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中村勇吾が考える「顔」とは


「顔」は第一線で活躍するクリエイターにとってどういうものなのか?
統合デザイン学科の教授である中村勇吾さんにインタビューした。


ー先生にとっての顔の魅力・面白さはどこにありますか?

なんで僕らはこんなに数ある体の部位の中で、こんなに顔を気にしてるんだろう。やっぱり、内面か外見かで人を判断するかはさておき外見で見たときにやっぱり顔って一番すごい重要な要素じゃない。肩見て「この子の肩が大好きだ!」とか、肩に見惚れるとかあんまりないじゃん。

ーそうですね。

なんで人間って顔に対してものすごく気にしていて、ちょっとした配置の差だけでこんなに見分けれるんだろう。よくよく見たらみんなだいたい一緒じゃないですか。顔って、目が二つあって、鼻があって、口があって、そのちょっとした微差とかちょっとした配置が変わっただけで全然違う人に見えたりさ。なんかそういうところが面白いなっていう。もちろん表現の中でも、やっぱみんな顔をすごく描くじゃない。

その顔への特別感っていうのがすごく常々面白いなと思っていて、何かそれをテーマに考えるといいだろうって。ただそれをもう当たり前のものとして、みんな顔を描いてるわけなんだけど、いろんなイラストとか絵画とかで。ただそこを一回「顔を好きな人間」みたいなことを客観的に捉えてから、顔っていうものを捉えて描き直すとどんなふうになるのかとか、そういう広がりが出るといいなっていう感じですね。

ー人間は好きだから顔を気にしてるということなんですかね?

好きだからしてるのかな。何だろうね。気になっちゃうよね。やっぱりでも見分けるための…何だろう、卵が先か鶏が先かわかんないけど、人を区別するための一番のシンボルというか、ロゴマークみたいな記号になってるってのはやっぱり、ありますよね。

例えばだけど、こういう絵があって、これ何人結構思ったより少ない人ので構成されたけど、何人出てきてると思う?

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ー…10人ぐらいですか?

答えは2人なんです。しかもこの論文の実験をした2人なんだよね。これだったらさ、本当は2人なんだけど10人とかに見えるじゃないですか。もう1個あって…

これって何人に見える?

sinzo_アートボード 1

ーこれは1人ですね。

これ1人だよね。この違いは何なんだっていうと、単純に俺らががこの安倍晋三さんを見たことがあってよく知っていて、この顔と言えばもう安倍晋三だっていうのを記号としてもうインプットされてるから、どんだけ色んなアングルとか光が変わっても安倍晋三ってわかる。

1枚目の画像は全然知らない人だから、微細な変化で同じ人だっていうことは思えないじゃないですか。そういう、顔で見てるなあっていう状況自体が面白いってことですね。

ー先生は顔というものをどのように捉えていますか?

顔っていう定義とか概念とか、顔そのものの役割とか…さっきの話だとそれこそ人を記号付けてるみたいな話になると思う。例えばある課題のために顔について色々調べていくといろんな顔の見方があるなーっていうのがあって。さっきの話は人間の認知みたいな話だけど、例えば生物学者とか、動物ってどういう風に進化してきたかっていう研究をしている人が言うには、顔っていうのは最初に口から始まったんだって。

ーなるほど。

効率よく周りの栄養素とか餌を取り込らむためにまず口っていうのがあって、口が餌を食うためにやっぱり口に対して目が近くにあった方がいいじゃん。口の付録…口のセンサーとして目があって、鼻はなんなのかな…一緒に呼吸と飯食ったらつまるのかな、わかんないけど(笑)そういうので別れたのかな。要するに口の付属物みたいな、そういうふうに見るとさ結構面白い。最近マスクで口が見えないんだけど、なんか口がベースにあってそのおまけがいっぱいに並べられてるみたいな。寄生獣って漫画知ってる?なんかああいう世界。

ー顔を利用した作品で一番注力するのが重要だというパーツはありますか?

それは本当にそれぞれだと思うんだけど、本当ものによって全然違うし、ただなんか、そうですね。動きっていう観点で言うと、やっぱ顔って面白いわけ。こんだけ目と口って近くに居ながら動きのルールが全然違うのが面白くて。口ってやっぱりスピーカーっていうか、食べ物食べるときは割と有機的な動きだけど、目って実はすごいデジタルというか、結構差がカッカカッとか、パチパチパチとか何かこうすごい。

割と瞬間的にキュッキュッキュッっていうのとなんかモニャアっていう口の動きがあって、コントラストみたいなのがすごい面白いなっていう。アンドロイドとかの表現とかでも、やっぱりリアルで生々しくて怖いロボットってなんかこう、カッカカッカッ…

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そういうセンシングの怖さみたいなものであったりが…なんでしょうね。口ってやっぱりさ、なんかどんな怖いやつでもモグウって食べたりとか…全然答えになってない(笑)

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ー先生は顔のパーツ同士の比較の中で面白さを見出されてるんだなというのをとても感じているのですが、パーツ単体で見て「面白いなここ」というのはありますか?

年齢によってやっぱりね、変わってきてるんですよね。もちろん昔は目なんだけど、唇と口とかよく見ると面白いなって。

ー口ではなく唇ですか?

唇かな。口のサイズとかとセットだけど、もう最近ちょっとまたコロナで急に見れなくなった。秘部になったからちょっとあれなんだけどね。唇いいなって思いますね。

ー人間の唇ですか?

人間の唇。女性の唇で、なんかボタッとしたのが好き。昔で言うと、ミュージシャンのさUA。

ーあ、ちょっと私が知らない、ちょっといいですか調べて。

UAとかも知らない時代なんだよね…

ーこの方ですかね。

そうそうそう。今見ると普通なんだけど、そうですね。こういうボテッとした人で歌手っていうか、シンガーとして出てきた人って結構珍しい。

ーそうなんですね。

歌手といえば、もうちょっと薄い唇…もっとやっぱり美形というか…美形じゃないって言ってるんじゃないんだけど。爬虫類ぽい感じの人がすごい出てきてインパクトありました。あとはね、なんかだんだん好みの顔になってきてる(笑)顔で言うと、目の離れ具合、結構印象変わりますね。

なんか、結構そのバランスを欠いてるっぽいのによく見えちゃうみたいな。あるじゃないですか。目が離れてる人が好きなんですよ。好きというか、見ちゃう。

ー近い人よりもですか?

うん。なんでかわかんないですけど、最近で言うと、あいみょんとかそうだよね。なんか最初ちょっと、バランス危ういなってなる。綺麗とするかしないかの当落線上にあるんです。

でもだんだんそれがさ、安定してみるとなんか、これがちょっとこれからのいいバランスみたいな感じにも見えてくる。昔で言うとaiko。うん。難しいね。あと、多部未華子。なんかその当落線上にある顔が好きだね。

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これを美とするか醜とするかの何かこう境界線上にいるのを、見方がどんどん変わっていく感じが面白い。だから完璧なビジョンのもう美女枠みたいな人は、それはまあ美女ですよ。でもそこで終わっちゃうので、それよりはやっぱり何か境界線上の方がその人の人生にも興味を持つじゃない。どう言われてきたのとかさ。とか、自分のことどう認識してたのとかさ。うん。という話じゃなかったね(笑)

ー全然大丈夫です(笑)

完全に好みの顔って感じになっちゃった。

ー美人は三日で飽きるみたいな言葉がありますけどそんな感じですかね。

あっそうそうそれもそうだね。だんだんこういうこと言うと、だんだんちょっと今世の中的にアウトになっちゃう。

ーじゃあオフレコならオフレコで…

多部未華子が良いっていうのはぜひ書いておいてください。

ーわかりました(笑)

多部未華子のスケッチとともに書いておいてね。


ーシミュラクラ現象というものがありますが、先生にとって顔というのはどこからが顔という意識はありますか?

顔の捉え方によって変わるんだけど…顔に見えるってことだったら、そのシミュラクラ現象みたいなことだったら、3点あって上の2点が何かしらセットになってて、もう1個別のものがあればだいたい顔に見えるってことだし、どこまで顔かっていうと…やっぱ比喩としての顔ってあるじゃん。

あの人は、この学科の顔であるみたいな。「深澤直人は統合デザイン学科の顔である」っていうのはそれはさっき言った一番大事な「それを代表する記号」みたいなことなんですが。その人を個別するための記号。

なので、例えばルイ・ヴィトンにとってのヴィトンバッグみたいな。カルティエにとってのカルティエの時計みたいなのは顔みたいなことですよね。iPhoneがAppleにとっての顔みたいなことだろうし、そういうことでいいのかな答えとしては。

…まあでも、多部未華子かな。

ー(笑)

多部未華子のことが伝わってれば問題ないですよ。満足です。

ー「Photoshopで人の顔を入れ替えるのが楽しんでいた」というのを見かけたことがあって、それは何で面白いと思ってやっているのでしょうか?

僕らが学生の時にPhotoshopっていうのが初めてできて、Photoshopっていうのは少なくとも日本ではMacと一緒に大ブームになったんだけど、初めてそのアナログじゃないデジタルの画像編集ができるっていうのがPhotoshopで、こんなことができるよっていう。

例えばPhotoshopのコピーツールみたいのを使ってクラスの集合写真みたいなものを1人の顔に全部塗り替えるみたいな。例えば全員西っていうやつの顔にして西に送りつけたり、そういう遊びをしてたりとかしてたんですよね。

最近も例えば、AIとかさ「ディープラーニングっていうのがあります」っていうと、AIはいろんな可能性がもちろんあるんだけど、みんなの中で結構流行っているものというとさ割と常に顔じゃない。で、アプリで何かそういう顔の位置を自動認識してなんかこう、見立てたりとかさ。顔を赤らめたり化粧してくれたりとかそういうのいっぱい流行ってるけど、やっぱり何個かある中でも一番その中で結構みんなやりたがるのは顔を入れ替えるっていうかさ、「あの人の顔と自分の顔を入れ替えたらどうなるだろうか」「自分の顔が女子になったらこうなるだろう」とか「性別が入れ替わったらどうなるだろうか」とか。

やっぱり新しいテクノロジーのポテンシャルを何とか見せる一番の存在として、みんなが気になるその顔っていうのはやっぱり候補にすぐ上がってくるよねっていう、そういう話です。

ーなるほど。

じゃあこんな新しい料理法ができたときにどの素材で試したいかって言ったらやっぱり最初に出てくるんだ、顔っていうのはやっぱり。人間がやっぱり顔が好きっていうこと、顔がすごく気になってることの、なんか現れ一つなのかなっていう。

ー確かに。

…そんな感じで(笑)

ー今日は貴重なお時間頂きありがとうございました。とても面白かったです。


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インタビュー:上野夢花、上原瑠夏、秋山智郷
写真:有本怜生

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