カープダイアリー第8327話「新井カープの強さの秘密、それはマツダスタジアムスタンドより盛り上がる一塁ベンチに渦巻く赤いエナジー」(2023年7月24日)

新井監督の野球観、どんな逆境も跳ね返す赤の魂…

投げて、守って、打って、走って「ファンをわくわくさせるようなゲームをやりたい」と就任当初から話していた新井監督。その本質的な魅力は、監督自身が周りをわくわくさせる存在であり続けている点にある。

監督が難しい顔をしていたなら、それを中継カメラが抜くから、ファンも楽しい気持ちにはなれない。選手にとってもその一挙手一投足は気にしないようにしていても目に入る。

新井監督には見目指すべき監督像も、手本とする監督像もない。ただ「自分の思うように動き考える」のだという。

チーム7連勝となった前日の中日戦。そのハイライトは二回の秋山先制二塁打や九回の栗林92日ぶりのセーブでなく、実は八回の1点だった。

六回に加点して2対1、七回に1点差にされて八回の攻撃は上本から。もう1点あるか、ないかでぜんぜん九回の重圧ぶりが変わってくる。だからどうしてももう1点が欲しい場面…

中日3人目の上田に対して先頭上本はサードライナー。返すこと、塁に出ることをともに求められる四番が倒れて五番坂倉。ボールカウント1-1からファウルのあとの4球目、アウトローにバットを合わせて上田の頭上を抜くヒットで出塁した。

次打者田中広輔は7月9日を最後にヒットなし…しかし巧く右前に転がしてチャンスを広げた。実にこれが20打席ぶりのヒット…

打席には六回、代打で犠飛を挙げた松山に代わってショートの守備についていた矢野。見事センター前に打ち返すと、坂倉が懸命に三塁を回って最後は伸びてくる宇佐見のキャッチャ―ミットをかわしながら左手でホームベースの角にタッチした。

満員に膨れ上がった夏休みのスタンドが一番沸いたのがこの時で、しかしファン以上に沸いたのが一塁ベンチだった。全員が手を突き上げて身を乗り出し、しかもその前の方には新井監督がいて藤井ヘッドはベンチ前に出ていた。

控え選手の渾身の一撃に、みんなでこれだけ盛り上がるのは「家族」が同じ方向を見ている証拠。「なんでカープは強いのか?」とはよく聞く声だがその答えは、マツダスタジアム一塁ベンチ“夏休み観察日記”をつければ見えてくる。もちろん夏が終わればそれなりに“宿題”もたまってくるかもしれないが…

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