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美術展プロデュース

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海外・国内美術展プロデュースの経験、進行中案件、ウラ話など
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記事一覧

学芸員資格をとってみた

美術展主催者が考える「美術展が美術展と認められる要件」に  ①開催場所は「美術館」(作品保全の観点から温湿度管理は必須) ②「学芸員」が参画 というのがあります。 この2つが揃っているか否かが「展覧会」と「展示会」の大きな違い(意外とこれ、混同しがち)です。②の「学芸員」は日本では国家資格。長年メディアの立場で美術展のプロデュースをする中で、この「学芸員」という資格、ずっと気になっていました。  そこで一念発起、昨年度、大学で学芸員課程を履修することに! 通常は美術館や

アメリカ印象派展開催中“隠れ睡蓮“を探せ!

東京・上野の東京都美術館で絶賛開催中の「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。 おかげさまで連日たくさんのお客様にご来場頂いています。本展プロデュースに関わる者として、心より感謝申し上げます!本日は本展のメインビジュアルの一つ、モネの《睡蓮》の、ちょっとツウなお話第2弾(第1弾は、文末をご参照ください) ▶「《睡蓮》を観るとその日の天気がわかる」多作家で数多くの睡蓮を描いたモネですが、本作では、タイトルの睡蓮は画面の左隅に描かれています。画面中央はぽっかり空いて

アメリカ印象派展 “アメリカのモネ”と呼ばれた画家

東京・上野の東京都美術館で開催中の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。おかげさまで連日大勢のお客様にご来場いただいています!  きょうはメインを張っている画家のひとり、“アメリカのモネ”と呼ばれたチャイルド・ハッサムのお話。 ▶”アメリカのモネ“ チャイルド・ハッサム モネの《睡蓮》(1908年)と並んで展覧会のメインビジュアルとなっているチャイルド・ハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》(1888年)。筆のタッチが似ていることから、ポスターを見て

アメリカ印象派展 開幕です!

▶︎ベタな印象派の展覧会ではありません!「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」本日、東京都美術館で開幕しました!初日からたくさんのお客様にご来場いただき、心から感謝いたします! 一般的に印象派といえばフランス印象派。その誕生から150年という記念の年に、印象派がもたらした、まさに「革命」と言うべき変革とアメリカを始めとする印象派の世界的な広がりを紹介する企画です。 ▶︎初めて出会う画家の作品に癒される ご来場いただいたお客様から「とにかく明るく、美しい!」「

アメリカ印象派展まもなく開幕!

いよいよ1月27日(土)に開幕の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。フランスのイメージが強い印象派ですが、フランスから世界に広がり、アメリカでは「アメリカ印象派」と呼ばれる作品が生まれました。本展はこれまで日本では紹介されることが少なかった知られざる「アメリカ印象派」の魅力をたっぷりお届けする展覧会。開幕に向けていよいよ準備も追い込み中!今日は輸送と展示のお話です。 ▶アメリカから作品到着!本展にはフランス、アメリカをはじめとする印象派の作品およそ70

ロートレック展制作中!②『 日経おとなの OFF』の表紙を飾りました!

来年(2024年)6月から開催予定の「ロートレック展 時をつかむ線」。 フランス、ベル・エポックを代表する画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)のグラフィック作品の個人コレクションとしてはおそらく世界最大級と言われる、アメリカのフィロス・コレクションが初めて来日します! ▶︎2024年 絶対見逃せない美術展 毎年12 月になると書店の雑誌コーナーを彩る「来年見逃せない美術展」特集。来年6 月から開催される「ロートレック展」が、『 日経おとなの

アメリカ印象派展開幕まで1か月!そもそもアメリカ印象派って?

来年(2024年)1月から開催されるアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。印象派の展覧会は数あれど、これまであまり紹介されてこなかった「アメリカ印象派」にスポットを当てます。でも、そもそもアメリカ印象派って?フランス印象派と何が違うの? ▶フランス印象派の誕生 印象派は19世紀後半フランスで生まれ、それまでの美術のメインストリームだった”秩序”を重んじる「アカデミーの美術」に反発、美術界に変革を起こしました。その革新性は、両者を表すキー

アメリカ印象派展制作中!⑤世界で初めて美術館が購入したモネの〈睡蓮〉

来年(2024年)1月から開催されるアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。ポスタービジュアルの一つ、クロード・モネの《睡蓮》は、ウスター美術館が世界で初めて美術館として購入した〈睡蓮〉です。この作品には画家の“チャレンジ”、そして美術館にとっても “チャレンジ”がありました。 ▶モネのチャレンジモネは1883年、43歳の時にパリ近郊のジヴェルニーに居を構え、以降1926年に86歳で没するまで、人生の半分をこの地で過ごし制作を続けます。

ロートレック展制作中!①2024年6月フィロス・コレクション初来日!

来年(2024年)6月から開催の展覧会「ロートレック展 時をつかむ線」。  日本でも人気の高いフランスの画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec 1864-1901)の、グラフィック作品の個人コレクションとしてはおそらく世界最大級と言われる、アメリカのフィロス・コレクションが初来日します。  現在展覧会制作中!その過程やウラ話を随時お届けします。 ▶ポスターを芸術に高めたアーティストロートレックは20世紀初めのパリで活

アメリカ印象派展制作中!③ウスターこだわりウラ話

来年(2024年)アメリカ・ウスター美術館所蔵のアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されます。今回は隠れ家的美術館、ウスター美術館のプライドとこだわりをご紹介! ▶アメリカの大美術館は大富豪からの寄贈作品がベース アメリカの大きな美術館に特徴的なのが、裕福な個人コレクターからの寄贈品がベースにあるということです。1870年に開館したニューヨークのメトロポリタン美術館はアメリカを代表する資産家、ロックフェラー一族を始めとする名だ

アメリカ印象派展制作中!④美額の美学

来年(2024年)アメリカ・ウスター美術館所蔵のアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されます。今回は閑話休題。額縁のお話。 ▶フェルメール《レースを編む女》の額は元は鏡のフレーム 絵画を囲む額縁は作品と密接な関係を持っていて、時代や地域によって様式やデザインが異なります。15世紀後期から16世紀にかけては建築装飾の一部としてデザインされ、17世紀オランダでは簡素な黒檀貼り仕上げ、フランスの「ルイ様式」にはバロックとロココ様式があり

アメリカ印象派展制作中!②ウスター美術館は3時間で見られる美術の百科全書

来年(2024年)アメリカ・ウスター美術館所蔵のアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されます。ボストンから1時間、知る人ぞ知る隠れ家的美術館、ウスター美術館の魅力をご紹介します! ▶ウスター美術館は お手頃”美術の百科全書” 3時間で5000年の美術史を総ざらい! よく、ニューヨークのメトロポリタン美術館を指して「古今東西の人類史が詰め込まれた百科全書」という表現が使われますが、ウスター美術館(Worcester Art Muse

アメリカ印象派展制作中!①2024年1月開幕!

▶ウスターってどこ? アメリカ・マサチューセッツ州ウスター・・・と言ってもピンとくる人は少ないかもしれません。スペルも Worcester、なかなか読めません。。。ボストンから車で西へ70km。人口21万人(2023年現在)の中規模都市で、マサチューセッツ州ではボストンに次ぐ第2の都市です。 街の名前の由来はイギリスのウスターシャー州・ウスター。そう、食卓でお馴染みのウスターソース発祥の地です。 ウスターは1776年7月、マサチューセッツ州内で初めて(ボストンより早く)

美術展の仕込は4年がかり【前編】

メディアが提案・主催する展覧会では、大型の企画は実現までに4年程度かかるのが一般的です。「そんなに長く?」と思われるかもしれません。 美術展の開催期間は数週間・・・でもその作業は膨大! 今回はメディアが主催する展覧会の一般的なプロセスを2回に分けてお話します。(あくまでも個人の経験に基づくものです。ご承知おきください) 前編は、端緒から展覧会開幕1年前あたりまでの動きです。 1.企画:開幕4年前〜1年前 *以下が同時並行で進みます ①端緒は思い付き? 世の中のト