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これからの不動産業界に求められるもの

ついにこの4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に設定されましたね。これから、いわゆる物流の2024年問題が表面化してくるでしょう。物流業界はもちろん、今後さまざまな業界で労働時間をはじめDX化やSDGsなど世の中の変化に対応する必要がでてきます。

僕が身を置く不動産業界も例外ではなく、不動産と深く関係する建設業界でも運送業界と同じく今年4月から「働き方改革関連法」が適用されて労働時間制限が設けられました。加えて、長引く建築資材の高騰やマイナス金利解除もあるので、これまで通りただ物件を開発して販売してという従来型のビジネスを続けてると、やがて淘汰されてしまう…という危機感を常々感じています。

弊社今村不動産は6月から10期を迎えます。今期の振り返りや来期目標に関しては5月のnoteで書くとして、今回は不動産業界全体の今後について少し思いを巡らせてみたいと思います。

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不動産業界は大別すると3種類


不動産業界は大きく分けて「開発・販売」「流通」「管理」の3種類に分類されます。僕ら今村不動産は「開発・販売」を行っている、俗に言うディベロッパーという業種にあたります。建物や建物を建てるための土地を仕入れ、建設し、販売を行う仕事です。建設会社などと協力しながら幅広い仕事を展開します。

2つ目の「流通」は不動産仲介会社や不動産代理販売会社が該当します。買い手や借り手をオーナーに代わって見つける仕事です。一般の方がよく知る不動産屋さんはここに該当します。

3つ目の「管理」は文字通りオーナーに代わって不動産を管理する仕事です。マンションの管理人業務を受託してマンションの定期清掃や設備補修を行ったりします。もう少し広義の意味だと、少しジャンルは異なりますが不動産投資関連の業務を行う会社も存在します。

上記の図のように僕たちディベロッパーのビジネス相手は「流通=仲介会社」がメインなので、一般のお客様と直接取引を行うケースは多くありません。(一部、自社開発物件を直接販売するケースもありますが)

そんな不動産業界ですが、2023年の不動産統計調査では、2021年度の不動産業の法人数はなんと約37万社。全産業法人に占める割合が12.8%あり、データが確認できる2002年度以降、一貫して増加しているんです!

コンビニが全国で約6万店舗あると言われているので、いかに多いのかがわかります。そしてその多くが他の業界と同じく中小企業。さきほど3種類に分かれると言いましたが、たとえば「開発・販売」の分野であったとしても企業規模に応じて案件規模が違ってきます。

みなさんがよく目や耳にする大手ディベロッパーは、人が集まる都心部の商業施設や高層分譲マンション開発が主戦場。今年の夏に先行まちびらきが報道されて話題になっている、大阪のうめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」なんかは、三菱地所を中心に複数の大手企業がジョイントベンチャーを立ち上げて開発を進めています。

一方、僕らのような中小規模のディベロッパーは、大手とバッティングしない(できない)エリアを中心に、いかに他社と差別化するかが重要になってきます。

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中小規模ディベロッパーが戦うには差別化だけが本当に必要か?


中小規模の不動産開発会社が生き残っていくには、他のビジネスと同様「何をウリにしていくのか」が問われます。
例えば、戸建てやマンションなど住宅を専門的に扱ったり、オフィスビル開発に特化するなど、どの企業も会社ごとの特徴や強みを活かした開発を進める傾向にあります。その方が当然経験やノウハウが蓄積されやすいですし、専門性を活かしたビジネスが展開できるからです。

創業から数年間の今村不動産もそうでした。特化したのは郊外のロードサイド型店舗開発。小規模ながらもエリアニーズに合ったテナント店舗を数多く開発することで、会社を成長させてきました。なぜロードサイド型店舗に特化したのか。ぶっちゃけると、キャッシュフローが大きく関係しています。

不動産開発のなかでも店舗開発はキャッシュフローのサイクルが早いのが特徴です。例えば賃貸マンションなどの場合、土地を取得してマンションを建設し、そこから入居募集を行ってはじめて事業化できます。土地取得の費用や建築費は融資を活用でいたとしても、その他に関しては自己資金でまかなう必要がありますし、建物が完成してからでないと売上が立ちません。

一方、店舗開発の場合はテナントとの契約段階でまず先に保証金が入るケースがほとんどです。保証金は一般的に賃料の10ヶ月分程度で、その時点でひとまず売上を計上することができます。場合によっては土地取得のために取り付けた融資額よりも多くの保証金が入る可能性もあり、変な話その売上を運用したり、新しい物件の取得にあてることが可能なんです。

つまり、的確な市場調査(ここにもちろんノウハウは必要ですが)ができて、時代とエリアニーズにあったテナントさえ誘致できれば、土地や物件を買えば買うほどキャッシュをまわすことができるんです。

大手企業は店舗開発の場合も駅近だったり規模の大きな開発を得意とするので、そことバッティングしないよう郊外型のロードサイドに狙いを定め、経営の舵を切り、当時出店ニーズの高かった家族葬会館やドラッグストア、スーパーなどの店舗開発を積極的に行ってきました。結果的にその戦略は功を奏して、創業後の早い段階で想定通りの余剰金を積むことができました。

そんなふうに経営のサイクルがまわるようになると、毎期純利益を積み上げることができ、結果的に融資金額も大きくなって、会社も少しずつ大きくなっていきます。いくらやりたいことがあっても、いいビジネス話が舞い込んできても、資金がなければチャレンジすらできない。そう思って、とにかく会社の基礎体力をつけること、経営の地盤を固めることに、創業後5年間ほどは注力してきたのでした。

ただ、ずっと考えていたのは、店舗開発に特化した専門ディベロッパーで終わりにしないことでした。中小規模の会社が戦うために専門特化することは正しい選択だと思います。けれど、そこで止まっていては事業としてスケールしずらいですし、なにより世の中の環境がガラッと変わった時に一気に崩れかねないとも思っていました。

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特化型の不動産開発には変化に弱い側面がある


市場変化が顕著に現れたのが新型コロナです。産業全体に大きな打撃がありましたが、不動産業界では特にホテルや飲食店の需要が大幅に下落。それら施設の開発をメインとしていた会社は業務転換や廃業を余儀なくされたことでしょう。平常時はともかく、予測できない自体が起こった際に、なにかひとつの分野に特化していると脆い。だからこそ開発ジャンルを広げていくことが結果的にリスクヘッジにもつながると痛感した出来事でした。

今村不動産ではちょうどコロナ前後から開発ジャンルを広げる方向にシフトチェンジしていました。短期間で開発を積極的に行っていると少しずつですが業界内でも知名度が上がってきて、店舗以外にも住居やマンション用地の相談が入ってくるようになりました。

当然、前述のように店舗開発よりもキャッシュフローは良くありませんが、創業後数年間である程度の資金力がついていたこともあり、住居、マンション、駐車場、介護施設など開発の幅を広げるためにチャレンジを進めることにしました。そうしているとさらに多種多様な相談が入ってくるようになり、結果的に会社としては小規模ながら総合ディベロッパーとしてのポジションを確立できるようになったんです。

はじめの頃は店舗開発以外は未経験の分野なので、当然ノウハウはありません。流通からもらった情報で最も収支パフォーマンスが出せる開発ジャンルは何か。店舗だけにとらわれずさまざまな角度から、自分たちなりに事業シミュレーションを一通り落とし込んで検討してきました。手間も時間もかかりました。事業プランをつくったものの、資金不足で買えなかった案件、計画通りにいかず失敗した案件もありました。

けれど、ひとつの相談に対して幅広いジャンルの事業計画を繰り返し行い、失敗も含めて開発を続けてきたことが、現在の今村不動産の強みに間違いなくなっています。

マンション開発に特化してきた会社にロードサイド店舗用の用地相談が入ったとして、たとえ採算が合っていたとしてもどうやって事業化するかわからなければ手の出しようがありません。その逆も然り。事業ジャンルによってシミュレーションすべき要素がぜんぜん違うからです。

土地などの仕入れ段階から、どんなジャンルの物件開発を行えばどれくらい収益化できるかを判断できる。だからこそ、他社が買うのを躊躇うような物件であっても積極的に取得に動くことができる。経験を通して積み重ねることができた「商品企画力」は、専門ディベロッパーにはない僕たちの最大の特徴だと思います。

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企画開発力を強みにどれだけ付加価値を生み出せるか


体力がついてきたいま、会社の成長フェーズとして開発の幅をどんどん広げていきたい。そう決めてから、今村不動産では数年前から毎期ひとつ目標ジャンルを定めて、新しい分野の物件開発を会社として進めています。専門特化するのではなく、お客様からいただいた相談に最良の回答ができることが、僕たちの存在価値だと考えています。

安く仕入れ、安く建築して、高値で売却する。そんな従来型のディベロパーのビジネスモデルは既に崩壊しています。人件費も資材費も高騰を続ける現在、価格で売ってきた会社が生き残るのは難しくなっていきます。

移り変わる時代の潮流を読みながら、その時その場所で必要とされる不動産を開発すること。付加価値のある不動産を世の中に届けることが、中小規模のディベロッパーが生き残っていく道なんじゃないかと思います。

「不動産の存在価値を上げ、地域社会や経済に貢献する」。

企業として掲げるミッションを胸に、次の期も価値のある不動産開発に全力で取り組んでいきたいと思います。

今村不動産では現在、事業拡大に向けて採用も強化しています。ご興味があればぜひ採用サイトをのぞいてみてくださいね。

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