世の中には世界の秘密をひっそりと抱えている人間が少なからずいるようである。彼らは大変に思慮深くひとつひとつの言葉を大切にしている。

世界は人の数だけある。密かに信じているような事柄を他人に話すことはほとんどない。胸の奥の方にしまっているがいつでも取り出せる場所にある。困ったことがあれば即座に掌に取り出して落ち着きを取り戻す。そうやって今日も生きている。

ふらりと現れた初老の男と会話のテンポを合わせゆっくりと話していると去り際にそっと耳打ちをされる。
あなたには教えてあげます。これは真実です。
曜日にはそれぞれ決まった数字があります。
困った時は頭の中でその数字を思い浮かべるのです。たとえばね、信号が赤ばかり続くとする。
そんな時に役立ちます。今日は金曜日。
金曜日は9、土曜日は1、日曜日は7です。
大切なことですよ。日曜日はラッキーセブン。
覚えましたね？
それでは。

金曜日は9、土曜日は1、日曜日は7か。
心の中で呟いていると同僚が入口の方から紙切れを持って歩いてくる。
これ、さっきの男性の方からです。
大事なことが書いてあるから渡してくれって。

そこには月曜日から日曜日までの数字が書かれているのだった。
数字と曜日で紐付けて考えるのは
13日の金曜日ぐらいだな。

あのーすいませーん。
はーい。
エプロンのポケットに紙切れを滑り込ませる。

金曜日は9、土曜日は1、日曜日は7。

世界にはまだまだ私の知らない秘密が隠されているのかもしれない。


目覚めた途端霧は晴れていて悲劇モードを鼻で笑って書き散らかした残骸を全部埋葬したくなる。あぁあれ全部嘘です。闇の化身でもあるまいしなんて言ってけらけら笑っていられればたくましく生きられるのに。無かったことにするには量が多すぎる。

世界はいとも簡単にひっくり返る。
あなたがあの時みたいにいなくなったって
明日からも楽しく生きられる。
こんな嘘も平気でつけるようになるぐらい
世界はいとも簡単にひっくり返る。