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◎自分の中に一輪の花を見つける。激キツフィジカルトレーニングで限界を迎えたときのはなし◎

皆さんこんにちは!今井夢子です。

スペインのフィジカルシアターカンパニーでの仕事は8月いっぱいで無事に終えまして、もう少し身体表現の勉強をするべく、私はいまセビージャからマドリードに来ています。

アンダルシアの空気感から比べるとマドリードはびっくりするほど都会で・・・東京生まれのくせに少々シティに馴染めずにおります。

ようやく少しずつ自分の時間が取れるようになってきたので、スペインでフィジカルを通して経験したことをまた少しずつシェアしていきたいなと思っています。

さて今日は、SENNSAで体験した、鬼激最強スパルタトレーニングその名も「ダイアゴナル」を通して、身体と内面の関係を考えてみた話です。


私が働いていたセビージャのカンパニーSENNSAは、強く激しく速い表現がウリのフィジカルシアターでした。
当然、俳優には肉体訓練が必要です。
日々の稽古で行われる数々のエクササイズの中でも、最もベーシックかつ、最もキツイ稽古。それが、「ダイアゴナル」。

簡単に言うと、列になってひとりずつ、ジャンプ、ターン、ステップ、などの「動き」を行いながら、稽古場の端から端まで斜めに「移動」する、というもの。

ああ、言葉にするとなんて簡単そうなんだ!!

これがもうなんかもうなんでかもう、

鬼キツイんです!

「動き」と一口にいっても、小学校の授業でおなじみの前転後転や、ダンスをかじれば必ず練習するパ・ド・ブレなどのベーシックなものから、開脚ジャンプ、ほふく前進、四つ足歩きなどなど、動きのバリエーションは多岐にわたります。
舞台上で様々な動きを演じられるように、そして動きの仕組みを考えられるように、バランス良く組み合わされているのです。

例えばリハ当初、女優陣全滅だった動きは、こちら。
(ビーチで遊んでみました◎)https://twitter.com/i/status/1173972427593920518

様々な動きを、さらに移動を組み合わせて行っていくわけです。
その数25種類。
そしてこのエクササイズの間は、会話禁止、発語禁止、無表情で淡々と、静かに行うことが求められます。「やっべきっちー!」とか言っちゃダメなんです。

もう一度言わせてくれ。

これが、マジで、本当に、

キツイんだ!!!!!!!
もう嫌になっちゃうぐらいキツイんだ!
自分が情けなくなっちゃうぐらいキツイんだ!

しかし。
いちばん初めにこのエクササイズを教わった時に、始める前に先輩から言われた一言が、私の心を掴んで今も離さない。

「このエクササイズはハードだ。けれど限界がきたときこそ、自分の中に在る一輪の花を探しなさい」

この言葉。


限界の迎え方は人それぞれである。

ある仲間、超美形の可愛らしい女優は限界が来ると「Fxxk!!!」と叫ぶ。
ある仲間、リーダー気質の兄貴肌は限界が来ると、目を泳がせながら間接が痛い振りをしてサボる。
ある仲間、心は女子な身体のすごく大きい俳優は限界が来ると、メソメソと泣く。

ただのエクササイズでこんなにも人の限界に触れるとは、フィジカル恐るべしである。

もちろん私も何度も限界を迎えていた。
私は基本的には出来ないことは自分で稽古して出来るようになりたい真面目かつ負けず嫌いタイプ(特にフィジカル)なので、ダイアゴナルを稽古すること自体は嫌いではなかったし、もっと出来るようになりたい!という気持ちも強かったのだけれど、物理的にはやっぱりキツくて、心が折れそうになったことは何度もあった。

体力的、筋力的な限界から、心まで限界を感じそうになっていたのである。


そんなときに私はいつもこの先輩の言葉を思い出して、なんとか自分の中に一輪の花を探そうとした。

自分の中に一輪の花を探す。
まったくもって意味不明な言葉だ。

けれど限界を迎えている瞬間、自分の中に一輪の花を探すという行為は、ものすごく私を救ってくれた。
自分の中に広い空と、鮮やかな草原が広がっていて、爽やかな風に吹かれながら、もしくは風そのものになりながら、美しいたった一輪の花を探しているような、そんなイメージが私の中に生まれていたのである。

四方真っ黒なスタジオで、汗にまみれ、ほこりにまみれながら、髪をぐちゃぐちゃにして床をごろごろ転がったりしてる最中に。

私の身体は重力を感じ、痛みを感じ、疲れを感じ、不自由を感じている。
けれどそれによって、私の内部は、限りなく自由を感じている、という不思議な現象が起きたのである。


身体と心は繋がっている。
それが特にSENNSAに出会ってから、よくよくわかるようになった。

けれどだからこそ、身体と心は切り離すこともできる。
身体は身体の仕事をし、身体の自由を得ることができるし、心は心の仕事をし、心の自由を得ることができる。

お互いがくっつきすぎていてもダメなのである。
心が哀しいからって、ステップが踏めなくなっては困るし、身体が限界だからといって、心までいつも限界なわけではない。

独立しているからこそ、繋がることができる。
身体と心が、お互いに作用し合い、助け合い、補い合って、双方が双方の豊かな方向に進むことで、俳優自身が大きくなっていくのだと思う。


身体と心がこんなにも違うベクトルで共存できるのだ、ということを知った限界ダイアゴナル。

ちなみに8か月働いた後には、完璧に出来るようになり、もはや大好きなエクササイズになりましたよ◎
日本に帰ったら是非皆さんにスパルタシェアしたいと思っています。ふふふ。


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