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INDIGO SESSION vol.2 藍と絹 完成

 今回はちょっと専門的な内容となっています。
 2023年12月に開催されたインスタライブ、INDIGO SESSION vol.2 「藍と絹」を編集した電子書籍を発売しました。


なぜ絹の藍染は難しい?

 木綿や麻といった植物性の繊維(セルロース系)を染めるのと、絹や獣毛といった動物性の繊維(タンパク質系)を染めるのとでは、留意するべき点が違うため、染色の際の手順や工夫を変える必要があります。
 藍染の甕はアルカリ性に調整されているため、染色作業が長時間に及ぶとタンパク質を破壊し繊維がバラバラになってしまいます。バラバラとは言わなくても、藍染をした絹がボロボロになった経験のある方は多いと思います…「なんでこんなことになるの」という目もあてられない事態。

 そんな絹がどんな構造を持った繊維なのかということから、どんな点に注意するべきかということまで、染織工房こおり舎の原田さんにお伺いしたのが、このINDIGO SESSION vol.2。原田さんは兵庫県で自ら養蚕を行い、繭から絹糸を引き、それを染めて織り上げ、作品作りに取り組まれています。絹と暮らし続ける中で体感されたことを、わかりやすく丁寧にお話ししていただきました。

 繊維の構造の特徴をお話しいただいたことで、染色前の精練の仕方を変える必要があることが理解できます。ここを知らないままでいると染色前の準備が不十分となり、望む仕上がりに手が届かないことになってしまう。
 まずは、絹という繊維の構造を自然科学の仕組みとして把握しておくと、染色の際の考え方の幅が広がって面白いです。さらに実際に手を動かして、失敗を売り返すことも大切です。原田さんも、たくさん失敗されたし、今でも「これだ!!」という確信を明確に持っているわけではない、とおっしゃっていました。

挑戦する人のために

 そういうわけで、今回の記録は「絹をこうしたら上手く染められます」という手引きというよりは、「絹をどう染めたらいいのかを考えるためのヒント集」に近い内容になっています。
 原田さんは「なぜそうするのか、ということがわかっていることが大事」と言われていましたが、本当にそうだと思います。方法論を鵜呑みにしているだけでは乗り越えていけないことがたくさんあるからです。
 Blue Lineの齋藤知華さんは、絹を藍染した後に起こった不思議な現象について、現物を持参されてお話ししてくださいました。
 IKTTの西川 潤さんは、カンボジアの絹糸を藍で染め、3年寝かせてから織り上げられたアイテムを披露してくださっています。

 特に、自然の素材だけで藍建てに取り組む人にとって、ここ数年の異常気象も作業に影響を及ぼすというデリケートな状況です。様々な文献や仲間の体験を頼りに、「どう考えるのか」。常に自分の思考の道筋を構築できる状態でいることが、素材や環境の違いを乗り越え、理想の結果に辿り着くために一番重要なことではないかと考えます。

 今回の記録が、藍染に携わる人の「考える道筋」を構築する助けになればいいなと思っています。そして、失敗を恐れずに挑戦していただきたい。失敗も、貴重な体験の一つですから、次の手立てを考えるための糧になります。
 様々な経験を重ねて、輝く藍色の絹をぜひお手元で叶えてください。

図解・参考画像を多数掲載

 トークセッションをご覧いただいた方には、話を聞いているだけではイメージしにくかったことがあったと思います。セッション中に使用したフリップも含め、参考になりそうな画像を掲載し、よりトークの内容を理解しやすく仕上げました。トークセッション翌日から開催した第2回本建て正藍染展の会場の様子も掲載しています。全ページカラーです。

 このトーク中に言わなかった個人的な思いとして、藍染をされている方にはぜひ絹の染色に挑戦してほしいという気持ちがいつもあります。それは、単価の高いアイテム展開が可能になるからです。
 ビジネスとして藍染に取り組むのは容易なことではありませんよね。アイテム展開も、各染め場の工夫が常に凝らされていると思います。どこの染め場にも必要だと思うのが、フラッグシップとなる高単価アイテムだと考えています。そこに絹という素材が加わると、展開できるシーンだけでなく売場が変わってきます。失敗を重ねても挑戦する価値のある素材ではないでしょうか。

 ぜひ、この記録をお手元に置いて、絹の藍染に挑戦していただきたいです。
 Amazonにて、電子版とペーパーバックの両方をご案内していますので、お好きな方を選んでご利用ください。


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