(読了)聖なるもの

同人誌といえど侮るなかれハイクオリティでガツンと殴られた、八束さんの一冊。お通販先を先にご紹介したい。

https://yatsukami.booth.pm/

(以下、ネタバレを含む)

この作品をひと言でいえば、絶叫、二言で言えば魂の咆哮、だと思う。

すごく狭いコミュニティと文化や風習にしたがって生きている女の人たちが描かれるのだけど、これは……百合では?女と女の物語では?と私は思いました。違っていたらごめんなさい。そのときは教えてください。また咀嚼したいです。

フォロガングとナサカの間に入りたいらしいエベデメレク。おまえ〜〜〜そういうところだぞ!!!となぞの斧を振りかぶってしまう。いけない……。

構図上エベデメレクが現状の全てを変えるには自分はどうしようもないという諦観が態度に出る描写がされているのですが、それはフォロガングもナサカも他にも登場する人物の背負いきれない痛みの縮図だったりするのでそのあたりの配慮や回収も上手だな〜と思いました。とはいえ地獄で常に業火の火は尽きない……。

文章で1番好きなのは134頁で行間を広めに取られた一節。あれは最初から読み通した人へのご褒美だと思っているのでぜひ読んでみてほしいです。ありがとうございます。うまい。

もう後半はナサカを直視するのがつらいくらいに辛い目に合うんですけど、中でもおそらく標高もそれなりの高さにある神殿に登っていく場面はちょっと古代文明みを感じました。儀式めいてる。

花を置かれがちな場面は全て、灰へと置かれていて、辿ってきた世界の色味を表す映像的な作りをされています。

作中で繰り返し使われる、欠けたもの、欠けたこと、というのはひとひとりひとりが生まれながらに持ち得る権利と孤独を指すと私は思いました。このお話は多層の意味合いを含んだ物語なので、いずれ誰かの目に止まっていることでしょうし語られることでしょうと思うのですが(そしてその日をたのしみにしているのですが)、拙い感想ですが送ります。

書いてくださってありがとうございます。とても映像的で、写実的で、慈しみに溢れたお話でした。


お読みいただきありがとうございます。


2020/03/22追記・編集 登場人物ナサカを誤って記述していました。訂正申し上げます。




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