カープダイアリー第8597話「ウエスタン・リーグ打撃三冠王の未来」(2024年4月26日)

マツダスタジアムで常廣が投げた。ウエスタン・リーグ、中日戦終了後、ファンのいなくなったスタンドをバックにして、3度目のシート打撃登板。シャイナーや中村貴浩ら打者8人で安打性の当たりは…ほぼゼロ、最速151キロで三振も5つ奪った。

ゲームの方での最大の注目株は国立大出の新人、佐藤啓介。3の2で連続試合安打を15まで伸ばし、ファンから熱い拍手を送られた。

打率・422はリーグトップ。出塁率・519もトップで、数字だけなら超一流レベル。長打率・547と合わせてリーグ三冠だ!

だが、当然ながら簡単にハイ!育成卒業…とはならない。「去年の中村貴浩の例もある」(球団関係者)から、だ。

中村貴浩は2022年ドラフトで同じ育成2位指名。オープン戦とウエスタン・リーグでの打撃が認められて5月に支配下登録された。そして5月23日のマツダスタジアムで、中日福谷からプロ初ヒット!しかし一軍通算では6安打止まりだった。

それだけではない。2月の日南キャンプでは主力組に抜擢されたが、デビュー当時の鮮烈な打撃は影を潜め、沖縄にも乗り込んだものの結果的には3月から二軍でやり直し、となった。

一番の課題は「逆方向でも強い打球が飛んでいたのに、当てにいく打ち方にねっている」(関係者)こと。結果が欲しいあまりに、自身の良さを消してしまったのである。

同じことは今の田村俊介にも言える。オープン戦3本塁打は両リーグ2位タイだったし、3月の侍ジャパンでも初球から思い切りのいいスイングをかけていた。

しかし開幕戦スタメンで4打数4三振したため、自慢のスイングから思い切りの良さが消えた。三振したくないから変化球を当てに行ってゴロアウトという打席が増え、ライト方向への目の覚めるような打球とは縁遠くなっている。

全体を俯瞰する新井監督もそのあたりことは重々承知だから、田村俊介に直接助言しつつ、同時に相手の先発に応じて久保修や上本を外野でスタメン起用し、“逆転の構図”を描く宇草も積極的に試している。

どうしても一軍では“結果が欲しくなる”。そして打撃の形を崩していく。宇草が柵越え2発をライトスタンドに叩き込んだのは、正にそうした邪念を振り払っているからこそ、の芸当ということになる。

佐藤啓介が一軍の舞台でも安定した打撃を続けるための条件は、今、身に着けているスイング軌道のメカニズムを自身でよく理解し、仮にそれが崩れた場合にも修正可能な引き出しを複数有していること。

一、二軍の首脳陣も今、そこを見極めているのではないだろうか。ただ、二軍とはいえ今以上の打撃成績をキープするようであれば、支配下登録をためらう理由はなくなる。もうすぐ訪れるコイの季節、元気に泳ぐ若ゴイは多いほどファンの夢は広がる。

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