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ぶらりくり -<ルヴォワール>シリーズ (円居挽)特別編-

 本記事では『丸太町ルヴォワール』『烏丸ルヴォワール』『今出川ルヴォワール』『河原町ルヴォワール』の核心的な内容について触れる場合があります。未読の方にとっては興を削いでしまう可能性が高いことをはじめにおことわりいたします。


丸太町ルヴォワール

朱雀門
 ルージュが引いた紀長谷雄の逸話に登場する朱雀門は残念ながら現在では残っていない。しかし、朱雀門のあったとされる西ノ京小堀町には「此付近平安京大内裏朱雀門跡」と書かれた石碑が建っている。

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「平安時代の話さ。長谷雄卿は勤めの帰り道、ひょんなことで朱雀門に棲む鬼から賭け双六を挑まれたんだ。朱雀門の上で行われた勝負は長谷雄卿の圧勝。鬼は心底長谷雄卿に敬服して、光るがごとき美貌を持った女を差し出したという。」

達也が烏丸今出川から双龍神社へ向かう道

 烏丸今出川のバス停は6か所あるが、達也の家の周辺から乗ってきた場合は烏丸今出川交差点の南東方向のバス停に停車する。

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烏丸通を南下

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護王神社

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 実際には護王神社の手前で右折して路地に入っている。また、『烏丸ルヴォワール』では流が綾織繰子と参拝に訪れている。

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 そんな達也だったが、烏丸今出川のバス停に降り立った瞬間、外気の寒さに思わず首を竦めてしまった。
(中略)
 達也が教えられたとおりに烏丸通を南下すると、やがて護王神社が視界に入ってきた。指示通り、護王神社の手前で路地に入る。「護王神社から入ればまず間違わねえよ」とは達也を呼び出した流の弁だ。

KBS京都

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 しかし、流の言葉を正確に再生しても現在地が良く解からない。達也の目には京都の街並みが設計ミスの迷路みたいに映る。気が付けばKBS京都まで戻ってしまった。

双龍神社

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 どうやらここは双龍神社の裏側らしい。達也が頭の中の地図を慎重に更新しながら路地を大回りする。辺りに点々と転がっているボタンの花を数えていると、確かに入り口の鳥居を発見することができた。
 双龍神社は先ほど前を通った護王神社に比べるとやや見劣りするといった程度の、ごくごく普通の神社だった。

 双龍神社は想像上の場所で実在はしない。落花によると、双龍神社は安倍晴明邸のあった場所に建っている。しかし、安倍晴明邸の正確な位置は現在でも特定されていない。ただし、大東文化大学東洋研究所の山下克明の研究によると、上長者通と西洞院通の交差点を起点とし、東へ20丈(約60m)、北へ15丈(約45m)の計約2,700平米が安倍晴明邸であったとしている。そのため、地図上では下図のブライトンホテルの南西に位置する青枠の部分が双龍神社に当たる個所だと考えられる。

 また、『烏丸ルヴォワール』で達也と撫子が烏有と出会うのもこの双龍神社。

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「よっしゃ、前途有望な法学青年にレクチャーしたろか。実は双龍神社がある場所はな、安倍晴明邸があったところなんや」
「『今昔物語集』の安倍晴明随忠行習道語にある『此晴明ガ家ハ土御門ヨリハ北、西ノ洞院ヨリハ東也』ですね」

ブライトンホテル

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 達也と流が4年ぶりの再開したホテル。御贖となった論語が軟禁されていた。

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「ん、その言葉にも一理あるな。喉も痛いしいし、足も痛い。ブライトンでちょっと休もうぜ」
「ブライトン?」
「ちいと向こうにホテルが見えないか?」
 喉を抑えながら、流が鳥居の向こうを指さす。達也が首を少し傾げると、鳥居の陰からやけに豪奢なホテルが姿を現した。
「ラウンジの喫茶店で気の利いたコーヒーが飲めるぜ」

双龍神社方向から見えるホテルは下図のようなイメージ

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ブライトンホテル内部の様子

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 ラウンジの中心には噴水があり、ピアノの演奏が流れている。達也のいる喫茶店も含めて、明らかに宿泊には直接必要のないモノばかりだ。一泊いくらだかわからないが、これらの維持費も宿泊費に乗ってくるのだろう。
(中略)
 もっとも、達也も足元の絨毯の感触は少し気に入ったのだが。
 まだブライトンの喫茶店から観察しただけだったが、達也は京都の不思議の一端に触れた気がした。
「高えんだよな。ここ」
 そういいながら流は運ばれてきたコーヒーに砂糖を入れた。

ラウンジの様子

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達也が気に入った足元の絨毯

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ラウンジで飲めるコーヒー

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 ちなみに、一番安い2階の部屋であれば1泊16,000円から泊まることができる。コーヒーは1杯1,000円から飲めて、物語通り都度店員さんがお代わりを次いでくれる (コーヒー以外のものと一緒に注文すれば400円で飲める)。

テニスコート

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 達也が城坂邸に向かう途中で通り過ぎたテニスコート。

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 達也はきれいなテニスコートの横を通り過ぎながら、行きかうバスとタクシーがもっと少なくて、後論語さえ住んでいなければこの辺に引っ越しても良いと、半ば本気で考えていた。
(中略)
 そんな他愛もないことを考えながら岡崎を移動していると、そのややはずれに周囲を白壁で囲んだ屋敷があった。外から見ても、壁の内側のお屋敷はそれなりに広そうなことが解かる。

城坂邸

 城坂邸の詳細な個所は岡崎に位置しているとしか物語中では述べられていない。しかし、達也の行動などからある程度の絞り込みは可能である。

・周囲を白壁によって取り囲まれている
・面積が一般的な文化住宅と比較してもかなり大きい
・京都市動物園の観覧車から視認できるもの
・岡崎の中でもややはずれに位置するため、比較的岡崎地区の境界付近に位置するものと考え、岡崎最勝寺町、岡崎南御所町、岡崎西天王町は除外する
・漫然と歩いて疎水縁を通りかかるということは岡崎の中でも丸太町通り以北は除外する
・岡崎公園のテニスコートから大幅に西にあるものは除外 (南北方向については、丸太町通から来たのか二条通から来たのかは不明であるため絞り込めない)
・(『今出川ルヴォワール』によると)京都市勧業館まで徒歩五分。

 以上の条件を満たす建物としては城坂邸のモデルは南禅寺草川町にある無鄰菴なのではないかと考えられる。また、無鄰菴という名前は『論語』の「徳は孤ならず、必ず隣あり」から取られたものであるということもこの説を裏付ける一拠となる (ただし、位置的には無鄰菴は岡崎ではなく南禅寺に位置する)。

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 すると、不思議なもので普段は聞こえないような自動車のモーターやクラクションの音まで聞こえてきました。平安神宮前の車道の混雑まで手に取るようにわかるほどに。

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 そんな他愛もないことを考えながら岡崎を移動していると、そのやや外れに周囲を白壁で囲んだ屋敷があった。外から見ても、壁の内側の敷地はそれなりに広そうなことが解かる。

達也が撫子と出会った疎水縁

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 達也は足に任せて疎水縁を歩きながら、屋敷の捜査状況を振り返っていた。
(中略)
 そういって撫子は疎水縁の鉄柵を握った。
(中略)
 撫子はそう言うと、今度は鉄柵に背中から体重を預けた。

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 タクシーが通りかかるのを待っている間、達也は疎水の流れを眺めながらそんなことを思っていた。
(中略)
 いつの間にか達也の前に信号待ちのタクシーが止まっていた。

一保堂茶舗 京都本店

 流がたとえとして挙げた一保堂は寺町通二条に本店がある。

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『口ちつけないわけにもいかねえから、一保堂の玉露でも味わうようにじっくり飲んでたんだよ! それももう限界だ。で、今どこだ? ホテルの前か?』

堺町御門・厳島神社

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 流が達也に電話をかけてきた際にタクシーが止まっていた場所。

P172
「右手に見えるのが堺町御門ですよ。平たく言えば御所の南口ですね。あ、この門から入ってすぐ厳島神社がありましてね。ご存じですか? あの厳島神社の分社でして」

錦市場

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 流が達也と再会した日に夕食に誘おうとした市場。結局心変わりして四条通のバーに行った。

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「おーし、万札を崩すついでに錦市場で腹ごしらえして作戦会議と行こうぜ。あそこなら、京都でも旨い魚が食える。それに立ち飲みだってやってるしな」

 ブライトンホテルからの歩行経路はおそらく下図のような経路をたどったと推定。

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 お互いに何も言い出せなくなって会話が終わると、やがて流は四条方面に向かって歩き始めた。
(中略)
 流の後ろを黙々と歩いている間も、達也は流のあの表情が引っかかっていた。いっそ疑問をぶつけてしまっても良かったが、残念ながら騒音溢れる烏丸通は真面目な話をするには相応しくない場所だった。
(中略)
 だから烏丸三条の交差点を過ぎて、町屋に足を踏み入れるころになってようやく、流が口を開いてくれた時は本当に嬉しかった。

ダイニングバー『アミューズ』

 所在不明。四条通の藤井大丸付近に同名のダイニングバーは存在しなかった。

藤井大丸

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 四条寺町にある百貨店。流と達也が訪れたダイニングバー「アミューズ」や『烏丸ルヴォワール』で烏有さんが泊まったカプセルホテルが近所にある。

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 四条通は藤井大丸の近所に、バーとダイニングを折衷した店『アミューズ』がある。
「まじめな話するなら、立ち飲みよかここだ」

百万遍交差点

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 流が双龍会当日に、達也を迎えに行くためにタクシーを降りた場所。乗車場所は、後述のドラゴンズマンションの位置から考えると、東向きのタクシーを拾うために徒歩で丸太町通を府庁前交差点で横断し、そこからタクシーに乗車。東方向に進み、東山丸太町交差点で左折し東大路通りを北上するルートをとっているものだと考えられる。

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 いつの間にかタクシーが百万遍の交差点についただけの話だ。
(中略)
 タクシーを降りると、京大の石垣が視界に入った。何が原因かは解からないが年々しょうもなくなっていく我が大学の方を見ると、流の拳には自然と力が入った。

緑風荘 (達也のアパート)

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 百万遍と出町柳駅と元田中駅を頂点とした垂心にある建物。写真は大体のこの位置にある建物を撮ったもの。物語内ではもっとおどろおどろしい雰囲気を醸し出している。

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 達也の住む緑風荘は、百万遍と叡電出町柳駅と元田中駅を頂点に持つデルタ地帯の垂心にあるという。とてもアバウトな表現だったが、京都においては住所なんて何の意味も持たないこともあるのだ。たとえば流のドラゴンズマンションの住所は西洞院丸太町下ル南西洞院3‐33‐3だが、住所だけで辿り着けた人間はいない。
(中略)
 緑風荘と思しき建物を見た瞬間、さっきからくすぶっていた感情の一切が吹き飛んでしまった。呼び鈴を鳴らす手にも思わず力が籠る。
(中略)
 達也の部屋はキッチン・バス・トイレ付で月三万円、おまけに更新料なしという掘り出し物だ。その上八畳もある。八畳もだ!
 ただしいて問題を挙げるとしたら、このアパートの来歴と外観だろうか。このアパートは廃院になった個人病院だったそうだ。明治時代に建てられたというこの洋風建築は、改装の結果次第ではモダンともてはやされ、今の二倍の家賃は取れたかもしれない。だが、悲しいかな改装は失敗していた。
「凄えところに住んでいるな」
 緑風荘は精神の和洋中を問わず、常人を寄せ付けない異様な雰囲気を漂わせていた。少しでも幽霊の類を信じていたら、住もうとは思わないだろう。どんな業者が請け負ったのかは知らないが、いくら何でもホーンテッドが過ぎるではないか。

ドラゴンズマンション (流のアパート)

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 丸太町西洞院にはドラゴンズマンションという名前の建物は存在しない。一方で、ライオンズマンション京都西洞院であれば存在する。ただし、ライオンズマンションの方はどの部屋も約8畳程度の広さはあるので、物語内におけるドラゴンズマンションはもっと狭いものだと考えられる。

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「っていうかみっちゃんのマンション、烏丸やなくて西洞院丸太町下ル南西洞院3‐33‐3やんか」

タクシーの経路

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 双龍会当日、流のアパートから京都御所までの経路は上図のような道筋だと推定できる (破線は徒歩、実線はタクシー)。

 達也のアパートの場所から推定すると、流らはグレースたなかの向かい側でタクシーを拾ったのではないか。降車場所はおそらく御所の中立売駐車場。

賀茂大橋

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 さっきまで自分の悲観が過ぎていたことを素直に反省すると、流は東大路通りでタクシーを捕まえるべく、達也と元田中駅の方へ歩き始めた。
(中略)
「青龍は東の守護神だが、黄龍は中央におわす守護神だ。だから左京区から鴨川わたって御所に行くのがいいんだよ。鴨川を青龍と見る向きもあるしな」
(中略)
 話している間にタクシーは賀茂大橋に差し掛かった。

京都御所 (双龍会会場)

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 御所内には様々な建物があるが、双龍会ができるほど大きな会場となると御所内では紫宸殿ではないか。ちなみに、御所内ではないが京都御苑内南西部には過去裁判所として使用されていたこともある閑院宮邸跡がある。

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 今日の双龍会は京都御所内の催事場を借りて行われることになっていた。

京都御所 参観者休所

 双龍会の休廷中に流は自動販売機コーナーに行こうとした。御所内の自販機は御所西部にある参観者休所1か所のみ。

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 控室を出たものの、流はどこに行けばいいのかさっぱり思いつかなかった。ただ、少しばかり喉が渇いた気がして、それが自販機コーナーへ龍の足を運ばせた。

京都市動物園

 流が自分がルージュだと言い張るために観覧車から論語を見たとハッタリをかますのに利用した遊園地。

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「あの日、たまたま京都市動物園に行ったんだ。大学に合格して、京都での住まいを決めた帰りだったな。あの可愛いペンギンたちに会いたくなって」
 京都市動物園は岡崎にある。そして、流が大学に合格したのも三年前だ。まだおかしな箇所はどこにもない。
(中略)
「……最後まで聴けよ。動物園に入った後、気まぐれで観覧車に乗ったんだ。観覧車のてっぺんから、城坂のお屋敷の中が覗けそうでな。好奇心もあって、オペラグラスで覗いてみた。そしたら、市井ではお目にかかれそうにない美少年がいて肝を潰したんだ」
 京都市動物園には自称日本一小さい観覧車がある。本当にすぐ一周してしまうのだ。今時流行りの、ランドマーク面をした馬鹿でかい観覧車には無い味があって、流は気に入っている。

塙保己一史料館

 京都ではないが、達也の二つ名の元となった群書類従の原本が東京の渋谷の塙保己一史料館に収められている。

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「それに、こいつが何て呼ばれてたか知ってるか? 群生累集だぜ」
「もう少し解かりやすく説明して欲しいな」
「まだ解かんねえのかよ。瞬間記憶能力だ」
(中略)
「なるほど、群生累集とは塙保己一の『群書類従』を踏まえた命名だったんですね。塙保己一自身も瞬間記憶能力の持ち主だったからぴったりです」

双龍会終了後の御所

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 すっかり日の暮れた京都御所の中を、玉砂利を踏みしめながら達也は落花と撫子と一緒に歩いていた。

流がタクシーを止めて落花たちを待っていた場所

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「およ、みっちゃんからや。丸太町通の向こう側にいるからはよ来いって」
(中略)
 そうこうしているうちに、三人は京都御所を出て丸太町通りを横断した。
(中略)
 今からどこかに飲みに行こうというのは流の提案だった。それに対して落花は西の方にいい店があるからと言い、流も同意した。だから西向きのタクシーを捕まえるために、わざわざ南側にいるのだ。
「店は任してあるから、まずはタクを捕まえねえとな」
「……待ちや」
 丸太町通に向かって手を挙げ、早速捕まえたタクシーに乗り込もうとする流をそんな声が制止した。

堀川通

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 堀川通に差し掛かり、タクシーは赤信号で停止した。論語はあの皮肉な笑みを浮かべずに、左側に座る彼女に向き直った。
(中略)
 信号が青に変わり、タクシーが再び発進した。

千本通

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 論語と撫子を載せたタクシーはもうじき千本通に差し掛かろうとしていた。
(中略)
 紅白の双龍を載せたタクシーは赤信号に捕まり、ちょうど千本通で朱雀の鬼に目配せするようにブレーキランプを瞬かせた。
(中略)
 信号が赤から青へと変わる。さて結果は如何に?
 果たしてタクシーは急発進すると、丸太町通を折れも曲がりもせず、都を東西に一閃するように走り去ってしまった。

烏丸ルヴォワール

私立松谷学園

 山科耕作が務めている私立学校。松谷学園という名の学校は存在しないが、京都の山科区に私立学校は燈影学園しか存在しない。

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「山科の綾織耕作さんがお持ちや」
「何してる人? 社長? 議員?」
「いや、私立松谷学園の美術教師やな」

京都大学厚生課

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 流らがアルバイトを勝ち取るために立ち寄った厚生課は京都大学本部構内の南西の教育推進・学生支援部棟にある。

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 四月二十七日の昼、二限の授業を終えた流は、後輩の御堂達也とともに大学の中央キャンパスにいた。昼休みの中央キャンパスはちょっとした人民広場だ。流と達也は人と自転車の間を縫うように動きながら厚生課のある校舎に辿り着いた。
「なあ達也、『黄母衣内記』って知ってるか?」
 歴史あるコンクリ打ちっぱなしの校舎たちがモグラ叩きのように潰され、近代的な建物にされている今において、一向に建て替わる気配のないこの校舎が流は好きだった。

進々堂

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 アルバイトをジャンケンで勝ち取った流と達也と論語が撫子と落ち合った喫茶店。

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 進々堂は北部キャンパスのすぐ近所にあった。流たちは中央キャンパスを抜け、今出川通を渡り、五分ほどで待ち合わせの場所まで到着した。
 店内はいかにも歴史のある喫茶店らしい雰囲気に包まれている。よく使い込まれた黒いニス塗りのテーブルは今や黒曜石のような質感になっていた。角をちょっと削れば石器ぐらい作れそうだ。
 撫子は既に奥まった席に一人座って書き物をしていた。

綾織紡績

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 綾織文郎が営む紡績会社。この位置に紡績会社はないのでおそらく架空の会社だが、3階から同志社大学のキャンパスを眺めることができ、かつそこそこの面積を持つ建物は上図のものになるのではないか。

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 落花に呼び出された流たちは綾織紡績株式会社の応接室にいた。烏丸今出川をやや上った場所にあるこの社屋から、道路を挟んで向かいにある同志社大学のキャンパス内が見える。

烏丸今出川の交差点

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 綾織紡績での打ち合わせの後に、論語らが四散していく場所。

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 撫子は烏丸今出川の交差点を眺めていたが、やがて論語と達也の方に向き直った。
(中略)
 撫子は見つからなければ作ってこいと暗に言っていた。そんな撫子の注文に、論語は泣きそうな表情でタクシーを呼び止める。
「解かりましたよ。成果は手に入れますから、やり方ぐらいぼくに選ばせて下さいね」
 論語はそう言い残して、今出川通を西に去っていった。
(中略)
 やがて二人は今出川通を渡り、烏丸通り沿いに歩き始めた。
「こっちよ」
 KBS京都の前で二人は路地へ入る。
 双龍神社は傍目には地味な神社だ。知らなければ双龍会に通じる場所だとはとても思えまい。

陸運局

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 論語が綾織耕作の乗っていたポルシェについて調べるために訪れた。

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「ああ、お前か。収穫はあったのか?」
『ありましたとも。まず山科の耕作氏の家にまで行って、陸運局にも寄ってきたところですよ』

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『陸運局で耕作氏の愛車を調べて、すり替えたように見えるぐらいの細工は施しておきました。ほら、後はもう双龍会で車と、陸運局の書類が揃えばもう完璧ですね』

バー『グランバール』

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 円居作品で随所に登場するバー。

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 授業を終えた流は間之町にあるバー『グランバール』にいた
「……孤独の都……だけじゃ解んねえだろうから、緑に包まれた山奥の学校ってイメージで頼む」
 この店では客のイメージに合ったカクテルを即興で作るサービスを行っている。流も二、三回に一度はバーテンダーが軽く悩むようなイメージを伝えてカクテルを作って貰うことがあった。
(中略)
「『シティ・オブ・ソリチュード』です」
 カクテルグラスを透明でいてとろみのある液体で満たす。コースターごと差し出されたグラスに流はそっと口をつける。見た目に反して、ペパーミントとはまた違った青い香りが抜けた。

バー『グランバール』からドラゴンズマンション西洞院へのルート

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 おそらく上図のようなルートを通って自宅会戻ろうとしたものだと推定できる。途中、ささめきの山月(に扮した烏有と出会う)。

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 それから流は消化不良の気持ちを抱えて烏丸通りを歩いた。夜道とはいえ、烏丸通は京都を南北に貫くメインストリートだ。うら若き女性である流が一人で歩いてもそう問題はない。 
 だが、裏通りはどうだろうか。
 それは流がマンションのある西洞院へ帰るために烏丸通から西へ折れてしばらく歩いた時のことだった。酔いが少し醒めかかったタイミングで、背後から誰かの気配がすることに気が付く。

緑風荘から綾織紡績までのルート

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 達也と論語が緑風荘から綾織紡績まで向かう際には上図のルートをたどったと思われる(実線がバス、破線が徒歩)。

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 緑風荘を後にした達也たちは東大路通りまで出た。タクシーを捕まえようとする論語を制して、達也は百万遍からバスに乗る。

烏有さんが泊まっていたカプセルホテル (9 hours)

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 カプセルホテル9 hoursは既に閉店しており建物自体も取り壊し工事が行われてしまっている。

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「昨夜はどこに?」
「昨日の夜は寺町四条を下った所にあるカプセルに泊まってた。昔馴染みの店を何軒かハシゴして、早々に寝ちまったよ。お陰で早く目が覚めた」

 著者も何度か泊まったことがあるらしい。

BTコンビニエンス

 流が髪を黒染めした24時間営業の美容院。カプセルホテルのはす向かいに美容院はなく、代わりにランニングとトレイルランニングの専門店になっている。

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 件のBTコンビニエンスは四条寺町を下った場所にあった。普段ならこのぐらいの距離はバイクで行くのだが、今日は同行者が一緒だったのでタクシーを使った。
「こいつか」
 外から店内の様子がうかがえるのは本物のコンビニと同じだ。そういえば前はここにコンビニがあったような気がする。おそらく潰れたコンビニの店舗を買い取って再利用したのだろう。

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「こんな時間から営業している店は他にもあるんですか?」
「四条の方にな、二十四時間やってる美容院があるんだ」
「よく商売になりますね」
「まあ、朝一で髪の毛いじらにゃならん勤め人や夜に仕事のあるお水の連中とかが使ってるらしいから、客はそこそこいるんだろう。でもまあ、あんなもん安かろう悪かろうの、薄利多売の商売さ」
(中略)
「この店ですか?」
「そう、それそれ。藤井大丸の南の方」
 BTコンビニエンスは有の泊まったカプセルホテルのはす向かいに位置していた。

出町桝形商店街

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 烏有さんが行きつけだった理容室のある商店街。

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 今出川通を鴨川のほうまで東へ進めば出町柳商店街に辿り着く。仰々しいアーケードなんてものもなく、大した規模の商店街でもないが、地方の商店街特有の『どうしようもなさ』とは無縁な良い場所だ。

出町ふたば

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 達也が大福を買いそうになった老舗和菓子屋。常に行列ができている。

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 達也が商店街を歩いていると、どこからともなく漂ってきた蒸した餅米の匂いが食欲を刺激した。匂いの元をたどれば老舗和菓子のふたばだ。どうやら今まさに開店しようとするところらしい。急ぎでなければ食べていきたかったが仕方がない。

バーバー無頼堂

 烏有さんが京都にいたころに行きつけだった理容室。2021年10月現在商店街内に理容室は存在しない。商店街付近には理容室は2店ある

バーバー無頼堂 (説1)

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バーバー無頼堂 (説2)

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「では、さっきまでホテルにいたということですか?」
「いや、さっさとチェックアウトして床屋に行ったよ。さっぱりしたくてな」
 言われてみれば有の髪は昨日会った時よりも整えられていた。
「こんな早くにですか?」
「これが働きモンの親父でな。朝から店開けてんだよ。すぐそこの出町柳の商店街で店開けてるから、時間があったら確認してきな。「バーバー無頼堂」って店だ」

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 達也は大福の誘惑を断ち切ってふたばの前を通りすがると、件のバーバー無頼堂を訪ねた。有の言葉通り、バーバー無頼堂は朝の七時から店を開けていたようだった。

護王神社

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 流が綾織繰子と共に参拝に訪れた神社。

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 BTコンビニエンスを出た流たちは四条通りから徒歩で烏丸通を北上して、護王神社までやってきていた。寄り道も悪くないと思ったのだ。妙に警戒して、双龍神社へ行かないのが流らしいところではあるが。

聖ブランディッシュ病院

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 論語の叔父である純己の経営する病院。実際に堀川五条近辺に大病院はないので画像はイメージ。一応建物内にクリニックは存在する。

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『聖ブランディッシュ病院って、叔父さんが経営しているんですよ』

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大学を卒業し、伏見に自分の小さな病院を構えてから早二十年、純紀は医師として確かな腕前と、それ以上に確かな経営の手腕を遺憾なく発揮し、今では堀川五条に立派な病院を構えるところまで来ていた。

新風館

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 流と繰子が変装のためのウィッグを買いに来た複合商業施設。論語が真の繰子と会ったのもここ。

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 流たちは一度丸太町西洞院のドラゴンズマンションに戻った後、烏丸御池まで南下していた。
「新風館に行くって発想は我ながら安直だな」
 二人がいるのは烏丸御池を下ってすぐそこにある新風館だった。

スターバックス コーヒー 京都三条烏丸ビル店

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 撫子と達也と烏有さんが午後一時に待ち合わせをしていた烏丸御池のスターバックス。

大垣書店 烏丸三条店

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 スターバックスで話をしている間に烏有さんが連れまわした少女を待機させている場所。

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「これからまた、あそこじゃ話せないことも出てくると思う。烏丸御池あたりで合流しましょう。烏有さんたちもすぐに行けるはずだし」

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 次の待ち合わせ場所は烏丸御池を少し下った場所にあるスターバックスだった。達也は店の奥に撫子が席をとっているのを見つけ、静かに正面に腰掛ける。しかし有は約束である午後一時になっても現れなかった。
「他にスターバックスはないよな?」
「どうかしら。でも大垣書店の横のスターバックスって言ったはずだけど……」

リプトン 三条本店

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 烏有さんが、(偽物の)繰子とお茶をした(と嘘をついた)喫茶店。

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「俺はよしとく。実はさっき嬢ちゃんと寺町のリプトンでお茶してきた」

三条駅

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 綾織耕作がフランス旅行に行く際にトランクを預けたクロークルームがある駅。

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「いいか、午後二時に三条駅だ。忘れるな」

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「三条から午前八時発のリムジンバスで関空まで行く予定だったそうだ」
「三条までは?」
「京阪で行くつもりだったらしい。必要もないのにタクシーなんて乗らない人だったみたいだしな」
(中略)
「正解よ。二十四日の午後八時ごろ、三条駅の傍のクロークルームの前でトランクを降ろしたって」

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「今からお前に頼みたいことがある。三条駅のクロークルーム『2EZ』から黒いトランクを受け取ってほしい。トランクのカギを渡しておくが、複製はないから紛失に気を付けろ」

オープンカフェ

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 流らが山月(に扮した烏有)を見かけた新風館のオープンカフェ。写真の場所はカフェではなくクラフトビールバーだが絵面それっぽいので。

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「どうやら、変装は完了したようだな」
 振り向けばすぐ後ろのオープンカフェで黒衣に覆面をつけた男がコーヒーを琲を呑んでいて、流はいろいろな意味で肝を潰しかけた。

川端二条〜二条大橋

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 達也がトランクルームから偽のトランクを持って撹乱する蟹江を尾行して追い詰めた場所。

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 頃合いだな。
 追跡相手が川端二条に差し掛かったころ、達也は距離を詰めるタイミングだと判断した。尾行者がいないことは確認済みだ。達也は男に急接近した。

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 二条大橋の西詰にはホテルフジタ(現: ザ・リッツ・カールトン京都)がある。

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京都大学自動車部

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 追跡相手が川端二条に差しかかったころ、達也は距離を詰めるタイミングだと判断した。
(中略)
 男は声なき声を上げて二条大橋から逃げようとしたが、トランクを抱えている以上、達也の俊足から逃れることは不可能だった。
(中略)
 ちょうどその時、二条大橋の中央でタクシーが止まった。若い女が一人おり、西側のホテルフジタの方へ歩いて行った。
(中略)
 達也の考え通り、蟹江の乗ったタクシーは大学を目指して進み、やがて蟹江は西武の生協前で降りた。そして蟹江は人目も気にせず自動車部の駐車場に息を切らせて駆け込んだ。

木屋町の喫茶店

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 流らがトランクを回収した後に休憩していた喫茶店。2021年10月現在では木屋町で高瀬川に手が届くようなオープン席を持つ喫茶店は存在しなかった。唯一近しいのが上図の店だが、この写真の店は喫茶店ではなくイタリア料理店である。

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 三条駅で一仕事終えた流たちは、木屋町まで出て少し高級な喫茶店でお茶をしていた。
 流たちが案内された席はオープン席で、ちょっと手を伸ばせば高瀬川の流れに手をはたせるような良い場所だった。

ホテルフジタ

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 論語がお昼寝用に部屋をとっていたホテル。現在では閉業し、ザ・リッツ・カールトン京都になっている。閑散期の最も安い部屋で1泊73,500円する。

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 通話を終えると流はすぐに会計を済ませ、川端通まで出る。論語は慣れた様子でタクシーを捕まえると、流たちに乗るように促した。
「まずは川端二条のホテルフジタまでお願いします。」
(中略)
「いえ、ぼくはお昼寝しますよ。ホテルフジタに部屋をとってあるんです」

金閣

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 流が綾織繰子と共に初めて黄昏卿と邂逅した場所。

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「双龍会の前に顔を見たいそうだ。お前たちには今から金閣に向かってもらう」

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 タクシーは河原町通を北上し、丸太町通で西に折れた。そして大した渋滞に捕まることもなく、順調に京都の北西へ向かって行った。まるで祝福されている様に衣笠への道は順調に進む。

烏丸三条のドラッグストア

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 烏有さんが、過去の流に薬を買いに行ってほしいと頼んだドラッグストア。

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 有はその日、何個目かの肝を潰した。烏丸三条の交差点の一角から山月が手招きしていたからだ。街中であの格好、馬鹿じゃねえの!?
「くそ、俺の腹の中胆汁でべとべとになってんじゃねえのか?」
「どうしたの烏有さん?」
 幸か不幸か、少女は山月の存在に気づいていないらしかった。
「な、なんでもねえよ。嬢ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど、そこのドラッグストアで胃薬買ってきてくれないか? なるべく効きそうなやつ」
 山月とは反対方向にあるドラッグストアを指さし、お使いを頼む。

烏丸御池駅

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 九年前に烏有と流が別れた場所。

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「うゆうさん。薬買ってきたよ」
 薬と釣りが差し出される。有はそれらを受け取ると、行き先も告げずに市営地下鉄の階段を下り始める。

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P341
 改札口に来た時、やっとの思いで別れを切り出した。
「嬢ちゃん、そろそろお別れだ」
 有にはまだ仕事が残っていた。山月の計にはもう用済みになった少女を京都から送り出さないといけないのだ。
「そうなんだ……」
 改札口で二枚切符を買い、一枚を渡してやる。

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 やがて列車が地下鉄のホームに風を運んで侵入してきた。お別れの時間だ。
「……嬢ちゃん、いっぱい勉強して、やりたいことを見つけるんだ」
「うゆうさん……」
「そして、俺みたいにはなるなよ」
「あのね、わたし……」
「またな」
 有は列車のドアが閉まったことを確認した。そしてゆっくりと動き出した列車を見送る。もう会うこともあるまい。だけど不思議と悲しくはない。人生とはそういうものなのだ。
「鴉の生き方って何なんだろうな」
 有は山月の言葉を噛み締めながら、地上を目指し階段を上り始めた。

流と繰子の移動経路

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 当日、流と繰子は上図の様な経路で移動したと考えられる。(ドラゴンズマンション→BTコンビニエンス→護王神社→ドラゴンズマンション→新風館→三条駅→喫茶店→ホテルフジタ→金閣→ドラゴンズマンション→烏丸五条)

双龍会会場

 烏丸五条には残念ながら煉瓦造りのモダンな建物は見つからなかった。しかし、同じく烏丸通沿いには元銀行の煉瓦造りの建物が2軒見つかった。もしかしたら実際のモデルはこの二軒のうちのどちらかだが、章題の「烏丸慕情」との掛け合わせから烏丸五条に場所を移したのかもしれない。

双龍会会場 (説1)

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 旧山口銀行京都支店。現DEAN & DELUCA京都。設計は辰野片岡建築事務所。1916(大正5)年竣工。1933(昭和8)年に山口銀行は合併により三和銀行となった。

双龍会会場 (説2)

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 旧第一銀行京都支店、現みずほ銀行京都中央支店。設計は辰野葛西建築事務所。1906(明治39)年竣工。明治時代に建てられたのはこちらの方なので、先の建物よりもこっちの方が説としては有力。

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 やがて二人は烏丸五条の会場に差し掛かる。会場は明治時代に建てられた煉瓦造りのモダンな建築物だ。かつては大手銀行が入っていたが合併で店舗が空になったらしい。今では青蓮院が所有し、例えばこういう時に臨時の会場として使用されるようになったとか。

五条駅

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 流と烏有さんが再開した駅。

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 論語に見送られながら、流と達也は烏丸五条の交差点に向けて飛び出していった。そしてそのまま、市営地下鉄の入り口に飛び込む。

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P483
「どこ目指してるんだ?」
 切符を買いながら、流は当然の疑問を口にする。
「つい先ほど、奴が人混みに紛れて、ロビーから出ていくところを見たんですよ。きっとタイミングを計っていたのです。俺の考えが正しければ奴はこのまま京都駅に行くはずです。運が良ければホームで捕まるでしょう」

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P483
 達也は切符を改札に通すと、そのまま階段を滑り落ちるようにホームに降りた。龍は遅れて追いかけるのがやっとだった。

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P483
 達也はホームの端まで移動していた。どうやらそこに偽の山月がいるらしく、達也は何者かと話しているところだった。流は二人の会話が聞こえる距離でそっと階段の陰から様子をうかがう。

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P483
「やれやれ、最後の一服が悪かったか……いや、一本前の電車に乗れてればよかったんだ。こりゃ、魔法が解けたな」
 流の知っている山月とは似ても似つかぬ口調でそいつは達也と話をしてた。その指の間からは細い煙が立ち上っている。禁煙のホームでいい度胸だ。

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 程なくしてホームに京都方面の電車が滑り込んでくる。達也は流の姿を確認して、電車の停車音に負けない声で叫んだ。
「瓶賀さん! 出てきて下さい」

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 五条駅のホームで、双鴉は突然の再会に戸惑っていた。
「お、おう。久しぶりだな」
「な、何が『またな』だよ。会う気もなかったくせに。今日だって達也がいなけりゃ逃げてただろ!」

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 達也は黙って踵を返す。全貌は解らないが、どうやら自分の仕事は二人を引き合わせるところまでだったらしい。その時、ホームに国際会館行の電車が入ってくるというアナウンスがあった。

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「だったら嬢ちゃん、なりたい大人にはなれたかい?」
 流は泣き笑いのような表情で何とかこう答える。
「烏有さんと同じさ……大人になるのはまた明日。いつまでもな」
 達也に聞こえたのはそこまでだった。
「……お幸せに、瓶賀さん」
 ブレーキ音にか聞けるような声でそう告げて、達也は改札へ戻る。

今出川ルヴォワール

鴨川東岸

 達也が物語序盤で大怨寺を眺めている中クリスに出会った場所。

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 達也の立ち位置から大怨寺を眺めると下図のようになる

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 下鴨から鴨川東岸を南下する若い大男がいた。
(中略)
 川端今出川にある賀茂大橋を潜り終えたところで竜也は足を止め、鴨川の方を向く。時刻は午後七時前だがまだ外は明るい。にもかかわらず、川沿いの遊歩道に人気は少なかった。代わりに沢山の赤とんぼが河原や河面を占拠するように宙を舞っている。
 そして今、達也はそんな火の粉のような群れ越しに対岸を睨んでいた。
 対岸を向けられた達也の視線の先には、鬱蒼と茂った木々と、その奥に鎮座する不気味な寺があった。

京都市勧業館

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 水呪坊殺しの双龍会が行われた会場

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 内部は上図のようになっている。

川端警察署

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 撫子が自転車の盗難届を出した警察署。

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「ええ、自転車を大学で盗られちゃって」
 管轄の川端警察署に盗難届を出したものの、お陰で撫子はバス通学を強いられていた。

恵文社

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 龍樹家の近所にある書店。撫子が文郎に会うのを避けるため寄って行けばよかったと後悔した書店の一つ。外観はかなりオシャレで学生が多く住む街だからか学術書の品揃えが主。文芸作品は少ない。

丸山書店

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 同じく龍樹家の近所にある書店。現在では閉業して大垣書店となっていてカフェが併設されている。

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 こんなことなら近所の恵文社か丸山書店で時間をつぶしておくべきだった。

瓜生山

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 文郎が大怨寺から売り付けられた土地。写真の木は当然北白樺ではない (そもそも北白樺などという木を聞いたことがないのでおそらく存在しない)。

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「まさか! 行ってみたら、土地っちゅうか瓜生山の斜面やった。流石のワシも驚いたわ」

大恩寺

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 大怨寺と同名の川端警察署の近所の東山二条にある寺院。

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「大恩寺って東山二条の?」
 撫子は思わず問い返す。大恩寺が土地の取引でトラブルを起こすようなところとは考えにくいからだ。
「字が違う! 怨めしいの大怨寺や。河原町今出川の南東や。かなりでかいで」

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「それなら大恩寺を知らないというのはおかしくありませんか? 川端警察署から南下してすぐですよ」

大怨寺南側裏口

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 達也が入っていった大怨寺の裏口。大怨寺の位置には了徳寺があるが、現在では人が入ることはできない。

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「まず大怨寺の南側にある裏口には鍵がかかっていませんでした。俺はそこから寺の敷地に入り、本堂に辿り着きました。本堂の扉も人が一人入れる程度に開いていたので、俺はそのまま境内に入りました」

方広寺

 大怨寺の始まりとなった東山区にある京の大仏が建立された天台宗の寺院。

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「ああ。世にいう京の大仏、方広寺の大仏だ。もっとも、その大仏は開眼の前に焼失しているがな」
(中略)
「今から二百年以上前の話だ。三体目になる大仏が方広寺の本堂とともに落雷で焼け落ちた後、方広寺が凶の方角にあるとして、移転を主張する者たちがいた。結局は物別れに終わり、あの者たちは方広寺とは独立して大仏を……それも黒い大仏だ……建立することになった。それが今の大怨寺の始まりだ」

西陣郵便局

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 金綱坊襲撃事件の際に達也が大怨寺に「邪の音は六つ」というメッセージのハガキを送った郵便局

左京郵便局

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 水呪坊殺しの際に達也が大怨寺に「邪の音は六つ」というメッセージのハガキを送った郵便局

P86
「二枚目と三枚目のハガキはどちらも京都市内の時間外窓口から送られている。二枚目は左京郵便局で午後十時、三枚目は西陣郵便局で午後九時四十分だ」

TSUTAYA 烏丸今出川店

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 犀義一 (虚空坊) がTSUTAYAのカードを作ったレンタルビデオ店。現在では閉店してモスバーガーになっている。

P94
「今出川のTSUTAYAで会員証作ったのがまずかったか……まあ、いいや」

六角堂

 天親雹平が論語への反駁の際に引き合いに出した自動撞木装置のある寺。

P109
「六角堂では人が鐘を鳴らすのは朝晩一回ずつだ。あとは自動撞木装置が代わりに鐘を撞いてくれる」

上田技研産業

 自動撞木装置を製造販売している唯一の奈良のメーカー。

P110
「味気ありませんね。そんな都合のいい機械が本当にこの世に存在するんですか?」
「気になるなら検索してみろ。一社だけだが奈良のメーカーが製造販売を行っている。あるいは管理している破軍坊に直接訊ねるのもいい」

永平寺

 同じく自動撞木装置を導入している寺院。福井にある。

P110
「八つ当たりはみっともないぞ。第一、自動撞木装置は永平寺にもある。鐘の本義は自国を伝えることであって、別に無理して修行の一部にする必要もない。それに貴重な働き手を数時間に一度の鐘撞きで拘束することを考えれば、自動撞木装置を取り入れたほうが合理的だと思うが」

ボンボンカフェ

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 論語らが大怨寺を見張るために席取っていたカフェ。現在では閉業してる。

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 ボンボンカフェから大怨寺を見ると上図の様になる。

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 河原町今出川の交差点北東に『ボンボンカフェ』という店がある。開放感に溢れる吹き抜けが特徴的な若者向けの喫茶店だが、実は本格的な食事も酒も出す。

P171
 先日、双龍会の焦点となった大怨寺はボンボンカフェから道路を挟んですぐ南側にある。
 鬱蒼とした木々に囲まれた大怨寺は、往来からその姿を完全に視認することはできず、せいぜい瓦葺きの屋根が見える程度だ。

雀荘『大車輪』

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 犀義一が通っている雀荘。2021年10月現在では、堀川二条付近に雀荘はない。

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 タクシーが止まったのは堀川二条だった。撫子にはあまり馴染みのない場所だったが、流は迷わずにすぐ傍にある裏通りに身を滑り込ませる。そして煤けたビルの非常階段を軽快な音を立てて踏み鳴らし、四階に到達する。ここがどうやら『大車輪』らしい。

P218
 早足に百万遍まで出た撫子は今出川通を西へ走るバスに乗り、双龍神社へ向かう。烏丸今出川で降りれば、そう遠くない距離なのだ。

からふね屋珈琲 熊野店

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 流と達也がコーヒーを飲んだ喫茶店。

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 権々会前日、前期の試験とレポートを共に戦い終えた二人の師弟は東大路丸太町を少し上がったところにある、からふねや珈琲の熊野店にいた。

大怨寺正門

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 実際に鴨川に正門は存在しない。

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 鴨川に面した正門の前に受付が設置され、参加者が列をなしていた。

グレース田中

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 達也の家の近所にあるスーパー。辺理とともに、流らに差し入れするためのミネラルウォーターを買いに訪れた。

カナート洛北

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 達也の家の近所にある大型商業施設。現在では洛北阪急スクエアと改名されている。

P332
 元田中にある『グレースたなか』は何の変哲もないスーパーだ。 (10:10)
(中略)
 川端北大路にはカナート洛北という商業施設がある。

農学部グラウンド

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 流らが瓜生山の仕掛けを発動させるための練習に使用していたグラウンド。

P337
 買い物を済ませて、農学部グラウンドの前でタクシーを降りたとき、どこか下品な叱咤の声が撫子の耳に入ってきた。
(中略)
 撫子たちは農学部グラウンドを辞去し、出町柳へ向けて歩き始めた。
(中略)
 百万遍の交差点に差し掛かるころ、いきなり達也が撫子に語りかけた。

大文字山

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 本来であれば大怨寺からは上図の様に大文字が見えた。

瓜生山 (天文字)

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 大怨寺から瓜生山の天文字を見ようとすると上図のようになる。

鴨川西岸

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河原町ルヴォワール

京都市中央斎場

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 落花の葬儀が行われた葬儀場。

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九月二十三日 十五時五十五分 (山科 京都市中央斎場)

京都家庭裁判所

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 事件当日、撫子が訪れていた裁判所。

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「まあ、暇なときに下鴨の京都家庭裁判所に行くようによう言うとくわ」

賀茂大橋

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 流が落花が濁流にのみこまれる瞬間を目撃することになった橋。橋の真ん中からは鴨川デルタが見える。

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『みっちゃん、ちょっと渡したいもんがあんねんけど、賀茂大橋の真ん中で待っててくれへん?』

龍門堰

 落花が発見された堰。鴨川下流の旧龍門橋のある場所に小さな堰がある。

 辛うじて過去にここに龍門橋があったということを示す痕跡が残っている。

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 午後十時ごろ、下流の龍門堰で着物姿の若い女性の死体が発見された。鴨川の水流に晒され続けたためか、引き上げられた時にはもうすっかり冷たくなっていた。

五条大橋

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 天親寅彦が落花のウィッグを発見した場所。

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「寅彦が五条の橋の傍でこんなものを見つけてな」

サントアリオ病院

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 地理的に日本パプテスト病院がモデルだと思われる。物語上では裏口がないとされているが、この病院には瓜生山への登山口の脇から敷地内に入ることができ、裏口からの侵入も一応は可能。

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京都御所 (双龍会会場)

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『丸太町ルヴォワール』と同様、会場は京都御所内の紫宸殿だったかと思われる。寅彦が言及してた臥虎の間と蔵竜の間は実在しないが、「虎の間」と呼ばれる控室は存在し、襖には虎の絵が描かれている。もしかしたら龍師たちの控室として使われていたかもしれない。

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「そういえば九月二十六日、京都御所の臥虎の間、蔵竜の間をこちらで抑えておいた。」

下鴨警察署

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 犀義一がクリスに襲われたのがこの下鴨警察署の周辺。また、事件当日に大怨寺にガサ入れがあり、犀義一が事情聴取のために捕まっていたのも下鴨警察署。

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九月二十三日 18時30分 (下鴨 下鴨警察署近辺)

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「俺ら下鴨警察にいたんだよ」

おむらはうす

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 達也と流が訪れた達也お気に入りのオムライス店。

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九月二十四日 十三時二十分 (出町柳 おむらはうす)
  百万遍まで戻ってきた二人はその足で『おむらはうす』というオムライス専門店に入った。流はそうでもないが、達也はこの店を気に入っているのだ。
「ハヤシオムライス、大盛で」
 前もって決めてあったのだろう。達也はメニューも見ずに注文した。
「あー……とろ湯葉オムライスでいいや」

青蓮院

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 青蓮院は知恩院の真北にある天台宗の寺院として実在する。

P123
 東山には聖域がある。
 知恩院のほど近くにある屋敷は高い壁に囲まれ、外から中の様子をうかがうことはできない。その屋敷こそ世間では青蓮院で通っている集団の本拠地だ。

京都御苑〜河原町通 (ラストシーン)

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 ただ再開したかった。
 論語は黄昏に包まれた京都御苑で静かに砂利を踏みしめながら、ただあてどなく歩いていた。他人の都合に支配された人生、そんな身の上を忌まわしく思いながらもどうにもできなかった自分がいた。
 そんな支配を破って現れたのが彼女だった。

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 やっぱりまた会いたい。本当の意味で彼女と再会したい。そして最後にもう一度。話したかった。

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 やがて論語は御苑を抜けて河原町通りまで出る。そして何気なく……本当に何気なく南に折れようとした。特にあてがあったわけでもない。だが無意識に岡崎に返ろうとしている自分に気がついて、ため息をついた。

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 迷った末に論語が北へ踏み出そうとした刹那、背後から美しい声が聞こえた。
「どうして君はいつもいつも、自分のことについてはペシミストになるんだろうね」
 思わず論語は足を止めた。だが、振り向こうとはしない。

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「やっぱり振り向くのね」
「撫子さん……」
 思っていた通り魔法は解け、彼女はいなくなってしまった。背後に立っていたのは龍樹撫子、論語が最も愛した人だ。
(中略)
 撫子はそっと論語の手を取る。論語は抵抗もせず、ただ撫子を見つめていた。
「ねえ、論語君。今となってはもう君がいてくれるだけでいいの。どんな結末が待っていても、自分が心から選んだ道なら喜んで受け入れる。だって私は……」
 そして撫子は論語の手を引いて南へ……丸太町通りへ歩みを進めながら、こう囁きかけた。
「貴方を愛しているんだから」


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