともにカメラの方を向くことができないのか?

西武から国内フリーエージェント権を行使して、新天地で勝負をかける。4年契約で総額16億円(金額は推定)の大型契約と見られる。背番号は25。

ホークスファンから球団へ、抗議の声が殺到している。三笠杉彦GMはその事実を認めた。

シーズン最中の5月、強制性交の疑いで書類送検された山川穂高は8月に不起訴処分になった。だが、ダーティなイメージは払しょくできていない。

9月3日には西武から無期限の公式試合出場停止処分を受けた。ファンの目には「無期限」がいとも容易く解除されたように映る。

WBCで縁の下側に回った山川穂高はいい仕事をした。準決勝のメキシコ戦。3対5、2点のビハインドで迎えた八回、一死二、三塁で代打犠牲フライを放った。

この一打が九回の先頭大谷翔平の二塁打と、続く吉田正尚の四球と、村上宗隆のサヨナラ打へとつながった。

だが「世界一に貢献した」とは、もう誰も言ってはくれないだろう。

似たような話は海の向こうにもある。

今季、カープ打線も4度対戦したトレバー・バウアー。2021年2月、ロサンゼルス・ドジャースと3年契約してせっかく新たな活躍の場を手にしたのに、6月になって暴行疑惑が表面化した。

SNSで知り合った女性に傷だらけの顔の写真を公開され、訴えられた。2020年までの8シーズンで75勝を挙げ、前年にはサイ・ヤング賞を受賞していたのに、だ。

2022年2月、地元のロサンゼルス警察は刑事訴追しない方針を明らかにしたが、ロサンゼルス・タイムズはすぐに「球団は復帰させない姿勢を明確にすべき」とのコラムを掲載した。

ドジャーブルーに染まる資格なし。MLBでの居場所はなくなり、DeNAが救いの手を差し伸べた。
 
日本国内に再び目を転じると、この日午前10時ごろ、都内の自民党安倍派事務所と二階堂派事務所に東京地検特捜部が乗り込んだ。強制捜査の手が入ったことで自民党派閥の政治資金パーティーの裏金問題が刑事事件に発展した。前代未聞。
 
この先、仮に政治家本人が「シロ」と判断されても、国民の抱く悪い印象は変わらないだろう。今年の漢字は「税」ではなく「裏」だという声も多い。
 
山川穂高の場合も、残念ながら裏の顔の方がファン、国民に浸透し過ぎた。打てば打つほど逆風が増すかもしれない。
 
「こどもに夢を与える」のが大人たちの使命であるとするならば、裏表があるような人物をクラブや組織、あるいはメディアがヒーロー、ヒロインに担ぎ上げることはできない。

Cut my veins, and I bleed Dodger blue.
 
2021年に亡くなった元ドジャース監督、トミー・ラソーダ氏の言葉だ。
 
その崇高な精神は、おそらく崇高な肉体にしか宿らない。
 
そのふたつを併せ持つのがリアル二刀流、ということになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?