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あゝ愛しのジャパニーズ・シエスタ(昼寝)

世界各国の物書きでまわすリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」。12回目のテーマは「自分は日本人だなと思った話」。ハッシュタグは #日本にいないエッセイストクラブ 、メンバー以外の方もお気軽にご参加を!過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください。

今までリビングで仕事をしていたが、ようやく最近になって自分だけの仕事部屋を持った。2階にある小さな部屋に、仕事用テーブルとイス、お気に入りの観葉植物だけを飾った小さな仕事部屋。

自分だけの仕事部屋を持つとやる気が出る。

昼食後はアルゼンチンの伝統にのっとりシエスタ(昼寝)をしていたが、今はマテ茶を片手にバリバリと仕事に励んでいる。

と言いたいところだが、実際はそうでもない。

昼食後の眠気に加え、窓から降り注ぐ陽気な日差しが、僕を夢の世界へといざなう。

「シエスタしないのー?」と寝室からアルゼンチン人の妻が言う。

ちなみにシエスタガチ勢の妻は、遮光カーテン+黒の画用紙を窓に貼るという荒業で、寝室に一切の光が侵入するのを防いでいる。

「今日はしないよ。仕事するから」

こう言って、僕は仕事に取りかかった。

ああ、ダメだ。太陽の光が気持ちいい。

体温が少しずつ高くなり、僕はウトウトし始めた。

もうだめだ。5分だけ眠ろう

そう固く決心して、僕は机に頭を伏せた。

「何してるの?」

僕はビクッッとなった。

振り向けば、妻がいる。

どのくらい寝ていたのだろう。スマホを確認すると、15分程度だった。

「眠たいならベッドで眠ればいいじゃない」

「いや、違うんだ。これは一種のシエスタだから」僕は慌てて言った。

「それはシエスタじゃないわ。前から思ってたけど、髪を切っているときも眠っているときあるよね」と妻は笑った。

「これはジャパニーズ・シエスタ。そう、イネムリ(居眠り)なんだよ」と必死の言い訳をしたところで彼女は大笑いした。

「バカね。眠いならベッドで眠ればいいのに」

眠いけど眠ってはいけない。

そんな究極の状況で、ウトウトしながら、ゆっくりとひと時の眠りにつくイネムリの気持ちよさをアルゼンチン人は理解できないらしい。

それともイネムリの良さが分かるのは、僕が日本人だからなのか。

アルゼンチンに移住してから、1時間以上のシエスタをする生活を続けてきたが、15分程度の居眠りでもばっちり頭がさえる。

そもそもシエスタの場合、ベッドから起き上がるのも一苦労だが、机でするイネムリはパッと目覚められる。

なんだイネムリも悪くないじゃん

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次回走者はベルリン酒場探検隊の久保田さん!

このエッセイめちゃくちゃ好きです!ドイツの酒場の情景が目に広がります。たった一度きりの好きな店にスポットライトを当てるのも、切なくて、エモさもある。機会があれば、このお店に本格的な取材をしてほしいです。

次回は、長年ドイツに住まわれていた久保田さんが、日本人だなと感じる瞬間を披露してくれます。

前回のラスト走者は、ベトナムに住んでいたネルソン水嶋さんです。

まず記事前半のベトナムの日本食の歴史が面白い。基本的なチェーン店は一通りそろっているんですね。そんな水嶋さんのお気に入りの店は、ホーチミンシティ在住の日本人たちの安住の場となった餃子店。

あと「日本人いるところに華僑の足跡ありだ。」もよく分かります。ちなみに僕は、「日本人いるところに醤油あり」という説を推しています。その理由は、日本人いる=寿司がある=寿司には醤油がつきものだから。逆にみりんとか酒とかはほぼ見かけないんですよね。

サポートありがとうございます。頂いたお金で、マテ茶の茶菓子を買ったり、炭火焼肉アサドをしたり、もしくは生活費に使わせていただきます(現実的)。