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卓上のメリークリスマス

見習い中のトシオは作業がひと段落ついたので手についた小麦粉を払って表に出た。
故郷の仲間たちが羨ましがる東京暮らしだが、実際にはこの小さな中華料理店の裏口からほんの休憩時間に都会の風景を見るだけの東京暮らしだった。
それでも十分に楽しい。都会のカレンダーの一周目はとにかく何もかもが新鮮だ。
そして今日はクリスマス。
いつもより一層きらびやかな服を来た歩行者たちのご機嫌な表情と上ずった話しぶりがおおよそ夢でしか見たことのない楽園の風景を作っている。
クリスマスツリーを模したネオンサインのてっぺんの星がトシオにもウインクを投げかける。
「おおいトシ坊!飯食え!腹減ったろう!」
まったく平常通りの大将のダミ声が聞こえた。

肉まんが卓上で盛大に湯気を立てている。
いただきまあす!
トシオは大きな口で一気にかぶりつこうとするや、そうそう、とその手を止め、肉まんのてっぺんにマスタードを形よく飾り付けた。
君にしか見えないメリークリスマス。