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藍(タデアイ)と芽胞菌

とんでもない目にあいましたが、大事な発見でした。


沈殿藍粉末が起こした騒動

 以前、海外のナチュラルコスメを企画製造販売している会社からご依頼いただき、化粧品原料として沈殿藍の粉末をご提供したことがありました。それは、藍を配合した化粧石鹸を製造販売し始めて約10年が経とうという頃だったと思います。
 化粧石鹸にしか配合したことのない素材なので、クリームやローションに配合した場合にどのようなことが起こるのか、未知の領域でした。電話やメールで何度かのやり取りをした後、実際にサンプルを作ってみようということになりました。サンプルを作るのは、私たちではなく先方が指定する製造所でしたので、精製した沈殿藍粉末にいつも通りの滅菌処理をして指定場所に送付しました。

 そして、サンプルのクリームそのものは問題なく作られました。テクスチャも良く、白やピンク系の多い美容クリームというジャンルに青色のクリームは斬新ではないかとの見解でした。ですが…商品化するにあたっての打ち合わせが調子よく繰り返されている最中に、それは起こりました。
「サンプルのクリームに大量の雑菌が繁殖しているとのことです。お送りいただいた藍粉末の滅菌処理後のデータをお送りください。それから普段はどのように管理されていますか?」
 製造所の窓口係からの急転直下の電話でした。

 大変驚きましたが、滅菌処理後の一般成菌数は出荷前に検査済みだったのですぐに検査結果のデータを送付しました。保管場所は、化粧品製造のための原料保管庫があるのでそこで保管しているとお伝えし、何が起こっているのか把握するための作業があちらでもこちらでも進められました。
 出荷前の一般成菌検査のデータでは、化粧品に配合可能と判断できる状態に殺菌できていました。それなのになぜ…
 数日後に再び窓口係からの電話があり、その糸口が見えてまいりました。
「社長、芽胞菌かもしれません。検査項目に芽胞菌を加えて同じロットでもう一度検査に出していただいてもよろしいですか?」

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