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本郷の裏路地を歩いてみたら、新たな発見ばかりだった話。

 2月から会津美里町の本郷地区で暮らしています。自宅から徒歩圏内には会津本郷焼で有名な瀬戸町通りもあり、昭和の雰囲気の残る裏路地は、私のお散歩コースでもあります。

 しかし歩いていると、ここが道なのか私道なのか分からないことも多く、歩いて良いのか不安に思うこともしばしば。何せみんな車なので、路地裏を歩いている人がほとんどいない!誰に聞けば良いのか…… 

 そんな時、出会ってしまったのです。本郷の裏路地スペシャリストに。ご自身もご結婚と共に本郷地区に移住されてきた、会津美里こらんしょwomanの竹内さん。今回は一緒に、ブラタモリさながらに本郷裏路地を歩いてご案内していただきました。

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水路を張り巡らされたまちのつくり

 本郷のまちを歩いていると、水が流れる音が聞こえてきます。注意してみると、細い水路が張り巡らされているのです。水路が多いな、とは思っていましたが、なぜ水路があるのかまでは考えていませんでした。

 昔、何度か大火に見舞われた瀬戸町エリア。まちの南側で大火があり、まちから向羽黒山を越えて燃え広がったこともあったそうです。確かに南側は比較的新しい家が多く、蔵などもあまり見かけません。一方北側は、今でも古い町並みが残っています。

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 そのため、水路は火事の火消し用に整備されました※1。道路伝いに四方八方へ張り巡らされています。二股に分かれる所では、片方を板でふさいで火災現場の近くの水路へ水を多く流すように、板用の溝が今でも残っています。実際にお話を伺わないと気づかないことも多く、新たな発見でした。

※1.水路についてご指摘を頂きました。文献等確認してみると、農業用水として用いられた水路から、生活用水として町中に張り巡らされたのが発端のようです。生活用水の一部として、火消し用にも使われていたのかもしれません。(2021/06/04加筆)

常勝寺に祀られる磁祖と陶祖

 宗像窯さんの細い路地を奥へ進んで行くと、驚くほどに満開の枝垂れ桜に出会いました。桜の木があるは常勝寺。立派な鐘楼もあり、年越しには除夜の鐘が鳴り響くそうです。

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 このお寺、1947年に本郷で陶器を焼き始めた陶祖「水野源左衛門」と、1800年に磁器を焼き始めた磁祖「佐藤伊兵衛」が祀られています。東北最古の焼き物の秘境、と言われる会津本郷焼。陶器と磁器が一緒に作られている産地は珍しいそうで、その始まりはこのお寺に祀られたお二方でした。

お地蔵公園には、本郷焼が満載

 赤い頭巾をかぶったお地蔵さんが五体、入り口に鎮座しているのが、お地蔵公園です。ちょうど、常勝寺さんの奥側にあたります。この五地蔵は、大火で亡くなった職人の方々を祀られているそうで、それほどに大きな火事であったことがうかがえます。

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 そしてこの公園、会津本郷焼で溢れています。入口近くの水飲み場は、茶色地に紫の色が流れた感じの特徴がある焼物。どなたが作られたのか名がなかったため分かりませんが、素敵な水飲み場になっています。

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 奥の東屋には、本郷焼のテーブルセットが。こんなに大きな作品に出合うことも少ないので、驚きです。こちらは富三窯さんの作。青いちょうちょの模様がかわいらしい。

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 まちの中に、焼物が普通に点在しているのが、面白い。これからも散歩の途中で探してみたいと思います。

圧倒的な迫力に魅せられる登窯

 五地蔵の前の小道を登っていくと、観音山の麓に出て、本郷のまちを上から見下ろせます。遠くに明神ヶ岳や山々の姿も。

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 そんな観音山麓に、宗像窯さんの登窯が鎮座しています。(見学の際は宗像窯さんに一言お声がけを!)町指定の文化財で、全長約20m、幅約5m、窯内七室を有し、その景観は圧巻です。

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 東日本大震災の際にこの窯も崩れ、前の三室はその後、宗像窯登り窯再生プロジェクトが立ち上がり、再建されました。焼物のまちと言われていますが、現在はガス窯や電気窯が主流で、登窯があるのは二か所だけ。いつも散歩している道から一本裏へ入ると一気に別世界で、歴史を感じながら歩けるのも、本郷の魅力です。

蔵の窓が下に付いているのは

 観音山麓を北側に下ると、こちらは大火の影響も少なく、昔ながらの家や蔵が多く残っています。そしてどの道も車のすれ違いが難しいくらい細いのです。車で窯元さんへ向かう時、いつも対向車がいないかドキドキしながら運転をしています。

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 そんなこのエリアの蔵は、窓が低い位置に付いています。これまであまり気にしたことがなかったのですが、言われてみれば普通の蔵は上にしか窓がないのかも…… これは職人さんが、陶器や磁器を作る際の手元が明るく見えるよう、明り取りの窓を低い位置に作ったのだからだそう。蔵も焼き物のまち仕様になっているのです。面白い!

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 一人で歩いていた時には全然気にならなかったことも、竹内さんと一緒に歩くことによって、新たな発見の連続です。

水車公園への近道は、秘密の小道

 そして更に進んで行くと、もっと細い小道。ずっと、ここは私道だと思っていたのですが、実は誰でも通れる道でした。教えてもらわないと分かりません…… 

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 味のある垣根とブロック塀の小道を進んで行きます。ちょうど満開の桜の木の下で、おばあちゃんが桜の写真を撮っていらっしゃいました。「水車公園へ行くの?」そう声をかけられたその先に、ひっそりと水車公園は広がっていました。

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 この公園、駐車場がありません。さっきの小道から来るか、小川を渡る橋から来るかの2通りで、ご近所の方だけの穴場なスポット。車も来ないため、子供たちが思いっきり遊びまわるには良い空間ですし、大人ものんびりピクニックには最高です。小川に面して今は閉められているかやの窯さんの煙突と焼き物の並んだ姿が、なんとも言えません。

 歩いていて思いましたが、本郷は公園が多い。旧本郷町時代に、たくさん整備されたそうです。水車公園も初めて知ったので、他にも探してみたいと思います。

疫病退散と細い小道と

 ぐるりと歩いてきて、たまに軒先で見かけるこのお札。何かなー、と思っていたら、疫病退散の元三大師の護符でした。私の地元ではあまり貼られていなかったので、とても新鮮。愛嬌があって、なんだかわいい。この時期なので、特に貼ってあるのでしょうか?

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 小道ばかりの本郷の裏路地。歩いて回るにはぴったりの場所でした。逆に車だと、うっかり見落としてしまうところばかり。竹内さんのお話をお伺いしながら歩くと、新たな発見もたくさんで、自分でももっと歩いてみようと思いました。

 ただ、一人で写真を撮りながら歩いていると、怪しい人に見られるので、それだけがネック。竹内さんは移住してから子育ての合間に、ベビーカーを押しながら歩いていたらしいです。本郷のみなさま、写真撮りながら一人歩いているのは私です。どうぞ、優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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