巡礼32日目 to セー (25.7km)怖れと救い
👣lago - abeleiroas - corzón - ponte olveira - olveiroa - o logoso - hospital - cee
救われる気持ち
きのうは暑い中を長距離歩いて、クタクタだった。アルベルゲに到着したのがずいぶん遅くなってしまったので全部が後ろ倒し、この日はギリギリまで起きられず・・・なんとかキッチンでドーナツを食べてから出発する。
「怖い」という感情は、支配されてしまうとすごいパワーを発揮してくる。きのうの会話で揺れてしまった心が、道中ずっとざわざわしていた(※巡礼31日目参照)。「誰にも会いたくないな・・・」「なんだかわからないけど、イヤだ!」と頭の中がぐるぐる、船酔いしているみたい。
そんなだから、道中憶えているのは「怖い」と感じていたそのムードくらいで、あとはほとんど記憶がない。フィニステーレとムシアの分岐で、「ああ、もうすぐ海だ・・・」と思ったのと、海がちらっと見えたときの感じ、そのあとの急な下り坂を急ぎ足で下ったことは憶えているのだけれど。
「誰にも会いたくないな。」「やっと海だ・・・」「きれい・・・」「いやだ、怖い!」バラバラの気持ちが身体中を慌ただしく行ったり来たりするのを感じながら、セーの街をアルベルゲまで急いだ。きょうはずっとアルベルゲで過ごそう・・・シャワーを浴びて早々によるご飯を作る。
パスタを食べていると、「ボナペティ!」私と入れ替わりでパスタを作っていた男の人に、「どうやって鍋でお米を炊くのか教えてもらえる?」と訊ねられた。思わず「え?パスタ食べるんじゃないの?」ときくと、すごくお腹がすいていてパスタだけではたりないのだそう。
鍋で米を炊く方法を説明できるほどの英語力がないので、Google翻訳を使って説明。うまく伝えられないから四苦八苦、こうした何気ないやり取りに少し気がまぎれる。ありがたい・・・。
ご飯を炊くなら、と持ってきていた柚子胡椒ふりかけをおすそわけ。イタリア人のダニエルは、一粒ずつ口に入れて「これ(のり)は海の味がする。」とか、「これ(たぶん山椒?)は何?変な味!」とか、くるくると表情を変えながら確認している。私は「好きじゃなかったら捨ててね。」と言って、ベッドに戻った。
相変わらずスッキリしない気分でモヤモヤごろごろしているところへ、食事を終えたダニエルがやってきた。「ふりかけ、ご飯にかけたらおいしかったよ!」とのこと。よかった。
「お茶をいれるけど、飲む?」とお誘いしてもらって、ありがたくお願いする。ダニエルが大量買いしてしまって道中重かったというビスケットをおやつにして、キッチンで一緒におしゃべり。いちばん印象に残っている巡礼者のことを教えてもらった。
サンチャゴで会った中国人の男性は、(サンチャゴで)購入した馬に乗って中国に帰るのだそう。「ロシア側は通れないだろうから、下のほうを周りこんで、途中船に乗ったりしながら帰るんじゃないかな。」
私は「ユーラシア大陸完全横断じゃん!」と、スケールの大きさに度肝を抜かれる。「ほんの15分くらいの立ち話だったけど、彼の話を聞いて僕は何も怖くないって思うようになったんだよ。」明るい表情で溌剌と話すダニエルとの会話に、救われる気持ち。私は、ようやく肩の力が抜けてすこし気分が和らぐのを感じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?