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最も困窮している地域や団体ほど、助成金申請ができない二重苦に陥っている〜スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューVOL.05から学ぶ〜

このnoteはスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューVOL.05を参考に記載しております。

本書P22から始まる、

最も持たざる地域が資金提供者から「相手にされない」理由

というタイトルを読んだ時、これまで会ってきた何人ものNPOの人の顔が浮かびました。

「今、私たちが支援している人たちは、明日にでも闇の世界におちてしまうような危うい状況なんです。そうならないように、懸命に活動をしています。もう少しお金や仲間がいたら、手が届いた人もいたのだけど、それができなかったことも数多いです。助成金の申請をしようと思っても、忙しくて気づいたら申請期限が過ぎていたり、出しても不採択になることばかりで諦めています。」

その人たちはみなさん、このようなことを言われていました。

アメリカでも助成金などの資金提供において、都市部と非都市部とで偏りがあることが述べられています。

歴史的に見て、人口密度の低い郊外や農村地帯は、地域における問題の深刻さが都市部と変わらない場合でも、外部からの資金援助が十分に届いていなかった。(中略)非都市部は困難を抱えており、年を追うごとに状況も多様化しているが、地理的に遠く孤立しているために、資金の流れは「都市部に大きく偏っている」

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューVOL.05
p24から抜粋

これは、NPO業界で言われる「作文がうまい団体が助成金を得やすい」といったことよりも、もう少し根が深い問題です。

最も困窮している地域が助成金を申請する可能性が最も低いことが明らかになった。(中略)つまり、自分たちの窮状を支援者に伝える能力を持つ地域と、その能力を持たず最も深刻な状況にある地域の格差が、(中略)ますます大きくなる可能性がある。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューVOL.05
P25から抜粋

助成金を申請する行為は、地域の課題を述べて、解決策と地域資源を挙げることです。それにより民間財団などの資金提供者は申請地域が抱える問題を把握します。

そのため、申請がない地域は、問題がないのではなく、本当は深刻な状況にもかかわらず、活動している団体がない、あったとしても申請する力がないため「盲点」になっているのです。

どのような地域に助成金などの支援性のある資金がいっているのかを、アメリカニュージャージー州における助成金提供データをもとに分析したのが以下の図です。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューVOL.05
P27から抜粋

まず『経済的困窮度』と『人材力』で分類しています。人材力は助成金を申請したり、存在感がある活動をしている人物や組織がいるかに関することを指します。

そして3つの色の丸で表現されています。助成金申請がなく盲点になっている地域にに住んでいる住民を表す黒い丸と、助成金申請をして資金獲得している地域の住民の青い丸、申請をしたが不採択となった対象地域の住民の数を示す黄色の丸です。

1番助成金を獲得しているのは、経済的に困窮しているが人材力が高い右上のところです。一方、盲点となっている地域が多く不採択も多いのが右下の経済的に困窮しているが人材力が低い地域です。

ここからわかるのは、地域が資金を獲得できるかどうかは、『助成金を申請できる人物や組織の存在』によって決まるということです。

非都市部で非営利団体が存在していなかったり、専門知識を持つ人がいないところは、問題として深刻だったとしても気づかれず手遅れになる可能性が高いです。

助成金を出す民間財団は都市部にありがちで、都市部の行政機関や組織との関係性があることが多いです。また、限られた資金を有効的に助成したい考えから、人口密度が高い場所での活動に助成する方が社会的インパクトがでると信じている資金提供者の多さなどで、こうした偏りはなかなか解消されませんでした。

しかし、昨今、エクイティ(構造的差別の解消)を配慮したリソース配分の重要性が言われ始めており、経済的困窮度合いと人材不足度合いを見て、対象地域を限定した助成プログラムがみられるようになりました。

とはいえ現状は、採択にいたる現地で活動する団体がなかったり、事業を遂行する実践力が不足しており資金提供者との協働がうまくいかない団体も多く、一筋縄では行っていません。

先見性のある市長の当選、海外留学・一流企業から転身した人材や著名なデザイナーの移住、行政・企業・NPOのコネクションが多くあるインフルエンサーの参画など、活動の核となる人材による好事例はありますが、そうした逆転ホームランの幸運を願うのしかないでしょうか。

もうひとつ思うのは、助成金の偏りは、都市部・非都市部という地域性だけの話ではなく、子どもや貧困といった注目されやすい領域と、中高年のメンタルヘルスや障がい児の親の支援といった注目されにくい領域の偏りといったことにも共通することです。

私はNPOの伴走支援を長年しているなかで、助成金の採択をきっかけに事業を拡大させて、さらなる助成金の獲得や、クラウドファンディングやマンスリーサポーターによる寄付者を増やしていった団体さんをいくつか見てきました。

最初は、団体の強みや存在感、既存事業の社会的インパクト、団体のミッションと社会状況に沿った事業立て等がうまく言語化できず、悩んでいらっしゃいましたが、いくつか助成金申請を一緒にして、採択されるようになると自信が持てるようになり、言語化のコツをつかまれたと思います。

そこから、会得した言語化のコツをボランティアやプロボノメンバーに共有し、分担して実践していくことで、申請できる体制を整えていく団体もありました。

これからの資金提供者は、エクイティ(構造的差別の解消)を合言葉に社会問題対策の空白地を探し、資金提供をすることが増えてくると予測されます。しかし、そこを担う意志がある団体が見えずもどかしい状態が今です。

そうした資金を受け入れると、なんだかんだ注文を受けることが多いのではないか?そんな疑念を抱く団体さんもいるかもしれません。

しかし、そうした資金提供で求められているのは大手NPOの管理レベルではありません。中間支援経験の長い団体や、実行団体として実績がある団体を事務局にすえる民間財団も出てきており、長い目で成長をよりそう意識を資金提供者は持つようになっています。

自団体の活動の地域や領域が盲点になっていると感じている団体さんは、まずは課題があることを助成金申請をすることで世の中に認知してもらうところからまず始めてもらいたいです。

その時にお願いしたいのが、自分たちだけでしないということです。助成金申請は世の中に社会課題や自分たちの活動を認知してもらうことですので、第三者的な視点が欠かせないのですが、活動している当事者がいくら頑張っても、その視点で表現することはできません。

私はこれまで多くの助成金申請のアドバイスや、採択後の伴走支援も多くしてきました。是非、申請をされる際にはご相談ください。公式LINEやホームページからのお問い合わせをお待ちしております。


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