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コロナ感染は脳の構造変化も引き起こす

今日は表題の記事を見掛けたので周辺の情報と併せて紹介しよう。記事は以下のものだ。

いつも言っていることだが、新型コロナウイルス最大の脅威は神経系感染や中枢神経系症状である。また、自覚症状が無くても脳に潜伏感染していたり、脳組織への影響が見られたりするケースが多くあるというのは過去にも説明してきた通りだ。今回の記事で紹介されている論文ではオミクロン株についても同様の知見を報告しているというところだろう。

 被験者は、MRI(磁気共鳴画像)と呼ばれる装置による脳の画像検査を受け、オミクロン変異株に感染する前と後で、脳の構造が比較されました。その結果、オミクロン変異株に感染する前と比べて、感染した後では、左側の「楔前部」(大脳の内側面にあるしわの盛り上がった場所)と呼ばれる部位が2.6~2.7ミリ、右側の後頭部が2.7~2.8ミリ、いずれも統計学的にも有意に減少していました。また、発熱があった人では、発熱がなかった人に比べて、右側頭頂部の脳のしわの溝の深さが3.9~4.8ミリ、統計学的にも有意に減少していました。

記事にある通り、オミクロン株に感染することでMRIで比較可能なレベルの脳構造変化が認められる。重要なポイントは感染時の発熱が無い場合でも脳の構造には影響があるという点だ。オミクロン株は呼吸器症状が出にくくなっているが、神経系症状については変わらないかむしろ割合が高くなっている。神経系に対する影響はどんどん脅威が増しているとも言えるのだ。

そもそも新型コロナウイルスについては脳に与える影響を評価した論文がどんどん出てきている。それらの研究をまとめたレビュー論文も出ており、総合的に脳に対する影響が危険視されている(J Neurol. 2023 Nov;270(11):5131-5154.)。このまとめによると、COVID-19患者のかなりの割合がMRIで検出可能な神経学的異常を有していると言える。様々な所見の中で、最も一般的なMRIの変化は、急性/亜急性梗塞、嗅球異常、白質異常、脳微小出血である。嗅球異常などは嗅覚異常との関連も分かりやすく、嗅覚異常がただの風邪症状ではなく神経系の異常に伴うものだということもよく分かるだろう。

勘違いしている人が多いが、神経系感染は新型コロナウイルスに特徴的なリスクである。他の多くのウイルスとは異なり、新型コロナウイルスはNRP1という神経系に多く発現する受容体を感染補助受容体として使用する能力を獲得している。これはパンデミック初期から分かっていた事実であり、私は当初から神経系感染を新型コロナウイルス最大の問題点として危惧してきた。また、神経系感染はワクチンを始めとする獲得免疫で防ぐことはできない。中枢神経系は免疫特権器官であり、獲得免疫応答が無効だからだ。いずれにしても、現時点で新型コロナウイルスを安全と判断していい理由は微塵も無く、むしろ長期的な神経系へのリスクは高まっている一方である。感染対策の徹底を怠った者は高確率で損害を被るだろう。

(参考)


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