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空想地図界隈の変化 & 企画室メンバー

こんにちは、こんばんは。
「空想と地図の企画室」2投目の投稿は、今和泉隆行(地理人)からお届けします。

そもそもこの企画室、誰がいるの? どんな経緯でできたの?…というところを、私から紹介します。
メンバーは4人で、全員が空想地図作者です。(空想地図についてはそれぞれWebをご覧下さい)

4人の空想地図作者がメンバー

Rano (加藤太一)

@ibrn_ , hiji.mosha2.jp
松戸市→八王子市→川崎市→渋谷区と首都圏を転々としつつ、描くの空想地図は、首都から離れた地方の中心都市。
元は一人で空想地図制作を進めていたが、マニアフェスタへの出展を経て、徐々にコミュニティ醸成(空想地図学会, 2019年〜)や情報発信(小冊子「空想と地図」, 2023年〜)を始める。シンプルで洗練されたデザインを得意とし、「空想と地図」のデザインも担当する。当企画室の代表。

地理人 (今和泉隆行)

@chi_ri_jin , imgmap.chirijin.com
横浜市→日野市→さいたま市→文京区と、同じく首都圏を転々とし、描く空想地図も首都圏郊外の中心都市。
空想地図制作の後に書籍刊行、取材、出展(出店)の機会を得るが、これは本人の積極性の結果ではなく、領域外に繰り出した後に誘われた結果。地理的なものにも興味はあるが、同じくらい人間の内面にも興味がある。デザインは少ない面積に多量の色と情報を押し込めがち。(最新刊の空想地図帳がソレ)当企画室の副代表。

ますば

@34mapth , tizuko.com
広島市→京都市→福山市と西日本を動きつつ広島市にも赴く。描く空想地図も広島からの影響が大きい。
大学時代は台湾や札幌に長期滞在、社会人となった現在も月に数回遠方に飛ぶ等、フットワークが妙に軽い。自由を求める感性と熱がこうした(はみ出した)動きの源泉となりつつ、隠れた理論および事務処理の力が自身のそれを支える。(後者の力が大いに発揮されて)当企画室の会計。

うねおか

@city_uneoka , iuc.yu-nagi.com
札幌市→三郷市→札幌市と北の大地へのターンを果たす。描く空想地図は北海道の影響が強かったが、徐々に本州要素も取り入れていく。
地理人と同タイミング、同番組で初めてのメディア出演(タモリ倶楽部, 2013年)をした作者だが、一作者である以上にネット初期(Twitter以前、2ちゃんねる時代)の各作者のウォッチャーでもあり、当時の架空地図界隈を知る識者でもある。当企画室の書紀。

なぜこの4人が巻き込み、巻き込まれたか

まず「空想地図学会」「空想と地図」を一人でやろうとしていたRanoさんに、「それ、一人でやるとパンクするのでは?」と地理人がジャブを打ち、何かしらの組合のようなものが構想されます。同様に他の作者および発信に関心があり、私が上記のような、ちょっとツッコんだ他己紹介をしても大丈夫そうなオープンマインドを備えている人は誰だ…というところで、ますばさんを召喚します。

しかしスタイリッシュ方面のRano、多様な異領域に繰り出す地理人、領域を問わず熱源のようなところに向かうますば…の3名では足りないところがあります。トラディッショナルなヲタ的カルチャー(を発端とする当該地図等)への理解、認識が甘い課題感もあり、そこに強い人は誰か…と、北の大地のうねおかさんの顔が浮かび、ちょうど彼が東京に来ていたタイミングで召喚します。

「空想と地図」Vol.1・2

……というわけで、無理なく継続して「空想地図学会」「空想と地図」がお届けできれば…と(一同)思っております。

空想地図をとりまく変化

昨年は、空想地図界が動く節目の年になったのではないか、と思っております。(以下、昨年末のポストを編集してまとめております)

なにより以前、空想地図は、同業者にのみおそるおそる開陳する密室趣味でした。うねおかさんは周囲のほとんどの人にこの趣味を明かさなかったほどです。ただ、近年は「分かる人には分かる」マニアックさと熱は保ちながらも、巷で言うのもアリな趣味になってきた感があります。というのも、近年は若年層の空想地図作者が増えてように感じます。これは、作者が増えたのではなく、前から作者はいたのだが言わない人も多かった…と見ています。今や、空想地図制作を隠さず表に出す人が増えた、という変化だと思っています。

陰から陽、裏から表、というほどの逆転的な変化ではないにしろ(そこまでの変化を望む人もいないと思いますが)、真っ暗な密室に適量の光と風が差し込むくらいの変化は、一体どこから来たのでしょうか。というわけで振り返ってみたいと思います。(客観的に振り返る立場でいたいんですが、そこそこの頻度で私が登場します。ありゃりゃ…)

現在の企画室2名+もう1名が呼ばれ、空想地図に関する初めてのテレビ放映(タモリ倶楽部)があったのは2013年5月。初めての空想地図に関する本の出版(みんなの空想地図)も同年で、それから10年が経ちます。それ以降も深夜バラエティーやラジオ、雑誌、Web記事等で取り上げられる機会は年に数回あり、それはそれから10年間コンスタントに続きます。その多くを私が受ける形でしたが、それ以降もRanoさんをはじめ、延べ7名の作者が何かしらの番組に出ています(鉄道、路線図のみの作者は除く)。

そしていずれも嘲笑の対象とはならず、むしろ好反応を得ることがほとんどでした。そして昨年、多様な空想地図(作者)を書籍で紹介するに至ります(空想地図帳)。作者単体ではなく、多様な作者の空想地図を一気に開陳し、世間に届けることとなりました。

空想地図学会(2019年12月)

空想地図界

2013年からの10年間で、空想地図は「籠もる密室趣味」から「共有する趣味」に変わっていった、とも思います。そしてこれからは共有の先のフェーズに来つつあります。近年の変化を分解すると、(1)コミュニティ醸成、(2)作者サイドからの発信、(3)コラボレーション、(4)学術研究、の4点があります。

(1) コミュニティ醸成

2019年に想地さん(@koridentetsu)が架空言語・架空地図学会(関西)、Ranoさん(@ibrn_)が空想地図学会(関東)を始め、みゆりさん(@fuse_miyuri)がオンライン共有の場としてDiscordを始める等、複数の作者が共有、交流の場を始めました。そして大きかったのは2022年、「地理系ブックカフェ空想地図」(@fantasycitymap_)の開店です。作者が集まるリアルコミュニティ、作者に限らずより広い地図・地理関連のイベントカフェとして、発信の場にもなってきています。実は2013〜15年頃に、私も「架空地図学会」なるものを開催しておりました。静かに言い出しっぺをやってたのですが、私は主催する熱を持ち続けるのに難があり、この流れは一度退潮します。その息を吹き返す動きがRanoさんの空想地図学会だった、という訳です。

2022年に開店した地理系ブックカフェ空想地図

(2) 作者サイドからの発信

これまで作者本人による発信や、取材等で取り上げられることはあれど、作者が他の作者および空想地図を紹介することはなかなかありませんでした。その皮切りとして、昨年刊の「空想地図帳」で、たくさんの作者の空想地図を紹介しました。全国の書店で売られることで広く届き、残るものでもあるのですが、続編を出せるかというととても怪しく、これから出るものを拾いきれないという問題はあります。そこで、小冊子「空想と地図」を定期的に出すことで、継続的な発信ができる…というわけです。ただ、こちらは届け先(書店)の開拓から始まるので、波及範囲も手探りで始まったばかり、というところです。とてもアナログな2本仕立てです。(まぁこのnoteがどれだけ波及力を持つか、にもかかっているのかも知れませんが〜)

(3) コラボレーション

OpenStreetMapのビジュアルや操作性で作られた国際的なオープン空想地図プラットフォーム「OpenGeoFiction」opengeofiction.net)なるものがあるのですが、Twitterでの発信もなく、なかなか知られていませんでした。イタリア人作者のダヴィデ・キアラモンテさんからの周知もあり、一昨年、その存在を作者が知ることとなります。これは国際的な空想地図制作コラボレーションの動きですが、個人レベル(いや、法人で受けました…が、そういう話ではないか)でも、昨年は共同で空想地図を作る動きがありました。来年リリース予定の「ストリームヒーロー!」の舞台となる空想地図を、6人で製作しました。地図制作と他のクリエイティブのコラボはこれまでもありましたが、地図制作のコラボレーションは新しい波かと思います。

(4) 学術研究

空想地図が博士論文の研究内容になり、国際学会で発表する…という流れもまた、昨年の新しい動きでした。その潮流を作ったのは吉田桃子さん(@momo_cartograph)ですが、研究の一貫で数人の作者へのインタビューや、自ら作者となって空想地図を作るいった動きもありました。詳しくは「空想と地図」第2号の記事でインタビューしております。学術的な眼、海外からの眼、というのが新しい視点として加わったと言えるでしょう。

これまでの10年間の振り返り…で始めたつもりが、昨年の振り返りになってしまいましたが、それだけ昨年は空想地図界のターニングポイントが多かったとも言えます。最近「空想地図界隈は、コミュニティがあるんですねぇ」と言われることが増えてきたのですが、私は全然コミュニティのコの気配もなかった頃(作者同士は誰も会ったこともない頃)の記憶も鮮やかです。

10年過ぎてここまで変わってきたということに、隔世の感を感じつつ〜今後の潮流も楽しみにしたいと思います。

それではまた〜

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