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意味なんて

何故あのひとは夢の中でたこ焼きを焼いていたのだろう。しかもあんなに慣れた手つきで。
朝起きてからずっとそのことを考えている。

真っ暗な駅のホームに小さな電球がひとつぶら下がっていて薄暗い灯りの下であのひとはただ黙々とたこ焼きを焼いている。
人々は皆うなだれて窓の外を見ることもない。
音もなくゆっくりと電車は通り過ぎていく。
あ、たこ焼き。あんなにたくさん。
誰も買わないのかしら。
あんなに心を込めて焼いているのに。
わたしなら全部買うのに。
この電車、いつになったら停まるのかしら。
もう何度も同じところをぐるぐると周っている。

何故あのひとは夢の中でたこ焼きを焼いていたのだろう。しかもあんなに慣れた手つきで。
朝起きてからずっとそのことを考えている。
たこ焼きが好きなのだろうか。
いや焼くのが好きなのだろうか。

たぶんいやきっとこの夢に意味なんてない。
今夜はたこ焼きにしよう。

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