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無計画な引越しと猫からのサプライズ

引越しの段ボール詰めが終わったのは、すっかり日が沈み切ってしまった後だった。

「昼ごはん食べる頃にはある程度終わっているでしょ」って言った朝の自分をぶん殴ってやりたい。

引越しをするとき毎回(と言っても二回目だが)一番に心配するのは本がどのくらいあるかだ。服や雑貨などはほぼ買わないので、生活の中で増えていくものは本くらいだ。前回の引越しでは、本だけで段ボール(中サイズ)が5箱ほども必要になった。2,3箱くらいの甘い見積もりだったので、段ボールが不足し、追加で買い足す手間が生じた。

それを除けば、前回の引越しは概ね順調に運んだ記憶がある。本のことはあったが、一日の作業でほぼ終わらせられた。

今回は反省を生かして、本は2週間前から少しずつまとめることにした。案の定、想定よりも箱の数が必要になり、最終的には8箱に達した。

それ以外の生活に必須でないものも、事前に段ボールに詰め、不要な家具の処分も全て終わらせた状態にしておいた。

我ながら完璧!あとは服や食器を詰めればOKだ!

前回が1日で終わった。今回は事前に重い工程は事前に済ませたから半日もかければ十分……と甘い考えを持ってしまった。結果、夜ギリギリになった。

どうして居間のシーリングライトを取り外してしまったんだ……。おかげで別室の照明とスマートフォンの懐中電灯だけを頼りに作業する羽目になった。

今回想定よりも片付けに時間がかかってしまったのは、まず部屋の広さが前の部屋よりも広くなったのがひとえにある。部屋の広さに合わせて物の量も、生活の中で少しずつ増えていたのだ。自称ミニマリストを名乗っていたが、もう名乗るのはよそう。

部屋が広いと掃除も大変だ。そういえば、前回は荷物を運び出したあと、1日集中して掃除する日を作ってやった。

今回は引越し日のすぐ翌日が退去日というタイトなスケジュールだったので、その日のうちに掃除まで済ませなければならなかった。計画の段階で掃除の手間を完全に見誤った。

今回は色々と状況が特殊で仕方ない部分もあったが、つぎ引越しする時はもっと余裕を持った計画にしよう。

そして、翌日。引越し&退去日。

昨日のバタバタとは打って変わって何事も問題なく運んだ。予定通り引越し業者が来てくれて、引越し代金は事前の見積もり通りに収まってくれた。管理会社による退去立ち会いも、掃除の行き届かなさゆえにクリーニング代を法外に取られるのではとかなり不安だったが(前回はだいぶぼったくられた)、ほぼ指摘なしでむしろ敷金が戻ってくる形になった。

立ち会いが無事終わって、とてつもない達成感・解放感と共に2年間住み、僕の最後の独身一人暮らしの住まいとなったマンションを飛び出た!瞬間、僕は後ろに飛び退いた。違和感の先に目を凝らすと、そこには野鳥の死体が転がっていた。入口の前で小さく硬くなって生気が完全に抜け落ちていた。

おいおいおいおいおい…おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいッ…

なんて不吉な。。。
怖くなって逃げるようにそこから立ち去ろうとした。

でも、この家での最後の思い出が逃げるように出ていくことでいいのか。不吉を背負って次の場所へ行っていいのか。

振り返り、死体を見つめながら少しずつ冷静さを取り戻す。

これはあれだ。いつもこの辺りをうろついている野良猫から僕への選別ではないかな?

うん!そういうことにしよう!

ただ、せっかくの選別をそのまま放置していくのは猫様に失礼だ。「あいつ、僕からの贈り物を無視しやがった」と思われたらそれこそバチが当たりそうだ。

というふうに認識を改めて、僕は少し気持ちを奮い立たせて鳥の体を掬うと、すぐ近くの空き地の茂みの中に寝かせてやった。

猫様からの選別は受け取れないが、せめて自然に戻して他の生命の栄養になってくれたらと願って立ち去った。

ちなみに、鳥の死体には病原菌が付いている恐れがあるので、素手で触るのはアウトだそうなので、次からは布やビニール袋に包んで弔おう。(手はすぐに近くの駅のトイレの石鹸で洗いました)

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