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返事とは、呼びかけに誠実に応じること

れんこんnote 024

すぐに返事をする習慣

 孫たちは、何かを頼んでも、すぐに返事をくれないときがあります。
 たいていはゲームやテレビに夢中になっているときです。

 ママが「〇〇してちょうだい」と言っても知らんぷり。ママは何度も頼みます。仕方なく、じいじが「ママの言うことを一回で聞きなさい」と言うと、孫たちは「はあい」と動き始めます。
 ママもパパも子どもたちの呼びかけに返事をしないことがありますので、子どもたちはママやパパのするとおりにしているだけかもしれません。

 すぐに返事をする習慣を身につけていないと、周りの人たちが不愉快な思いをする場面が多くなります。すぐに返事をする習慣を身につけていない本人も、不愉快な思いや不利益を被る場面が多くなるでしょう。
 孫たちに「すぐに返事をする習慣」を身につけてもらいたいと思うのですが、じいじが子育てに口を出すことは控えなければなりません。
 そこで、口で注意するのではなく、私自身がすぐに返事をして行動するよう心がけています。孫たちと会話する中で「すぐに返事をもらえたら、気持ちいいよね」などと、さり気なく刷り込みを試みています。

返事一つから、心持ちが聞こえる

 返事一つから、その人の心持ちがわかります。
 高校の入学式では、学級担任が一人一人の生徒の名前を呼び、校長が呼名された生徒たちの入学許可を宣言します。呼名されたときの返事の仕方で、生徒一人一人のやる気や性格などがわかります。

 入学式のときにさわやかな返事をしてくれた生徒たちに、はがき表彰状を贈ったことがあります。
 次のような一文を贈りました。

 返事一つに 心の明るさ暗さが表れます
 返事一つで 意志の強さ弱さがわかります
 返事一つが 人を温かくも冷たくもします

 気持ちが落ち込んだときには
 空元気でもいいですから
 凛とした声で「はい」と返事をしてみましょう
 自分の「はい」の返事で元気が回復してきます

 人の心をつかむのは
 多くの言葉ではなく
 心のこもった返事一つです
 あなたの返事一つが家族を仕合せにします

 たかが返事
 されど返事です
 あなたが身につけた凛とした返事は
 あなたの生涯にわたる大きな大きな財産です
 いつまでも返事一つを大切にしてください

気持ちの良い返事を引き出す

 返事とは呼びかけに応じて返す言葉ですから、気持ちの良い返事を引き出すには、呼びかけを工夫する必要があります。

 高校のマラソン大会でのことです。
 その学校のマラソン大会では、生徒たちは20㎞の距離を走ります。ゴールは、学校です。
 私は、スタートの合図をしてから、応援をしながら学校に戻り、ゴールする生徒たち一人一人に声をかけました。
 最初は「ご苦労様」と声をかけていたのですが、生徒たちは応答するのが難しかったらしく、さまざまな返事が返ってきました。「ありがとうございます」という生徒もいれば、「疲れた~」と応える生徒もいました。
 そんなとき、「ただいま~」と帰ってきた女子生徒がいて、思わず「お帰り~」と声かけていました。
 それから「お帰り~」と声をかけるようにしたら、ほとんどの生徒たちが「ただいま~」と返事をするようになりました。

 返事は、呼びかけ一つで変わるもののようです。
 どう呼びかけるか、呼びかけにどう応じるか、を大事にしていきたいと思います。

 「ただいま」「お帰り」の他にも、応答が対になった言葉があります。
 「行ってきます」「行ってらっしゃい」、「いただきます」「召し上がれ」などです。
 「おはようございます」「おはようございます」、「お休みなさい」「お休みなさい」などのように同じ言葉を返す返事もあります。

 こうした応答を大事にしていきたいと思います。

すぐに返す返事とあいまいな返事

 何かを頼んだら、すぐに「はい」という返事が返ってくると気持ちいいものですが、そうではないときもあります。
 難しい仕事を頼んだとき、体育会系のノリで「はい!わかりました」と即答されると、「本当に理解しているのか」「任せて大丈夫か」と心配になります。

 課長の頃、部長から立ち話で仕事を頼まれたことがありました。「はい、わかりました」とも「はい、すぐにやります」とも言わず、「はい、そうですか」などとあいまいな返事を返した覚えがあります。
 頼まれた仕事はとても難しい仕事でした。通常の仕事を中断して、課の総力を挙げて取り組まなければならない仕事だと判断しました。ですから、あいまいな返事しかできませんでした。

 上司は思いつきでものを言うことがあります。
 そこで、このときは「もう一度部長から依頼されたら、本気で取り組むことにしよう」と考えました。
 結局、上司から再度の依頼はありませんでした。上司も難しいと判断したのでしょう。

 呼びかけに対して、すぐに「はい」と返事することは大事です。
 しかし、呼びかけの内容を考えずに即答するのは、責任ある態度とは言えません。

 ちなみに、私が部下に依頼や指示を行った際には、ときどき進捗状況を聞くことにしています。
 「思いつきの依頼や指示ではないよ」というメッセージを伝えるためです。

呼びかけには誠実に応じたい

 家族や友人、仕事仲間など、様々な人たちから呼びかけに応えながら、私たちは生きています。
 ですから、呼びかけには可能な限り誠実に応じようと思っています。
 そして、「はい」という返事には、「呼びかけに全力を尽くして誠実に対応します」という気持ちを込めています。

 これまで、頼まれたら、基本的に「はい、引き受けます」と応えてきました。
 無理難題な頼まれごともあったのですが、お引き受けして何とかしてきました。
 教育長や特任教授、学長と、随分無謀な依頼をお引き受けしましたが、必死でした。
 知らない世界に飛び込み、それでも何とかしてこれたのは、呼びかけに誠実に応えようとした私を周りの方々が助けてくれたからだと思っています。
 そのおかげで、未知の世界をいろいろと知ることができ、愉快、痛快、爽快に生きてこれた気がします。

 というわけで、これからも、呼びかけには誠実に対応したいと思っています。
 でも、対応する資質・能力をごくわずかしか持ち合わせていない上に、歳を取り馬力が落ちていますので、私に呼びかける際には、ぜひ私が対応できる範囲での呼びかけをお願いいたします。

追伸

 呼びかけるのは、「人」だけではないようです。
 「人生」からの呼びかけ、問いかけに応えよという話もあるようです。
 しかし、「人生」からどんなふうに呼びかけられているのか、難しくて私にはよくわかりません。

 「体」からの呼びかけであれば、私は感じることができます。
 「体」から「体である私は生きようとしているが、心や意識であるあなたは生きようとしてるか」と呼びかけられていると、私は感じています。

 「生きること」を課せられ、今こうして生きていると、私は痛烈に感じています。
 私は課せられると反抗したくなる性質なのですが、「生きること」そのものが反骨なので、「生きよ」という呼びかけには、苦しくても誠実に対応していこうと思っています。

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