宇宙ゴミに関してロケット開発側から思うこと

宇宙ゴミ(宇宙デブリ、スペースデブリとも言う)についてよく聞かれるのでnoteでも2022年の1月につぶやいていた内容を転載しておく。

宇宙ゴミ(スペースデブリ)は、正確な事実を元に役割の別を明確に認識された上で意見貰いたい。実は役割としては助ける側なのに、全く理解なく雰囲気で批判されるので困っている。本当に困っている。 口頭で説明すると簡単にでも10分ぐらい早口で話すのだが、ここでは端的に書く。

国別・原因別のデブリの数

まず、国別・原因別のデブリの数。(2017年なのでちょっと古い) 日本の割合は低く、出来ることの限界を感じる。 かの3カ国みたいにならないようにしようねー、これ以上増えないようにしようねー、って国際合意を進めていくのが良いこともわかる。

官・民・軍それぞれの役割とガイドライン

役割の別。 宇宙使うのは軍・宇宙機関・民間とあって、最近デブリで問題になるのは軍。 逆に宇宙機関・民間は主要国では厳しい規制がすでに整備済み。 たとえばIADCという国際連携フォーラムでガイドラインを作られ、準ずる形で各国法整備がされた。当然日本も済み。

IADCのガイドライン

ISOの国際標準と国際間のソフトローと言われるものが整備された。国同士を縛る拘束力は無いが、民間企業からすると法律を守れば自然とデブリ問題が大問題にならない仕組みが運用されている。 軍は別なのがやっぱり問題。

日本の国内法である宇宙活動法がIADCのガイドライン準拠するように改変されるとき、意見求められたから回答したのが数年前。 政府機関はもっと前(10年以上前?よく知らない)からほぼほぼ準拠しようとしていた。

デブリ問題で出てくる一番頭が痛い図

メディアでも頻出だけどめちゃくちゃ。これほどオーダーが合ってないものを見たことが無いレベルでめちゃくちゃ。こういうの見ると脳みそが沸騰する。

出典:ESA

デブリの大きさって特別大きいものでもバスぐらいの大きさ。ざっくり20m2オーダー。一方めちゃくちゃな図では関東平野ぐらいのサイズで書かれている。10^10m2オーダー。
!!!10億倍で書かれている!!!

スタートアップとかこういう世界にいると、倍半分ぐらいで数字を盛っている人はよく見る。10倍に盛ってることもある。少し遠くから暖かく見守る。100倍だと流石にどうかと思うこともあるが黙っている。 わかりやすさ大事だからね。しょうがないね、と。 10億倍は流石に・・・

10億倍過剰に問題を表現されるとどうなるか?

環境問題を10億倍過剰に演出することある? 『地球温暖化で100年後には平均気温が10億℃上がります、海水面が40万km上昇します(月より遠距離)』って資料なら誰でも違和感感じるはず。

環境問題を10億倍過剰に演出することある? 『海洋汚染で、プラスチックが海の体積と同じだけ毎年流れ込んでいます』って資料なら誰でも違和感感じるはず。

環境問題を10億倍過剰に演出することある? 『森林破壊で、毎年地球の全表面積の1万倍の面積の森林が無くなっています。』って資料なら誰でも違和感感じるはず。

ファクトベースが大事

宇宙の話はイメージ沸かないので10億倍過剰でも気付きにくい。変な図も啓蒙のためなら10億歩ゆずって良いが、意思決定につかっちゃダメ。でも政府文書とかで平気な顔して出てくる。それだけ辞めてほしい。ファクトベース大事。

SDGsイシューはファクトベースのエビデンスでステークホルダーのコンセンサスをASAPでネゴって全員でコミットしながらイノベーションのソリューション見つけないとWin-Winにならないよね。ジャストアイディアだけど。(ファクトベースってカタカタ使って恥ずかしくなった

解決策

ソリューションは3つ。
・ロケット側へ規制
・衛星終了時の適切な処理(いわゆるPMD90%)
・能動的デブリ除去(ADR)
ロケット規制は済み。PMDはメガコンステで課題あり。ADRは技術的課題あり。PMDもADRも日本は一生懸命やる人が沢山いる。いい流れ。 そして小型ロケットはADRに役に立つ手段になる。

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