モリのいる場所

混ざることなく、孤立することなく。映画『モリのいる場所』

映画『モリのいる場所』を観てきました。
熊谷守一をテーマに、
山崎努と樹木希林が夫婦を描くとなれば意気が揚がるというもの。

観終わった感想は「…?…??」でした。
「…?」のまま眠りについて、
起きて翌日、
気づけばあの夫婦にまた会いたくなっているのですね。

「…?」はまだぼくの中に残っているのだけど、真ん中にふわりと居座っているのが小さな庭を宇宙のように探索する山崎努であり、背中を丸めながらしかし家事の手は機敏な樹木希林であり、老夫婦が醸し出しているお茶の間の風景なわけです。

そしてそこに好き勝手に出入りしていた素性のよく分からない人たち。
そんな人たちがわいわい生きているあのお茶の間と熊谷守一。

混ざることなく、孤立することなく、そこにいること。
その世界を作っている山崎努と樹木希林。

「生きるのが好きだよ」と正面からいう熊谷守一。

「…?」のまま映画を観終わり、朝起きて、「…?」を抱えたまま、
今思っていることは「また会いたいなあ」という気分で。
正確にいうと、
「またあの場所に行きたいなあ」と思っている自分がいるのですね。

頭の「…?」は未だ消えていないのだけど、
心が「また行きたいなあ」と思っているという。

これは沖田修一監督のしてやったりなのだろうか。
そうなんだろうな。
そうじゃなきゃあんな風に撮らないもんな。

ぼくにとって『モリの住む場所』はそんな映画でした。
またあの場所に行きたいです。

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