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【暴力団組事務所調査ってどうしてます?】

これはある不動産セミナーに参加して講師の方に私が送ったメールです
特定されそうなところは伏せ字にしました

まだこういう経験のない方は参考にしてみてください


○○○○○○株式会社 ○○○○○○事業本部

○○部長 ○○○○ 様



拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

先日は○○○県不動産研修会にて貴重なお話をお伺いし、とても参考になりました。

ありがとうございました。


やはり全国で連日多くの不動産取引に関わっている御社の話は、私達のような小さな不動産会社にとっては生きた情報ばかりで、私にとっては今、最も聞きたいお話しです。

○○様のお話は目からウロコの話ばかりで、今回のセミナーは私にとって有意義なものになりました。


この度メールさせていただきましたのはセミナーのお礼もありますが、セミナーのテーマにも関係することで昔、私が経験した苦い経験があり、その解決方法の件でお尋ねしたいことがあります。

○○様であれば何らかの解決方法をご指南いただけるのではないかと思いメールいたしました。



この後の文章は実体験をそのまま表現したいので口語調にて書かせていただきます。

(※少し長くなります)


まず、最初に私自身の自己紹介からします。


《中略》


今回ご相談したかったのが【暴力団事務所調査】についてのことです。

その時の経緯をお話します。


その取引は平成18年の6月におこなったもので、世間で暴力団排除条例の施行の声が上がり始めた頃でした。

ですがこの頃はまだ不動産の契約書にはまだ暴力団に関する文言・別紙誓約書はなかったと記憶しています。

(この2年後くらいに全国に先駆けて福岡県の暴排条例の一文が契約書に載りました)


  当時の勤務地は福岡県北九州市○○区で、私は当時仲介歴3年目でまだまだ不動産経験が浅い頃でした。

会社から任意売却の案件を担当するように言われ、ある公庫の任売案件を担当することになりました。



最初にわかっている内容は以下の通り。


 ・物件は○○警察署そばの7階建てのマンションの最上階。
  ワンフロア2件しかなく、全14戸。

 ・公庫からの売却依頼で、公庫の他に1件債権者がいる。

 ・過去賃貸にしていたらしく、所有者はほとんど現地には住んでいない。

 ・このマンションは管理組合も管理会社もない。
  理事長にあたる人も当然いない。

 (管理費を集め、清掃会社・エレベーターメンテの依頼をしている
  管理会社はある)

 ・他の部屋の入居者はほとんど賃貸で入居していて、
  所有者は遠方にいる。

 ・1階にはパソコン教室が入っているガラス張りのテナントあり。


初めて任された任売案件というのもありますが、今まで経験したこともない不思議なマンションでした。

ただ駅に近く、価格の安さもあいまって売出した途端、他社付けで購入客がつきました。


二番抵当者との接触もしていないうちに購入客がついたことから、慌てて契約の手続きをはじめました。


二番抵当者との交渉に時間がかかり、契約予定日直前でマンションの調査を開始したのですが、

「管理会社ナシ」「管理組合ナシ」「理事長ナシ」「入居者はほとんど賃貸人」で調査は難航しました。


管理費の口座を管理している会社に接触すると、管理費を各オーナーの口座から引落し、それを清掃会社・エレベーターメンテ会社に払らう業務をどこかの部屋のオーナーから依頼されたとのこと。

その依頼したどこかの部屋のオーナーはその後部屋を売却し行方知れず。

口座を管理している会社は辞めるにやめられず、依頼された内容で各オーナーの口座より引落し、マンションのメンテ管理を続けているだけで、それ以外のことは聞かれてもわからないとのこと。


1階のパソコン教室に行くと、自分たちも賃貸人で建物のことや他の入居者のことはわからない。
オーナーは○○市の人だが住んでないので何も知らないと思いますとのこと。連絡先は教えてもらえず。


念のため「他の入居者に変わった方とかいます?」と聞きましたが『知らない』との回答。


とりあえず他の入居者も応ろうと2階、5階の入居者に接触できましたが、いずれも賃貸人。

何を聞いても『よくわからない』と回答。


対象物件の所有者も5年以上住んでないので分からないの一点張り。当然、公庫も何も知りません。


困ってしまったのですが、調査は尽くしたと判断。重要事項説明書・契約書の作成に取り掛かりましたが、

【当マンションには管理規約がありませんので、建物の区分所有等に関する法律の定めによります】の一文が多数並ぶ奇妙な重要事項説明書が出来上がってしまいました。その他にも【管理費が徴収されていますが使徒は不明です】

など、普通見たらこんなマンションは買わないと思うようなひどい内容でした。


  当時、弊社(勤務先)の重要事項説明書は某財閥系不動産会社との共同仲介の形式でもあるので、東京の本社の審査も受けていたのですが、すぐに判断がつかず、時間切れとなり契約に望むことになってしまいました。


その後、無事引き渡しも終わった後で購入側の仲介業者から『購入客から1階の正面エントランスに黒塗りの車が乗り付けて、中からサングラスをかけた強面の人たちが101号室に出入りしているけど、何か知ってます?』と電話で連絡が入りました。


一気に血の気が引いて嫌な予感がした私は現地を見ると、黒のフルスモークのセダンがパソコン教室の前に斜めに強引に突っ込んで停まっていて、中から黒スーツの一団が101号室に入っていきました。


慌てて近くの○○警察署に飛び込み、事の経緯を説明。101号室のことを聞くとアッサリ『ココは●●会の組事務所ですヨ。事務所として指定されてるからウチもお教えできます』とのこと。


  ご存知とは思いますが、北九州市は最も危険と言われる九州最大の武闘派の指定暴力団「●●会」があり、ところどころ組員が潜伏しています。

とはいえ、個人情報でもあるので警察は○○に暴力団員が住んでいるとの情報は開示できませんが、【事務所指定】されていれば教えることはできるとのことでした(積極的に開示しているわけではない)。

 警察から『調査義務違反だネー。残念。』と他人事のように笑われたのを今でも覚えています。


しかし、当時は暴力団事務所の調査などは管理会社の調査資料でなければこちらは知る由もなく、基本の調査フローのどこにもそんな作業はありません。(ヒアリング調査は101号室に関しては1階のパソコン教室に聞いていたこともあり、訪問はしていませんでした)


とはいえ、「警察に聞く」という調査方法が存在している限り、買主に対し調査漏れであったことは言い訳ができず買主側の仲介業者を通じて謝罪しました。


しかし、このときは幸運にもクレームにはなりませんでした。

買主側の仲介業者曰く『3階に仲のいい友人が住んでいたらしく、それが目的で購入した。自分は7階なのでほとんど会わないので気にしてないけどネ』とのこと。


そういう問題ではない気がしますが、そのときは大事にはなりませんでした。その後、101号室は数ヶ月前に競売で●●会が取得していることがわかりました。

今思うと、ヒアリングした人たちはみんな●●会のことを知っていたが、関わり合いたくないので『知らない』と答えていたのではないかと思います。

もし101号室に調査に入ったら今頃私はどうなっていたか身の毛がよだつ思いです。


長くなりましたが、この暴力団事務所の調査はどこまで行うことが正解なのかがわかりません。


取引の当事者が暴力団人か否かであれば、今回の件は違反とはいえないですが、マンションだと生活環境の調査義務の時点でアウトの判断がでていたかもしれません。

「知っているかいないか」ということで逃げられるのかもしれませんが、現在の暴排法が消費者保護の観点で判断するなら重大な心理的瑕疵を見落としたとして仲介業者の過失を問われる可能性があります。微妙ですが。

私が101号室に行って無事に帰れないリスクも考えると仲介業者の調査はどこまででとどめておくのが良かったのかもわかりません。


『では毎回警察に聞けばいい』と思うかもしれませんが、実はこの話には続きがあります。

その4年位後、私は不動産買取再販事業部に在籍していて、福岡県○○市のある自主管理のマンションの買取案件がきたことから
そのマンションの調査を行っていました。

(取引調査は仲介業者に任せますが、こちらもプロなので裏付け調査を必ず行うというスタンスを取っています)


「自主管理」と聞いた時点で○○のマンションのことが頭をよぎり、近くの警察署に「購入検討をしているマンションに暴力団の事務所がないか確認しにきた」というと、窓がない別室に通され、大型のマスクを付けて人相をわからなくした警察官にまるで尋問のような取り調べを受けました。


前回の○○警察署での経緯を説明しましたが取り合ってもらえず、結論から言うと「教えてもらえない」ということでした。


進め方に問題があったかもせれませんが、その時の警察の説明は指定暴力団の事務所かどうかも知ってても教えるわけにはいかないという説明でした。○○警察署とは逆の見解でした。


と、なると普通の不動産屋レベルでは調べようがないということになります。


その後、会社として自主管理の物件は取扱い不可。管理会社から出る調査報告書をもって暴力団調査したということになりました。


結局、この疑問は私の中で先送りになり現在に至ります。


以上が昔、私が経験した苦い経験談です。かなり昔のこともあり、一部不確かな箇所もあるかもしれませんができるだけ

当時の状況を思い出して書いています。


あれから10年以上経ち、世の中に暴排法も浸透してきて、もしかすると画期的な調査方法ができているのかもしれません

 仲介業者として暴力団事務所の調査はどこまで行うことが正解なのか、
是非○○様のお知恵を拝借できないかと思います。


非常にお忙しい身の上と思いますので、返信はお手すきの時にでも構いません。


今後におきましても、○○様が不動産の現場で実践できるセミナーを開催される際は是非とも参加させて頂きます。


乱文長文にて失礼いたしました。

メールにて恐縮ではございますが、○○様の今後一層のご活躍をお祈りいたしております。


                                                 敬具

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