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汝自身を知れ

先日、岩手の山奥から友達が遊びにきた。マイケル・モンローと同じ髪型で豹柄のジャケットを羽織っていたので、渋谷の人混みでもすぐに見分けがつく。 岩手の山奥の家の周りにには人間よりも熊のご近所さんが増えているとか、Back To The Future 1でマーティンがJohnny B Goodeを弾いてた時のギターは実は設定の年代には存在していないとか、ニーチェの話をしたりした。 ふだんは腕時計で覆われている彼の手首には、Ali Expressで買ったタトゥーマシンの悪戯彫り

    • サークルからディスクレビューを出しました↓ https://note.com/waseda_music_inn/n/nb39b3409532c

      • 小さい頃 どうしても欲しかったLEGOの走る電車をサンタさんにお願いすることができなくて それから自分の中で LEGOの走る電車が豊かさの象徴になった いつか金持ちになったら 家じゅうにLEGOの線路を敷き詰めてやろうと思う

        • 日記(無題)

          家に帰ったらリビングで妹が泣いていた。訊くと、定期試験の結果が返ってきたようだった。妹は俺とは歳が離れていて、今年で中学2年生だ。昔から勉強が苦手で、地元の公立の学校でも成績は下から数えたほうが圧倒的に早いらしい。 とはいえ、遊び呆けている様子もない。家で見かける妹は勉強していることの方が多いし、夜の10時近くまで塾に通っている日もある。少しでも成績を上げようと、俺に勉強を教わりにくる。父親も母親も中学校レベルになると学校の課題の内容が理解できないので、俺が教えるしかない。

        汝自身を知れ

        • サークルからディスクレビューを出しました↓ https://note.com/waseda_music_inn/n/nb39b3409532c

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        • 日記(無題)

          出前一丁のニセモノを食う(中国渡航日記)

          しばらくの間中国に滞在していた。 渡航直前になって突然放射線がなんやらみたいな日中関係の不穏なニュースが日がな流れるようになってしまって、多くの人に心配されながらの旅行になったが、特に何事もなく無事に帰ってきた。 自分にとっては初の中国渡航だったため、多くの新鮮な出来事があった。土産に買った檳榔を噛みながらそれらを書き連ねていく。 ・渡航 2023年現在、14日以内の渡航でもビザが必要なので、有明にあるビザセンターがパンクしている。ビザ取得の予約が一ヶ月先くらいまで埋

          出前一丁のニセモノを食う(中国渡航日記)

          中国タバコ

          あれは大学一年生の頃だったか。冬の日だった。まだ世の中でウイルスが流行ったりする前の話だ。大学の友達と池袋のスケートショップに遊びに行った帰りに、大通りにある喫煙所に寄っていた。東口の、都電の駅に向かう道にあるやつだ。 塀で囲まれた喫煙所の中にこれ見よがしに大きな樹が植えられていて、俺らはその樹のことを"生贄"と呼んでいた。近くの脇道を入ったところにある電灯には友達が投げたスニーカーがずっとぶら下がっていた。いつもの如く、その"生贄"に煙を吹きかけていると、1人の老人が話し

          中国タバコ

          倉庫番日記

          一時的に仕事が無くなってしまったので、しばらくAmazonの倉庫で日雇い労働をしていた。 生まれてこの方肉体労働というものをしたことが無いゆえに新鮮な体験が多かったので、ここに記録として残しておく。 1日目 倉庫までは近くの駅から送迎バスが出ている。バスに乗り込むと、周りの席には外国人しかおらず、各々がそれぞれの母国語で談笑している。倉庫に到着してもすれ違う人はみんな東南アジア系か中東系の人たち。しかし受付のブースに行くと、1つだけ日本人のグループがあった。列に並ぶと金髪

          倉庫番日記

          ノイズキャンセリング

          朝まで飲んだ日の帰り道に、AirPodsを落として失くした。地下鉄やその沿線やらを尋ねて回ったが、終ぞ見つからなかった。結構値の張るものだった記憶があるので、かなり落ち込んだ。 そんなうちに遠くに用事があって、久しぶりに東武線に乗った。 俺は小さい頃から聴覚過敏の気質があるので、電車に乗る時は基本的にイヤホンを着けている。安全装置のようなものだ。 イヤホンを着けないで生活していると、電車のアナウンスや空調の音、周りの小さな会話などの小さな情報が次々と押し寄せてきて少しソ

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          夏が来て僕は

          家の近所を散歩している。しばらく引き篭もっていた所為で伸びた髭を撫でながら歩く。 ゲーミングPCみたいに光っている街道沿いのラブホテルの前を抜けると、少し高い土地に歩道橋が架かっている。 階段を登っていると汗が噴き出してくる。手摺りのクリーム色の塗装は少し剥げていた。 階段を登りきると景色がまっすぐと広がる。地上よりも少し静かで、空気が澄んでいる。 橋の真ん中から車道を覗くと、長距離運転をしている大型のトラックが河川の如く流れていく。 うんざりするような暑さの中で、

          夏が来て僕は

          頭の中で踊る男

          駅の掲示板に、ジャズダンス教室のチラシが貼られていた。 俺はジャズダンスというものを言葉としてしか知らない。 何年か前に、友達が連れてきた女が「私、ジャズダンスやってるんだ」と言っていたのを聞いた。あれも確か夏の日の夜だった。 その女の話を聞いて、そのときの俺の頭の中にはこんなイメージが浮かんでいた。 ───森田童子の「ぼくたちの失敗」に出てくるようなアンニュイな大学生の男女が、地下のジャズ喫茶のステージの上で、チャーリー・パーカーのトランペットの音色に合わせて踊って

          頭の中で踊る男

          パンタ・レイ

          1月の終わりくらいか、今年のまだ寒かった頃に、友達に誘われてシャンソンショーを観に行った。「新春シャンソンショー」と早口言葉で馴染みのフレーズがそのまま銘打たれたイベントだ。その冬で一番風の強い日だった。 誘ってくれた友達が主催者の友達で、随分安く入れたのを覚えているが、本来はVIP席ではマダムが弁当を食べながら鑑賞しているような上品なイベントだ。出演者が入れ替わる幕間を別舞台の古風な背広の男が軽快なトークで繋げていて、タイムスリップしたような感じだった。 バーカウンター

          パンタ・レイ

          大塚のホームラン王

          大塚の街にいつもキラキラと輝きを添えていたバッティングセンターの灯りが、6月末でついに息絶えてしまった。 昭和のゴールデン番組のような風合いのレタリングで書かれた「ひょうたん島」の文字。噂によれば、現存する日本最古のバッティングセンターらしい。1965年からこの地で営業していたようだ。道ゆく人もちらほら写真を撮っている。 階段を登ると、ボールがバットにぶつかる音と共に人の賑わう声がガヤガヤと聞こえてくる。みんな最後を偲んで来たのだろうか。 左打ちのレーンに入り、ボテボテ

          大塚のホームラン王

          ご自由にお取りください

          中国語で、散歩したりぶらついたりすることを「逛」と書くらしい。狂い進む。すごい字だ。確かに、さしたる目的もなく好き好んで1日10kmも15kmも散歩しているのは狂っているとしか言いようがないかもしれない。 何でそんなことするのと聞かれても、楽しいからとしか言いようがない。街で面白いものを見つけたときの、良い景色を見たときのアドレナリンが洪水のように湧き出してくるあの感覚をまた味わいたくて、ひたすら歩を進めている。本質的にはギャンブル依存症とあまり変わらない気がしている。

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          新疆炒米粉(爆辣)

          しばらく前に、高円寺のバーでウイグル人の作る麺料理を食べた。 新疆炒米粉という名前の料理で、真っ赤でドロドロしたスープの中にセロリと太いビーフンが入っている。隣の缶ビールは乌苏(ウス)ビールという新疆でポピュラーな銘柄らしい。青島ビールをさらに飲みやすくした感じだった。 日本人には辛すぎるからと言われて辛さ控えめを頼んだが、香辛料の香りが強烈。麺がもちもちとしていて美味いが、体から汗が吹き出してきて、ずっと火傷をしながら食べているような気持ちになっていた。 先日アメ横の

          新疆炒米粉(爆辣)

          わさび冷麺

          旅先でたまたま食べて美味かったものは、前もって調べていって食べたものよりも記憶に残るような気がする。 しばらく前に一人で東北に行ったときに、用があって新花巻という駅に立ち寄った。新幹線が止まるためだけの駅なので、駅を降りても都市らしきものは一切ない。 用事を済ませ、誰もいない道をトボトボ歩いていたら、古びた雰囲気の定食屋を見つけた。 店に入りメニューを見ると、「わさび冷麺」の文字。前日に盛岡の有名な店で冷麺を食べていたが、そんなものはなかった。店内の看板曰く花巻市の新名

          わさび冷麺

          日記(ガバキック川柳)

          昼下がりの京浜東北線の車内で、ガバキックがどの季節の季語かを考えていた。明るくてうるさいイメージがあるので夏の季語か。いやでも、ガバのダンスは寒い日にこそやりたいかもしれない。夏だといささか暑苦しすぎるか。 そもそもガバ(Gabber)というのはオランダ語で友達や仲間といった意味だったはずだ。だとすれば、人肌恋しくなる冬こそガバキックにふさわしい季節だ。 冬の季語であるところのガバキックが入った俳句を考えてみる。 「古池や 蛙飛び込む ガバキックの音」(字余り) 「柿

          日記(ガバキック川柳)