英語ゲリラ部隊の急襲!〜"allowance=おこづかい"の謎が解けた話〜
はじめに
英単語の学習について、
1.英英辞典を使って学習しなさい
2.語源を大切にして学習しなさい
―と高校時代に指導された経験のある人は多いだろう。
その際には、英英辞典を使用することで、英単語が持つ根幹の意味を掴めるようになり、語源を大切にすることで、未知の単語の意味を推測可能になる、といった点が強調されることが多い。
ぼくも高校生の時に、このような単語学習を先生から勧められた。ところが当時のぼくは語源辞典の存在を知らず、また、現在のようにインターネットを利用して語源を調べられる環境にもいなかった。だから、ぼくの単語学習は英英辞典の使用だけに留まった。
ところが大学進学後、英語学習とはまったく関係のない民法の授業で、語源を大切にした英単語学習の便利さを発見することになった。今回はそんなお話である。
allow と allowance にまつわるエトセトラ
多くの高校生が高校英語で学ぶことになる英単語にこんなものがある。
"allow は動詞で、日本語の「(何かを)認める、許容する」に相当し、その名詞形 allowance は「おこづかい」を意味する"
ぼくも高校生の時にこの2つの英単語を身につけたし、英英辞典にも次のように書いてある。
でも、ぼくはずっと疑問に思っていたのだ。どうして「許可を与えること」が名詞形になると「おこづかい」になるのだろうかと。
2年ほど燻っていたこの疑問が解けたのは、なんと大学での民法の授業でのことだった。ぼくに発見を与えてくれた条文を以下に引用するが、興味のない人はスキップしても構わない。
この民法第5条を平たく要約すれば、「未成年者が親権者等の同意なく商品やサービスを契約した場合には契約を取り消すことができる。ただし、親権者等から「好きに使ってもいいよ」と与えられたお金で契約した場合には取り消すことができない」となる。
「こんなところに潜んでいたのか、allowance!」
これが、その時の率直な感想だった。ずっと頭の中でもやもやしていた allowance の語源に、まさか民法の講義で気づくことになるとは思いもよらなかった。まさにゲリラ部隊である。
この条文に目を通し、"「好きに使ってもいいよ」と与えられたお金"とは、即ち、好きに使うことを許されたお金のことなのだ、という理解が生まれた瞬間、ぼくの頭の中は晴れ渡った。ついに allow(許可を与える)とallowance(おこづかい)とのあいだの意味的な関連性に気づくことができたのである。
ちょうどその時、英単語学習における語源を重視したアプローチの有効性について学ぶ講義を受講していたこともあり、言葉が持つ本来の意味に注目する大切さを実感した貴重な瞬間だった。
学習段階に応じて適した語彙力強化の方法がある
このような体験を通じて、ぼくは語源を大切にした単語学習の大切さを実感した。しかし、誰にでも「語源を大切にした単語学習をした方が楽だよ」とは助言しない。というのも、この学習法は、英語全体の学習を終え、いよいよ語彙力の更なる強化が必要となったタイミングで採用するのが効果的だと思うからである。
ここで、単語学習でよく見かける"試験によく出る"というキーワードに注目してみる。"試験によく出る"とは、"一般的によく使用される"ということである。したがって、そのような単語を十分に知らないことは、英文を読む際の障壁となってしまう。
その結果、英英辞典や語源辞典の表記が英語であるため、辞書を引くために辞書を引くという二度手間が発生する。これは初学者にとっては辛いだろうと思うのだ。目安として、英英辞典を使って効果的に学習するには、高校1年生で学ぶ英語の知識全般が必要だろうと思う。
極端な例だが、これから英語を始めようとする小学生に「はじめから英英辞典を使って勉強しなさい」と指導したところで、効率的な学習が困難になる様子を想像すればわかりやすいだろう。よって、学習段階に応じた語彙力強化の方法を選択する必要があると、ぼくは考えている。
ちなみに、語源を大切にした英単語学習をするのに最適な書籍のひとつは、Norman Lewis 著の Word Power Made Easy である。
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