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触れない

冗談めいた言葉でしか
心の内を明かせなくて
なんとなくこぼした言葉を
わたしが余所見してる間に
ひとつふたつと拾い上げて
否定するわけでもなく
馬鹿にするわけでもなく
それはもう
仕方がなかったんですよと
彼女は笑った

聞いていないようで聞いていて
知らないようで知っている
自ら触れることはなくとも
ひとつ言葉がこぼれれば
怒ればいいのにと怒ってくれて
どうしてあなたひとりだけが
今なお傷つけられなければ
いけないのかと

無理に明るく振る舞うことも
何事もなかったかのように
平静を装うことも
どちらも不自然でしかないから
他愛もないことで笑い合う
涙に暮れるわけでもなく


冗談めいた言葉でしか
心の内を明かせなくて
いつの間にやら溢れ出た
言葉が言葉と繋がって
そしてわたしは今日もまた
テレビの前でひとり泣く


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