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酒粕を再利用した「発酵マヨ」を生産。セレクトショップとして全国の逸品もそろう「SANABURI FACTORY」

稲とアガベが運営する加工場&ショップ「SANABURI FACTORY」。2023年4月のオープン以降、醸造所の枠を超えた取り組みと目新しい商品の開発により注目を集めている、男鹿のホットスポットです。

「SANABURI FACTORY」では、醸造所から出る酒粕を加工した「発酵マヨ」のほか、秋田を始めとした全国各地の作り手による生活雑貨や伝統工芸品を取り扱っています。

全国の酒蔵が抱える悩みのたねのひとつに、酒粕の処理が挙げられます。一般家庭での消費が年々減少しているのが理由ですが、そんな酒粕をごちそうに生まれ変わらせるのが「SANABURI FACTORY」です。

この記事では酒類業界の革命児ともいえる「SANABURI FACTORY」についてご紹介します。

SANABURI FACTORYとは?

秋田県男鹿市、男鹿駅から徒歩2分という好立地に誕生した食品加工場&ショップ「SANABURI FACTORY」。

店名は、秋田の農家に残る田植え終わりの宴の風習「早苗饗(さなぶり)」から命名されました。そこには稲とアガベ株式会社代表・岡住さんの「廃棄リスクのあるものを宝物に変えたい」という想いが込められています。

施設内には加工場内で製造した商品のほか、ここでしか販売していない稲とアガベのお酒も販売。県内の職人の手によって作られた器やアクセサリーなど、暮らしを彩る生活雑貨等を販売するセレクトショップが併設されていて、地域活性の一端を担っています。

廃棄される酒粕を宝に変える「発酵マヨ」

お酒をつくる工程で、廃棄されることの多い酒粕。岡住さんはそんな酒粕の活用に活路を見出し、食品加工場「SANABURI FACTORY」のオープンに向けクラウドファンディングを実施しました。その結果、代表商品「発酵マヨ」は多くのファンや関係者の間で反響を呼び、1200万円超の支援を獲得しています。

「発酵マヨ」の原料となる酒粕は、甘酒や奈良漬け、時には家畜の餌などに活用されてきましたが、その消費は年々減少し、産業廃棄物として処分される量が増加していると言われています。

環境問題はもちろん、処分にかかる費用は酒蔵の負担となります。それを好循環へと変える鍵になるのが「発酵マヨ」。酒蔵の負担を減らすだけでなく、日本酒を飲まない人にも手に取ってもらえる革命的な商品です。

「SANABURI FACTORY」では、酒粕を用いながらも現代の食生活に馴染む多様なラインナップが揃っています。発酵マヨ(プレーン)は酒粕の酸味と旨みによって通常のマヨネーズのような味わいを再現しており、いつものマヨネーズの代わりに楽しめる定番商品。その他、からし、トリュフ、青のりなど、醸造所ならではのお酒がすすむフレーバーが用意されています。

発酵作用で旨味が増大した酒粕は、美容や健康に役立つ栄養素も数多く含まれています。廃棄となるはずだった酒粕は生まれ変わり、卵アレルギーや国内外のビーガン志向の人々など、従来の稲とアガべのファン以外のお客さんにも身近に感じてもらえる商品へと生まれ変わりました。

マヨネーズ以外に発酵カスタード、発酵ケチャップなどの新しい商品も続々登場。そのほか、ここでしか買えない限定酒など、稲とアガベの魅力が詰まった商品が並んでいるので、男鹿のお土産選びにも大活躍です。

生活を彩る全国の雑貨が集まるセレクトショップ

「SANABURI FACTORY」では、店舗担当の遠田葵さんがバイヤーとして厳選した全国のメーカーの商品も取り揃えています。「SANABURIに来たからこそ買える商品をそろえたい」、「作り手の思いを感じることができて、なおかつ実用的な生活雑貨をセレクトしている」という遠田さんの想いの元、お店には、例えば以下のような商品が並んでいます。

【ヤマチク】(熊本県南関町)
半世紀以上、熊本県で純国産の天然竹を人の手で一本一本刈り取り、削り、「竹の箸」だけを作り続けている日本で唯一の純国産天然竹箸のメーカー。

【Komons】
一家のお父さんが家族のためにつくった植物由来の洗剤を扱うホームケアブランド。排水された後の生分解性にもこだわりながら、環境にもやさしく、使い手にとって心地よい商品がそろっています。

【川連漆器:遠田漆器店】(秋田県湯沢市)
遠田さんの本家。こだわりの原木を煙で燻す昔ながらの乾燥方法で、800年の歴史を持つ川連漆器をつくり続けています。

「お酒が好きな人はお酒の棚しか見なかったのが、遠田漆器店のお猪口を置いてからショップ側も見てくれる人が増えた」と遠田さんが言うように、まさにお酒好きと雑貨好きをつなぐようなアイテムです。

「SANABURI FACTORY」と同じく古い建物をリノベーションしている工房など、稲とアガベと通じる哲学を持つ全国からの逸品と出会えるのが魅力です。

シャッター街から、わざわざ足を運びたくなる町へ

2023年11月、「SANABURI FACTORY」では、新たに2階もオープンしました。2階では作家さんの器や洋服、革靴などの商品が置かれています。

今年2024年からは「SANABURI marche」という企画もスタート。男鹿で月一度開催されるマルシェイベント「ひのめ商店」に合わせて、店内に出店者を集めて開催しています。

「発酵マヨ」は、現在は稲とアガベで酒造りをする際に出る酒粕を利活用していますが、将来的には他の酒蔵の酒粕も買い取って、価値ある商品に変えていく予定だそう。蔵の垣根をこえて、古き良き伝統を現代の技術でサステナブルに繋いでいく「SANABURI FACTORY」から今後も目が離せません。

◆店舗情報
- 営業時間:10時〜16時
- 定休日:なし
- 住所:秋田県男鹿市船川港船川字栄町6-2

この記事の担当ライター

篠 実里
商社勤務後、趣味の酒蔵めぐりが高じて千葉の酒蔵で日本酒作りに従事。その後中東ジョージアに滞在し、人とワインの密接した関係に感銘を受け、福岡の酒蔵宿にて日本酒の魅力を発信。幼少期をメキシコで過ごしたため「稲とアガベ」に縁を感じている。
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