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攻殻機動隊 SAC_2045 s1 ネタバレ全開考察:ep03~1A84の正体【前編】 ジョン・スミス更なる正体が示唆する物語の核心~

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 s1 ep01 冒頭)

【逆転する認識、価値観の変容による再解釈】

ポストヒューマンは悪ではなく
公安9課も正義ではない
そして戦争とは平和である

劇中の描写や、神山健治氏の発言、SACが貫いてきたコンセプト等から新らしい攻殻機動隊を再解釈する

時代に追いつかれた攻殻機動隊という世界から見る現在はどんな姿をしているだろうか。

あなたが悪いと思っているものは本当に悪いものなのだろうか。


以下目次まで読み飛ばし可

前回の記事で、次回はサスティナブルウォーについてとか言ってごめんなさい。考えた結果こちらを先に語らせてもらいたい。ごめんなさい。
(ジョン・スミスの更ならない正体は前回の記事をごらんあれhttps://note.com/individual2045/n/n0470a531c146)

謝ったのでさっそく全開で語っていこう。

全開過ぎてなんと9000字オーバーという長さになってしまった。
削れよって?削ったさ。なるべく単純化するためにごりごり削ったさ。
分割しろよって思っただろう。分割したのだ。これで分割済みなのだ。
しからばタイトルにも前編と冠しようというものだ。
なんなら中編もあるかもしれない。むしろある。

そして少し言い訳をさせてほしい。記事がこの長さになってしまう理由は、攻殻機動隊2045のシナリオや設定が異常なほど考え抜かれた上で構成されており、多解釈的に多くの要素を含んでいるからだ。神山さんまじ神山。
あとは我々のせいだ。まちがいない。

前編では1A84の大きな要素を、中編では1A84とポストヒューマンの関係を
、後編ではこれまでの前提を基にサスティナブルウォーを語りたい。

この前編でようやく攻殻機動隊SAC2045が問いかけてくる大きなテーマに少し触れることが出来たように思う。

こんな長ぇ記事読んでらんねぇって方は目次から飛んで、興味ある所だけでも読んでくれれればと思う。

この記事を読んで「攻殻おもしろい」「誰だよシナリオ薄っぺらいつったヤツ」「想像してしまった」
などと思ってくれたり、楽しんでくれる方が居れば我々は最高に嬉しい。

さて、今回も記事もまた、あくまで予想だ。
やっぱり我々はこの予想を前提に他の事も考えているので、これも外れていたら大爆笑してやって欲しい。


【1A84とはユートピアを実現する存在】

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関係ない話に見えるかも知れないが、今回の攻殻機動隊SAC2045は
脚本;神山健治
監督;荒牧伸志
という作品だ。

神山健治氏は「攻殻機動隊」SACシリーズの監督
荒牧伸志氏は映画「アップルシード」の監督

「士郎正宗氏による原作」をそれぞれ監督しアニメ化した二人である。
そして原作者も同じなので世界観も地続きなのが「攻殻機動隊」「アップルシード」の二作だ。

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想像してほしい



警察の出動が極少なく、軍はあるけれど影響力を行使しない。
貧困も存在せず、銃声の代わりに音楽と笑い声に満ちたユートピア。

こんな国があったら住みたいと思うだろうか?

我々は住みたくないが、住みたい人はとても多いだろう。
このユートピアの名をオリュンポスと言う。
22世紀の未来に世界を統一した勢力だ。巨大な人工島の上に都市国家を築き、地球全土の統一管理保全を目的としている。

一方オリュンポスの外側の世界はどうなっているかと言うと、

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・かつて日本だった企業連合国家ポセイドン(大日本技研)
・アメリカが分裂した姿である米ソ連(SACでは米ロ連)
・もうひとつの
米帝(SAC2045でも日本と同盟関係)
・イスラム圏に新しく立国した宗教国家ムンマ
・廃墟となった無人都市郡地帯

などなど、各勢力の思惑が入り乱れ陰謀が渦を巻いていそうな今と大差ない世界が広がっているが、銃弾の飛び交う地域が多く、無人の廃墟となった都市郡があるなど、この世界の22世紀は2020年現在の人間界より少しだけ荒廃した世界のようだ。

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そんな未来で、オリュンポスは人類が実現した理想郷とされており、人口の半分以上を占めるバイオロイドが人間同士の仲介者として機能している都市だ。
バイオロイドとは人為的に作られた人間であり、ヒトに奉仕することが根幹にある。しかし安心してほしい。バイオロイドがヒトに奴隷の如く扱われているわけではない。むしろ幸せに暮らしていると言っていいだろう。オリュンポスはバイオロイドにも人権がある素晴らしい国なのだから。

荒廃した世界を他所に
貧困も銃声も存在せず
音楽と笑い声に満ちたユートピア
それが理想社会オリュンポスだ

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そして1A84こそ、このオリュンポスの原型となる存在なのだ

そして地続きの二作を繋げる存在が1A84であり
「攻殻機動隊SAC2045」≒「APPLE SEED 0 IF」
と言うのが我々の考えだ。

なにを言っているか分からないかも知れないがこの先の話はもっと分からねぇ気もするけど最後まで話せばきっと分かる気もするのではりきって先に進もう。すでになにを言っているかわからねぇがとにかく進もう。


【ユートピアを実現させる1A84の機能としての姿】

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 まず、関係ない話に見えるかもしれないがauction(オークション)などの語源である 「augēre」と言うラテン語がある。この概念には
「増える、(物・数量・人)を増やす、(物)を拡大する/大きくする、(言葉・理解など)を増やす/深める、(価値・質・魅力など)を高める/より良くする」
 という意味があるらしい。そして面白いのが「augēre」は英語にauc / aug / auth / aux というような形で残っているという所だ。

例をあげると

・価値が高いこと(「ity」で名詞化) 
 authority 権威、権力、威厳
・金額を増加させること(「tion」で名詞化) 
 auction競売、オークション
・高い価値・質・魅力を生み出す人(「or」で人を表わす名詞を作る) 
 author〔名〕著者、作家、作者
・語源そのまま(「ment」で動詞化) 
 augment ~を増加させる

という言葉達が「augēre」を語源に持つ言葉の一部らしい。

 その中でも「author」 なにより「augment」に注目したい。augmentで一番分かり易い意味に「拡張」がある。ARのAと言えば分かり易い。VRがVirtual Reality(仮想現実)ならARはAugmented Reality(拡張現実)である。augmentには「拡張」の他にも「少し変える(変更)」という意味もあるようだ。
 語源は違うようだが「argue」や「assert」という「主張」「感情的な議論」などを意味する語にも注目したい。

1A84のAは「augēre」「argue」などを意味するのではないか

そして1A84という存在がこの
「augēre」「argue」という要素を電脳を介して人間に与える事ができるとしたら?

つまり1A84とは

ネットを介して電脳に干渉し、大衆の「主張(意思)」に基づいて
産業としての戦争を行う事で「富や価値を増やし」
思想や思考を「拡張」「変更」する事で
人間及び
社会を「総意的」に統制(コントロール)するAI

ではないかと言うのが我々の考察だ。
1A84のという存在の言語化はタチコマ先輩が言っていた通りとても難しい。

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 突飛な事を言ってるように感じるかも知れないが、これは劇中で行われるゴーストハックの大規模版と言っていい。たとえばオモシロに擬似記憶を植え付けた少佐、内通者に自分の死を植え付けたトグサがやっている事と変わらない。電脳に干渉し相手を操る。というのは出来る事なのだ。

 なによりこのように考えると様々な要素が繋がり、説明できる事が非常に多いのだ。のだが非常に多いので語りきれない。語り切れないので例をいくつか語ろう。


【ep09のタイトルは1A84の大きな秘密を示唆するもの】

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 1A84というシステムが先に示したすんごい事やってるのが示唆されている要素の一つがep09の内容であり、タイトル「IDENTITY THEFT」だ。

「IDENTITY THEFT」には

「なりすまし」「アイデンティティの盗難」

 という意味がある。素直な意味としてはep09でも語られる偽装難民の事を指すのだろう。だが国籍を偽装する事を「なりすまし」とは言っても「アイデンティティの盗難」とまで言う愛国心あふれる方は少ないのでは無いだろうか。ではもしも「アイデンティティの盗難」に、他の意味があるとしたら?例えばだ、ポストヒューマン矢口ケンヂが撲殺して回っていたのは

1A84によってコントロールされていた人間

 と考えてみてはどうだろう。突拍子も無い発想に聞こえるかもしれないが細かい説明はここでもまた後に譲る。
 (少しだけ細かいことを言うと我々は、1A84は人間を完全にコントロールできるわけでは無く、基から持っている思考や思想を増加、増強する事で恣意的に特定方向へと誘導していると考えている)

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非常に雑ではあるが分かり易い表現をすると、PH矢口ケンヂは大友佐千夫や田所浩一、偽装難民などに「なりすまし、東京復興計画を裏で操っていた1A84」を撲殺していたのではないだろうか。
そしてこの1A84よる「なりすまし」が「アイデンティティの盗難」にあたると考えるとep09の内容に多くの説明ができる。

内容については
東京復興計画もサスティナブルウォーの一環であり、戦争行為である。
という事を含め、他にも詳しく語らなけれいけない点がまだまだあるのだが、ポストヒューマンの正体を語る時に譲り、タイトルにまつわるもう一つの話をしよう。


【「IDENTITY THEFT」のもう一つの意味

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 これはちょっと横道にそれた遊びだが、タイトルにはアナグラムされた別の意味が付与されている可能性がある。他の意味が隠されているのではと全タイトル試してみたが、意味があるような無いような微妙な感じなので、こじつけと思い聞いてほしい。

たとえばS1最終話のタイトル「NOSTALGIA」だがこれを並び替えると「LOST AGAIN」という文字列が浮かんでくる。これはそのままトグサの失踪をイメージさせる。

 では表題の話に戻り、ep09のタイトル「IDENTITY THEFT」をアナグラムし(文字を入れ替えて)てみよう。すると「NETTED IF THY IT」という羅列が浮かんでくる。「NETTED IF THY IT」をそのまま「網にかかったら」と訳するとep9の内容通りではないだろうか。

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更にそれぞれ単語に分解して他の意味がないか考えてみたい。

・NETTED: 網 網状の 純益を得る
・IF: もしも とすれば
・THY: あなた 汝 (聖書などで使われる表現)
・IT: それを それは

等となる。

そして1A84が先に示した様に、ネットを介して思考や思想を統制し、戦争を用いて社会を運営するAIならば、

「もし」「あなた」が1A84の「網にかかっていたら
「もし」「あなた」が1A84の恩恵で「利益を得る」事が出来たら

とも解釈でき、東京復興計画に関わる者が1A84の恩恵により利益を得ていた。というep09の裏のストーリーも見えてくるのではないだろうか。

またthyは聖書でよく使われる表現であり、「神からヒトに呼びかける」ニュアンスが強い表現だ。この神っぽさ。Aさんっぽい。


【ジョン・スミスが本当に隠したいもの】

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 劇中のジョン・スミスをよく観察すると、ポストヒューマン対策のおそらく最も重要な要件に「ポストヒューマンの秘匿」がある事がわかるだろう。とにかくこの端末さん、ポストヒューマンを世間から隠す事に余念がないのだ。

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 スミスは隠したい理由を「世間が大混乱に陥るからだ」と正直に話してくれている。ただこの「大混乱」に対する認識は、スミスとその他の者で大きく違うのではないだろうか。2がスミスの認識であり1がその他の者の認識だ。

1.ポストヒューマンの存在が明かされる
2.ポストヒューマンの正体が明かされる

 察しの良い方であればもうお気づきかもしれないが、この二つの認識では意味が大きく違う。

なぜならばポストヒューマンとは1A84内部から発生した現象である可能性が高いからだ。

ポストヒューマン≒1A84ならば、ポストヒューマンの正体の暴露は、そのまま自らの秘密の暴露に等しいのだ。

この詳細もポストヒューマンの正体を語る時に語りたいので説明不足を許して欲しい。


【描かない事で描く1A84という存在】

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 劇中の描写から分かる大きな要素がある。いや、正確には劇中に無い描写からなのだか。

さて、この記事では当たり前のように出てくるAさん(1A84)だが、

本編でAさんの存在が言及されるのはオープニングのテキストのみであり
それ以外シーズン1の劇中には1A84というワードが含まれる言及が一切ないのだ。


一切ない。本当に全くないのだ。これは何を意味するのだろう。

それは、この世界では1A84の存在そのものが徹底的に秘匿されている事を意味するのではないだろうか。

そのため一般人は当然として、9課メンバーの口からも1A84というワードが一切出てこないどころか、AさんをAさんとして描く一切の描写がないのではないだろうか。
 そうでもなければ物語の始まりという超重要な場面で描かれているにもかかわらず、サスティナブルウォーという戦争の根幹にある1A84という存在がここまで描かれない理由が説明できないだろう。

ただし本当は描いている。1A84とはジョン・スミスでもあるからだ。

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 これは攻殻機動隊SAC2045シーズン1ではあえて1A84を1A84として描かず、ジョン・スミスを通して描いているからこそ実現できる演出だ。この描かない事で描く。についてはもう少し書きたいが長くなるので、とりあえず神山さん本当に凄い。本当に。まじ変態。

 話を戻そう。仮に1A84が本記事で語ってきた、「思考や思想をコントロールし、なおかつ人間になりすませるAI」という、非道徳の極みのような側面を有してるとしたら、それは絶対に世間に知られてはいけない事実である事は間違いないだろう。

スミス(1A84)が真に隠したかったものとは自らの正体

 でありポストヒューマンだけでは無いと考えると、必死で秘匿する理由も分かるのではないだろうか。更にスミスには隠さなければいけない正体がもう一つある。その答えが以下だ


【ジョン・スミスはバイオロイドの第一世代】

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とつぜん何を言い出したのかと思うかもしれないが聞いて欲しい。

 アップルシードと攻殻機動隊の世界は地続きという話をしたかと思う。(正確にはSAC世界と原作の攻殻世界はパラレルなので同じではないが)
 それではようやくこの二つの時間を繋ぐ話を始めよう。最初からしてたけど。

 まずは未来の話だ。アップルードに登場するヒトミという人物がいる。この人物は理想郷であるオリュンポスの住民であり、総合管理局・立法院に勤務している人物だ。天真爛漫な性格で知り合いが多く、オリュンポス市民にファンも多い。そしてこの人物はバイオロイドである。22世紀におけるバイオロイドは人間とほぼ変わらない存在になっていると言っていい。

 さてこのヒトミだが、2074年に生まれた第3世代後期型バイオロイドなのだ。これはこうとも言える。

2074年には、第三世代後期型のバイオロイドが生まれている。

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 攻殻機動隊SAC2045の世界は言うまでもなく2045年だ。たったの29年後には第三世代後期のバイオロイドが生まれているのだ。

 未来から話を過去に戻そう。攻殻機動隊SAC2dGIGの舞台である2032年の時点で実はバイオロイドは既に登場している。そうプロト君だ。トグサ先輩に「先輩は状況に応じて行動できる人ですよ」と優しい言葉をかけてくたり、白い血を流してる所を見られ、トグサ先輩に「お前、アンドロイドだったのか…」と間違われ「いいえボクは…バイオロイドの…プロトタイプです」とちゃんと訂正するあのプロト君だ。つまりこれは

2032年時点で既に、バイオロイドのプロトタイプが生まれいる事がSAC2ndGIGの劇中で既に描かれているのだ。

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 さあ話を2045年現在に進めよう。2032年にプロトタイプが存在しており、2074年には第三世代後期型が現れいる。ならば2045年に第一世代のバイオロイドが存在しても何の不思議はないだろう。

つまり第一世代のバイオロイドこそジョン・スミスであり、
バイオロイドとは、1A84が人間になりすます為の依代(端末)でもあるのだ。


【ジョン・スミスがバイオロイドである事の意味】

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 ところで本記事本編の最初にも話したことだが「ユートピア」を実現させる存在こそ1A84だと言った事を覚えているだろうか。

ではその理想郷を実現した方法とはなんだろう?

それは恐らく

ネットを介して電脳に干渉し、大衆の「主張(意思)」に基づいて
産業としての戦争を外で行う事で「富や価値を増やし」
自らの端末として「バイオロイド」をヒトとヒトの仲介者として置き
思想や思考を「拡張」「変更」する事で
人間及び
社会を「総意的」に統制(コントロール)する

ことで実現したのだ。(↑を簡単にまとめると先述した大規模なゴーストハックと言う表現が正確ではないが解り易いかと思う)

 そうして実現されたユートピア(オリュンポス)でバイオロイドは、人口の半分以上を占めておりバイオロイドが人間同士の仲介者として機能している都市だ。念のために断っておくがスミスがいっぱい居る訳ではない。すげぇユートピアだなおい。完全に(マトリックスの)アレじゃねぇか。

 バイオロイドも当たり前に食べて仕事して寝て泣いたり笑ったりしながら、当たり前の生活を送っている。ヒトとバイオロイドは共存しておりバイオロイドにも人権があるからだ。

つまりバイオロイドとは未来における新人類なのだ
理想郷の平和を維持する新人類の原型
それが第一世代であるジョン・スミスの本当の姿である

そしてジョン・スミスがバイオロイドであり1A84であるならば
「攻殻機動隊SAC2045」は「APPLE SEED」のZERO地点にあり
まさに「始まり」と言える物語だ

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脚本・シリーズ構成:神山健治(攻殻機動隊SAC)
監督(映画 APPLE SEED)
という二つの世界が
原作:士郎正宗
と言う根本を軸に結びつき作り上げた世界こそ
「攻殻機動隊SAC2045」≒「APPLE SEED 0 IF」
という新しい世界では無いだろうか

1A84の「A」には、理想郷の
「始まり」「最初」
という意味も込められているのではないだろうか

IFが付く理由は別に語りたいので次回もお付き合い頂ければ我々は喜ぶ。


【オマケ:江崎プリンは意味のないゴリ押しなのか】

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 江崎プリンはただのゴリ押しで浅い層に媚びただけの意味のないキャラクターであるという評判を耳にする。

 これについては我々は少し意見が違う。どう違うかと言うと、江崎プリンはゴリ押しな上に媚び媚びであざとさ全開だが、ちゃんと意味が用意されているキャラクターだと考えている。

そう考える理由はこうだ

 SACシリーズにおいてこれまでも9課に新入りはいたが、これほど9課のコアメンバーに迫った新人が居ただろうか。(新人にならなかった笑い男先輩は除外)まず有り得なかったからこそプリンに前述したようなゴリ押しという評判が沸くのだろう。
 つまりプリンが作中で9課メンバーのように振る舞っているのはどう考えても不自然なのだ。そもそも入省したてで特に実績もない23歳が、どれほど優秀とはいえ国家機密級の情報を多く扱うであろう9課の関連部署に配属されるというのはただ事ではない。

 プリンおかしい。おかしいぞ。このような違和感の裏には何かがあるのが攻殻機動隊2045シーズン1の特徴であり、神山氏が言う所の「強度」であると我々は考えている。なのでがんばって考えてみた。

こう考えてみれば説明がつくのではないだろうか。

江崎プリンは米ロ連が9課に送り込んだスパイであり
1:バイオロイドである
2:1A84のコントロール下にある


 サスティナブルウォーを語る際に詳しく話すが2045の日本はアメリカに対して非常に立場が弱く、驚くほど好き放題されている描写がある。そして江崎プリンはマサチューセッツに留学経験をもつ人物だ。(この世界ではアメリカは分裂し、一つの国ではなくなっている。マサチューセッツは地理的に米ロ連合に含まれると思われる。この事から米帝と米ロ連の関係性や繋がる要素が少し見えるがまたそれは別に語りたい。)

 米ロ連が、米帝とは別にポストヒューマンを調査するため、内務省に働きかけ、内部からゴリ押しで9課の関連部署にブチ込んだのが江崎プリンという事であれば、ただ事ではない人事に説明がつく。

 そして他の要素から、Aさんは世界規模で運用されていると思われる。プリンがスパイであるならばAさんの影響下にないはずがないのである。またこの場合、無自覚なスパイであることも考えられるはずだ。

 そして我々はプリンがバイオロイドである説を支持する。その理由の一つがこのシーンだ。

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 バトーさんは飛行機内でプリンと初対面し会話しているが、このシーンに至るまでプリンをAIと認識していたようだ。今作品においてバトーさんはミスリード役でもある。この場合のミスリードは「プリンはAIではない」というミスリードではないかと予想している。むしろAIだからこそこのシーンが必要だったのではないあろうか。あとバトーさんてAIとかそういうの直観で見抜きそうじゃん。
 念のために断っておくがプリンがいっぱい居るユートピアが見たいからではない。すげぇユートピアだなおい。住みたいヒトいっぱい居そう。

 さらにこのシーンが特に意味のないものであるならばタチコマ先輩にわざわざ「AI?何だそれ?」「え?そうなの?」と喋らせたりするだろうか。しかも喋っているのは旧タチコマ先輩だ。少佐と行動を共にして魔改造されポストヒューマンと繋がった経験のある新タチコマ先輩はAI発言に疑問持っていない。

なによりプリンがバイオロイドだとすると、プリンの存在に大きな意味が出てくるのでは無いだろうか。

よって我々はプリン=1A84(バイオロイド)説を採用する。


【前編あとがき】

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さて、直接的にではないにせよこれまで語ってきた、Aちゃんでありスミスでありプリンが、原型となり実現したオリュンポスという

警察の出動が極少なく、軍はあるけれど影響力を行使しない
貧困も存在せず、銃声の代わりに音楽と笑い声に満ちた
【ユートピア】

あなたは住みたいだろうか?

ここまで読んでくれた方はほぼ住みたくない。と答える方が多いかと思う。

だが

バイオロイドとは人為的に作られた人間であり
ヒトに奉仕することが根幹にある存在だ
1A84も必ずしも悪ではない。総意としての正義を志す存在だ
ならば1A84もまたヒトが望んだ存在であると言える

そしてバイオロイドとは未来に現れる新人類だ
これまであえて新人類と表現していたが、
バイオロイドはポストヒューマンとも表現できるだろう
ポストヒューマンとは
「次世代の新しい人類」「人類に置き換わる者」
という意味を持つのだから

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想像してほしい


ジョン・スミスはポストヒューマンを人類の敵と呼んだ
あなたはジョン・スミスを、江崎プリンを
バイオロイドというポストヒューマンを

人類の敵と呼ぶだろうか?


中編に続く

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