カープダイアリー第8602話「マツダスタジアム早くも2度目の延長十二回、午後10時26分ゲームセットを振り返る」(2024年5月1日)

時計の針はとっくに午後10時を回っていた。空席の増えたスタンドの声援は鳴り物なし。2対2同点で迎えた延長十二回、ラストの攻撃は先頭、野間の低目いっぱいを叩く右前打で始まった。八、九回、そして延長に入って阪神ブルペン陣にノーヒットに抑えられてきた。正に最初で最後のチェンス、代走は羽月…

五回に1点差に迫る右犠飛を上げた「四番・堂林」が送りバントを決めた。七回に同点適時打を放った小園は申告敬遠で一死一、二塁になった。

マウンドには阪神8人目の浜地。この回、8球で大ピンチを迎えたことになる。さらに三回から出場の二俣の打順で代打松山が告げられた。

一塁側ベンチはサヨナラに備えてみんな前列に集まっていた。ファンはチャンステーマ大合唱。3球目空振りでボールカウント1-2と追い込まれた松山のバットが4球目の内角カットボールをうまく前でさばいた。

大きな放物線はライトポール際へと伸びていき、スタンド横のファウルゾーンに落ちた。続く5球目は高目の真っ直ぐ。打球は前進守備のレフトノイジーの守備範囲にしか飛ばなかった。

すでに投手8人をつぎ込み、代打だけでも宇草、石原貴規、田中広輔、田村俊介を投入した関係でベンチに残っているのは投手ではケムナだけ、野手は坂倉だけとなっていた。

午後10時35分、「代打坂倉」を告げた新井監督の顔には「全て手は尽くした」と書いてあった。マウンドに集まっていた阪神ナインが各ポジションへと戻っていった。いよいよ最終勝負。三塁側ベンチの岡田監督もグラウンドに向けて指示を送った。

「さっかくらぁ、さっかくらぁ」

マツダスタジアムに大コールが響き、そして浜地の投じた14球目もカットボール。ミートした打球はセンター前へ…しかし近本が突っ込んできてスライディングキャッチで4時間36分のロングゲームを締めた。その瞬間、新井監督も岡田監督も厳しい表情、という訳ではなかった。

本拠地に阪神を迎えての3連戦は初戦が雨天中止、第2戦は床田を立てながら1対7完敗、そしてスライド登板の大瀬良をもってきた第3戦は痛み分けに終わった。

それにしても延長12回ゲームは早くも4度目という“異常事態”。4月13日の東京ドームでも2対2のまま引き分け濃厚だったが、最後に中崎がサヨナラ打を許した。
 
19日のマツダスタジアムでは巨人相手にスコアレスドロー。九里が6回を投げ、そのあと矢崎、島内、栗林、益田、塹江、中崎にホールドがつき、最後は黒原だった。

28日のバンテリンドームナゴヤでも0-0で引き分けたが九里が7回を投げ、島内、栗林、矢崎、森浦、塹江で無失点リレーを完成させた。

この日は六回から中崎、矢崎、島内、栗林、塹江、森浦、黒原でゼロを並べた。これだけ出番が多いと、ひとりぐらいもたついて失点、はよくある話だがそうはなっていない。キャンプ、オープン戦を通じて準備してきたことが、血となり肉となっているのだろう。黒田球団アドバイザーも手ごたえを感じているはずだ。

前回、降雨コールド5回完投ゲームから中9日で一、二回に1点ずつを失った大瀬良にも反省が必要ではあるが、勝ちきれなかった責任の一端は打線にもある。

前回対戦では2回KOに成功した阪神先発の伊藤将から奪った得点は、相手のミスに乗じた五回の1点のみ。初回24球、二回29球、三回20球と球数を放らせながら序盤で攻略しきれなかった。

先頭打者ホームランのあと、けっきょく完投を許した前日の村上と一緒で、二の矢、三の矢を撃たないとゲームの主導権を握れない。25試合で引き分けの数は早くも昨季に並ぶ4になった。首位を行く岡田阪神を追いかけながら5月末からの交流戦も乗り切るためには、接戦の取りこぼしは今後“禁止”ぐらいの心構えが必要になる。

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