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事業内容と組織の関係性・組織スタイルの模索と強化を考える

Hello, people.
今回のテーマは【人事戦略と組織開発とティール組織】です。

組織開発に必要性を感じていても、目の前の仕事に忙殺されて着手できないと考えるリーダーや、組織を変えたいが経営者に発言しづらいと感じている社員の方も多いのではないでしょうか。
そこで実践的ビジネスコミュニティ GDA(Good Days Association)ではウェビナーを開催。企業のリーダー・組織に対してコーチングや人事コンサルティングを提供しているCo-Creations茂木健太さんと、自身の妊娠を機に自社にティール組織を取り入れたという株式会社へノブファクトリー谷脇しのぶさんに登壇いただき、それぞれの事例をまじえながら、企業ごとに応じた組織スタイルの模索や強化を考えるためのヒントを伺いました。

リーダーの妊娠を機にティール組織へ。「へノブファクトリー」の事例

谷脇 当社は2004年に起業して17年目となります。スタートはweb制作会社、それから自社ECの運営で1億円達成しましたが、その後売り上げが落ち、web制作の経験を生かしてサイト運営業務にシフト。さらに運営だけでなく成果を上げるカスタマーサクセスに転身し、現在コアメンバーは8名、その他も合わせてスタッフは計16名います。2018年からティール組織として歩み始め、現在はゼネラリスト集団として全員が完全リモートで仕事をしています。
組織を見直す前は、正社員17名のうち女性11名いて、役員3人が全員女性でした。年齢層は20代後半で人生の過渡期ともいえる時期。結婚や出産で退職してしまうかも?という懸念がありました。また2014年当時はweb関連企業の社員は7対3で男性が多く、徹夜や自宅へ持ち帰っての仕事が多い業界で、女性がずっと働くのは難しいとも感じていました。
その後2016年に新しくweb制作会社を設立すると、すぐ妊娠、出産。残業や土日出勤も当たり前という忙しさの中で、制作と営業ディレクターの仲が悪い、指示なしでは動けない人もいる、など経営者である自分が穴を開けられない状況でのことで、組織を見直す必要に迫られました。

社長も投票で決める会社をやってみた(WAVE出版/武井浩三著)

そんなときに出会ったのが『社長も投票で決める会社をやってみた』と言う本です。著者はダイヤモンドメディア・元代表の武井浩三さんです。帯にある「働く時間、場所、休みは自分で決める。上司も部下もなし。全員の給与は公開」という言葉に衝撃を受け、これを取り入れたいと感じました。実際に会いにいって話を聞き、武井さんが主宰する塾に通って勉強もし、実践して2021年にはティール組織を7割達成することができました。

ティール組織と一般企業との違いはいろいろありますが、指示やアドバイスはあっても命令系統がないところが特徴的です。さらにティール組織の上には「ホラクラシー」という自由すぎる組織のあり方も存在し、私もそれを学びました。自社に取り入れたところ、人と比べて給与に不満を持つ人や、指示がなくなって動けなくなる人も出るなど問題は起きましたが、3年かかってある程度形になりました。個人的には自分の仕事がなくなり、役割変更ができた。スタッフの目的意識がはっきりして働き方が自由になった。自主性が出て多角的に仕事が進むようになった。などのメリットがありました。組織を見直さずにいたら会社はなくなっていたと思いますから、踏み切って良かったです。

個人の価値観を組織のビジョンに重ね合わせる。「Co-Creations」の事例

茂木 組織開発や人事の責任者として、経営者やリーダー向けに1対1のコーチングを提供、組織が成長するタイミングで組織開発や人事についての支援もし、個人が変わることと、組織が変わることの両方をサポートしています。仕事のコアとなるのはミッション・ビジョン・バリューの策定と展開です。形だけではなく実行するためにはどうするかを大切にしています。クライアントはかつては大企業がメインでしたが、今はベンチャー企業が中心です。
またEC事業者向けのwebサービスを提供するシッピーノ株式会社にも兼務で関わっています。こちらでもリーダーのコーチングからスタートし、ピュアな人事というよりコーポレートに対するコーチとCHRO(最高人事責任者)の両面を担当し、人事だけ担当するというよりは、社長と対等に社長のゴールをより広げることをやりながら、それを組織人材開発の観点から実現することをサポートしています。
トップ、融資、全員を巻き込みながら組織のミッション・ビジョン・バリューを描き、実現するための未来の組織図を描くイメージです。コロナ禍のワークスタイル、オンライン飲み幹事、新規事業コンセプトづくりのファシリテーションなど組織と個人のハッピーのためになんでもやってきました。
創業期のミッション・ビジョン・バリューをみんなで実現する前提の組織は多いのですが、スタッフの共感を得るには個人の価値観が明確になっていて、かつそれが組織が目指すビジョンと重ならければいけません。ですから個人のコーチングをするときは、家庭の悩みや趣味のこと、健康のことなども全部対象として話を聞き、個人と組織のミッション・ビジョン・バリューの重なりを作るようにしています。

いろんな組織に関わると、ミッション・ビジョン・バリューは形骸化して意味なしていないところも多い。採用、教育、配置が縦割りで、人手が必要だからといっぱい採用しても、教育できていない。配置も場当たり的だったり、評価報酬制度と会社が大事にしている部分が合っていなかったり、会社に合わない人も居座っている、みたいなこともあるでしょう。
担当組織のミッション・ビジョン・バリューをきれいごとではなく、ちゃんとそれに基づいた戦略、各機能の連携がある状態を目指すために、経営者とも意見を言い合う対等の関係性を持ちながら、その企業のビジョン、戦略を実現するために必要はことは全部やっています。

組織スタイルの模索

茂木 最終的にはトップがどういう風にしたいかだと思います。また職能と事業モデル両方のバランスを見極めるのも大事。フリーの集合体だと、よりティールが向いている。みんなでオペレーションを回していく場合だと分権・柔軟性を伴う達成型組織とか。
まずは自社のスタイルを知ることが大事で、流行りに乗っかってティール組織をやろうとか、コンサルが言ったからなどの言い切り議論は危険です。
採用も大事。ティール型組織に能力としては向いていても、マインドセットが伴わないと難しい。組織の形に即した人を見極めるには、会社として採用要件も持ちつつも、個人の価値観を採用時点で確認することです。僕の場合はスキルを見るだけでなく、半分コーチングセッションのようなことをしています。企業に入りたい人はとりあえず「ビジョンに共感しました」と言うが、後々ノリが違うと困るので、そこは大事にしています。

谷脇 当社は途中からティール組織になったので、働き方を変えないといけませんでした。事務職などマネタイズに関わってないとティール組織に合わないと言う人もいましたが、ルールの中でちゃんとできていればいいと説明しました。ティール組織について勉強する仲で出会った、3時間しか働かないである程度の給料をもらい、休みは海でサーフィンをしているという人の話もしたりしました。今は自社のスタッフも、自分が欲しいお金や幸せの形、したいことを誰からもとがめられず認められている状態です。

茂木 シッピーノも働き方の自由度が高く、週4勤務の社員もいますし、僕みたいに業務委託だけど人事を担当している人もいます。個人の価値観、ライフステージに合わせた働き方を選択できています。

谷脇 ティール組織が必ずしもいいというわけではありませんが、個人と企業の幸せを合わせていく作業は、トップダウンだと決まったルールを個人が守ることになり、個人の思いが変わると合わなくなります。そこを茂木さんのように調整してくれる役割の人がいて、なおかつ社長がそれを認めていくと流れが変わると思います。

茂木 組織のミッション・ビジョン・バリューと個人のすり合わせは、どの組織でもあったほうがいいですよね。ティール組織は個人が何をしたらいいかわからないと成り立ちません。
達成型組織で、組織目標をみんなで達成する場合では、100%やらされ感でやる人と、そこに自分の強みをどう活用するかを見出してやる人とでは、後者のほうがモチベーションもパフォーマンスも上がる。パワーはいるし、自分も100%はできていませんが、その考え方を目指しています。

強い組織の条件とは?

茂木 どんな組織でも、トップが自分のやりたいことと表現していることとやっていることが一致していて、それを発信していることが重要です。
というのも、会社のミッション・ビジョン・バリューまでは経営陣が作っても、その運用を現場メンバー任せにすると、経営における意思決定が基づかず形骸化します。作るのはトップだけでもみんなでもいいですが、最上位にあるものにみんながちゃんとコミットしているか。それをトップダウンであるか、共創型でやるのかは組織の選択でいいと思います。

谷脇 トップがある程度やりたいことを明確に共有できて、みんなで目指せるタイミングを見極めて実行するのも大事です。当社の場合はECサイト運営時にはヒエラルキー組織で十分回ると考えていましたが、経営が傾いてメンバーがやめるかもしれない、というタイミングだったからこそ本格的に組織を見直せました。

茂木 シッピーノに2年ほどいて「雰囲気ががらっと変わった」と言っていただいています。今まで会社のビジョンをしっかり打ち出しておらず、あいまいだったのを明確化するという空気が生まれたと思います。

谷脇 経営者だからといって、人を育てるのがうまいというわけでもなく、全部パーフェクトにできる人はいません。組織自体はちゃんと維持しないといけませんが、経営者はいろんな軸のことをやらないといけないので、自分が組織に向いたときに誰かのアドバイスがあるとだいぶ早いと思います。私は本がきっかけで武井さんのアドバイスがあって助かりました。

茂木 トップでなく働く人たちから組織を変えたいケースもあると思いますが、その場合はさりげなく巻き込むこと。僕の場合はコンサルが提案する場を作りながら、提案と称したコーチングを行っています。
内部に向けて会社のあるべき姿を伝えないといけないが、時間も労力もないという人は多いと思いますが、このビジョンを伝えることは重要で、しっかり時間をとるべきだというふうに、マインドセットを変えないと組織も変わらないと思います。

谷脇 会社のビジョンの話も、個人の幸せを考えた内容でないと聞きたくなくなります。コーチングと組織評価があるのはいいですよね。社内の人が茂木さんのような役割をするのもありなのでしょうか。

茂木 ありですが、トップとか現場との関係性がどれだけできているかが大事。その人がトップに対して都合悪いところも突っ込めるかどうかですね。

谷脇 うちはマネタイズを共通言語にしたとたんにティールが進みました。「会社をこうしよう」という話は共感が得られにくいですが、「お客さんを幸せにすることで会社が潤い個人が潤おう」という話は共感が得られやすいと思います。

茂木 谷脇さんのように、共通言語からぶれないことが大事。共通言語を決めたけど、社長の一言が偉いとなるとズレてしまいます。以前コンサルをしていたときは、偉そうに理想を掲げていましたが、人事として組織のミッション・ビジョン・バリューと個人をつなげることは難しい。ですが続けていくことが大事だなと感じています。

まとめ

組織のあり方がどのようであれ、組織と個人の幸せをすり合わせ、同じミッション・ビジョン・バリューを掲げることができる状態が大切だということがわかりました。組織の見直しを検討されている方のご参考になれば幸いです。

Thank you, we love you.

登壇者紹介

谷脇しのぶ
株式会社へノブファクトリー
ウェブノ株式会社

2004年へノブファクトリーを創業。ウェブ制作・運営企業として成長させる中、自社ネットショップで燃焼1億円を達成したことをきっかけに企業のカスタマーサクセスを支援するサイト運営専門企業へと強みを明確にし事業を展開。ウェブサイトのマネタイズ戦略設計が得意分野。メディアで多く取り上げられウートピ、フェレットなどサイト運営に関する連載記事を多数寄稿。Cssnite,NSMR認定講師、地方でのセミナー講師も実績多数あり。2020年6月初の著書「コンバージョンを上げるwebデザイン改善事例集」を出版。


茂木健太
Co-Creations株式会社

豊かな社会を創るリーダー・組織に対して、認知科学に基づいたコーチングにより、現状の延長を超えたゴール設定と達成・組織のビジョン・先着を実現するための、戦略人事機能(採用・教育・配置・評価・報酬・労務)を支援している。Co-Creations(株)代表として、コーチング、組織人事コンサルティングを提供。EC事業者向けWEBサービスを提供するシッピーノ(株)では、CHRO(人事責任者)を務める。趣味は極真空手、自己表現のダンス、サイクリング、自然体験型リトリートなど。


私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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