イタリア語と英語で振り返る映画「スポットライト」名シーン③
「読者に興味を持ってもらえると思います」
ボストングローブ紙のバロン新編集局長は、「スポットライト」チームをやる気にさせ、ついにカトリック教会と全面対決する覚悟を決めます。
その第一歩として、ゲーガン神父による性的虐待事件(いわゆるゲーガン・ケース)に関する捜査資料を開示するよう裁判所に申し立てるというのです。(これらの資料は「秘密保護」措置が取られ公開されていませんでした。教会の力が裁判所にも及んでいたのかもしれません)
これは新聞社としても相当腹を括らなければならない決断でしょう。厳密に言えば「証拠開示請求」は教会を相手取った訴訟というわけではありませんが、読者はきっと「ボストングローブが教会を訴えた!」と受け取ります。
バロンさんは、役員室に行って、申し立てすることに対する了承をもらいに行きます。果たして社主のリチャードさんはゴーサインを出してくれるのか。
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リチャードさん「調子はどうだ。落ち着いたか」
伊:Come stati, Marty? Ti stai ambientando?
英:How are you, Marty? Settling in?
バロンさん「ええ」
伊:Si, credo di si.
英:Yes, I think so.
リチャードさん「それで、用件は?」
伊:Bene, Cosa posso fare per te?
英:Good. What can I do for you?
バロンさん「ゲーガン事件の証拠開示を申し立てようと思っています」
伊:Vorrei sfidare la cortina di protezione intorno al caso Geoghan.
英:I'd like to challenge the protective order in the Geoghan case.
(息を飲む)リチャードさん「・・・カトリック教会を訴えるのか」
伊:Vuoi fare causa alla Chiesa Cattolica?
英:You want to sue the Catholic Church?
バロンさん「申し立てですが・・・そうです」
伊:Stiamo solo presentando un'istanza, ma....si.
英:We're just filing a motion. But yes.
リチャードさん「・・・重要なんだな?」
伊:Credi che sia importante?
英:You think it's that important?
バロンさん「はい」
伊:Si, davvero.
英:Yes. I do.
リチャードさん「そうなると間違いなく教会が強硬に反撃してくるぞ。うちの購読者の53%はカトリック信者なんだ。目を引くことになる」
伊:Perche, chiaramente la Chiesa ci farà una guerra spietata. Che non passerà inosservata ai nostri abbonati. Il 53% sono cattolici.
英:Because, obviously, the Church will fight us very hard on this. Which won't go unnoticed by our subscriber base. 53% of them are Catholic.
バロンさん「興味を持ってもらえると思います」
伊:Credo che potrebbero essere interesati.
英:Uh, I think they'll be interested.
リチャードさん「・・・・・・・・分かった」
伊:Va bene.
英:Okay.
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繰り返しになりますが、社主にとってもこれは重い決断だったことと思います。
筆者も昔、かなり巨大な相手を取材対象とした調査報道プロジェクトに参加したことがありますが、まだ成果が出ていない段階のとき、会社の役員が血相を変えて「誰に許可取ってこんな取材してんだ」と喚いてきたことがありました。
その後、そのプロジェクトがとてもうまくいって世間の評判になったときには、その役員が「これは私が最初から陣頭指揮を執っていたのです」と吹いて回っているという噂を聞きました。
だせえ・・・
まあ、うまくいけばいいんですけどね。
ちなみに私がいつもこのnoteの最後に書いてる「Andrà tutto bene.」は「全てうまくいくさ」という意味のイタリア語です(^_^)
ではではまた。 Life goes on.
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