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ラーメン店のなかった男鹿駅前に誕生! 稲とアガベの「おがや」について

2023年8月、稲とアガベが男鹿駅前に念願のラーメン店「おがや」を出店しました。

人口減少率が全国1位の秋田県の中でも、ひときわ過疎化が進む男鹿市。駅前には昼夜問わず、ひっそりとした雰囲気が漂っていました。

そんな地域にラーメン店が生まれた影響は大きく、いまや市内外からたくさんの人が集まる人気店に。「一風堂」を運営する「力の源ホールディングス」が監修するラーメンのレベルは高く、全国のラーメンファンからも注目を集めているのです。

クラフトサケとラーメンで地域を活気づける稲とアガベ。本記事では稲とアガベが経営するラーメン店「おがや」の魅力とその背景を紹介します。

「おがや」とは?

稲とアガベがオープンしたラーメン店「おがや」。男鹿駅から徒歩2分ほど、稲とアガベ醸造所の目の前という優れた立地条件を持っています。

カウンター10席程度という小ぢんまりした空間で提供される「男鹿塩ラーメン」は、男鹿の素材がふんだんに詰まった一杯。

スープには、稲とアガベの仕込み水でもある男鹿の名水「滝の頭」の湧き水を使用。秋田高原フードが育てたブランド鶏「高原比内地鶏」の鶏ガラと「もみじ※1」という部位から、丁寧に出汁を取っています。

※1:鶏の足先のもみじのような形をした部分のこと。コラーゲンが豊富で、美味しいダシが取れる。

クリアなスープには黄金色に輝く鶏油が浮かんでおり、ひと口すすると、透き通った見た目からは想像できない濃厚な旨味が広がります。同じく男鹿市にある諸井醸造が醸す魚醤「しょっつる※2」と男鹿の塩を使用しているため、塩ラーメンながらも力強くパンチのある味に仕上がっているのです。

※2:ハタハタを使用した秋田生まれの魚醤。おがやでは、伝統的な製法を復活させた諸井醸造の熟成しょっつるを使用している

さらに、2023年11月には醤油ラーメンも登場。ベースとなるスープは共通しつつも、秋田県仙北市の老舗醤油メーカー・安藤醸造の生醤油、再仕込み醤油、そして福岡大名の上久醤油の3種類をブレンド。醤油の重層的な味わいに加え、塩と同じくしょっつるによるコクが食欲をそそる一杯です。

トッピングはほうれん草、自家製メンマに加えて、稲とアガベの麹を使用した燻製チャーシューを別皿で提供。それぞれラーメンの具材としてはもちろん、ビールやクラフトサケのおつまみとしても最高にマッチします。

クラフトサケは「ラーメン専用稲とアガベ」を提供。「ラーメン女子」の森本聡子さんがプロデュースした商品で、甘酸っぱくすっきりとした味わいは、驚くほどラーメンにピッタリ。醸造所ならではの、意外性のあるペアリングが楽しめます。

ラーメン専用稲とアガベ

食事としてだけではなく、ちょっとした飲み屋としての需要も満たしてくれる極上のラーメン店おがやは、地元の方はもちろん、市外の人からも人気を博しています。

クラフトサケが秋田と博多を結ぶ

おがやのメニューは、博多発祥の有名ラーメン店「一風堂」を運営する力の源ホールディングスが監修しています。東北と九州という遠く離れた2つのラーメン店が、まだ一風堂のない秋田県で、なぜ繋がることになったのでしょうか。

おがやと一風堂をマッチングさせた存在は、稲とアガベが製造するクラフトサケ。力の源ホールディングス会長・河原氏が、稲とアガベの「ホップどぶろく※3」を気に入ったことをきっかけに、一風堂店舗へ商品提供の依頼があったのです。

※3:ホップを使用したクラフトサケ。フルーティな香りと、どぶろくとしてはとてもクリーミーななめらかさが特徴的。

残念ながら、当時の在庫状況から依頼に応えることができず、一風堂への提供は実現しませんでした。しかし、稲とアガベの岡住代表がもともと「男鹿にラーメン店を開きたい」という思いがあったことを打ち明けると、地方創生に力を入れている一風堂が協力したいと申し出ます。

一風堂・山根代表と稲とアガベ・岡住代表

2023年3月には両社合同でレシピを検討し、ラーメンの方向性を決定。同年5月には一風堂浜松町スタンドにて先行試食会を開催し、ファンに「男鹿塩ラーメン」をお披露目しました。

さらに、もうひとつの偶然が。当初から「ラーメン屋をやるなら絶対蔵の前がいい」と考えていた岡住代表。醸造所の前のテナントに空きが出たため内見すると、カウンターとキッチンといういかにもラーメン店のような内装だったといいます。

確認してみたところ、そこは実際、20〜30年前まではラーメン店だった物件でした。運命を感じた岡住社長は不動産屋に連絡して契約。晴れて2023年8月4日、ついに男鹿駅前に念願のラーメン店を出店するに至ったのです。

一風堂が持つ「ラーメンを通して地域課題を解決する」という想いと、稲とアガベが持つ「男鹿の魅力を詰め込んだラーメンで町に人通りを取り戻したい」という想い。両社の気持ちが一致したことと、いくつかの偶然が重なり、おがやは誕生したのです。

地域に無いものが欲しいなら作ればいい

おがやができる前の2022年5月、稲とアガベはゴールデンウィークの地域イベントでラーメン店を出店しました。醸造所がある男鹿の船川地区にはラーメン店が無かったこともあり、2日間で100食を即完売するという大盛況ぶり。以降、地域の方々から「ラーメン屋はいつやるの?」と期待の声を寄せられるようになりました。

「ラーメンは地域を知ってもらう存在として有望」と岡住代表は話します。お酒好きが酒蔵を訪れるように、ラーメン好きも全国各地の店舗を巡る傾向があるのです。

「人口全体を考えると、お酒好きの割合は多くありません。その点、ラーメンは国民食です」と岡住代表。お酒は飲める人にしか届かないため、市場が小さいですが、その分ディープなファンが育ちやすい。一方で、ラーメンは市場が広い。それぞれのメリットを上手く活かすことで、より多くの人が男鹿を訪れてくれると考えるのです。

稲とアガベの麹を使った燻製チャーシュー

もちろん、観光に訪れる人たちの前に、おがやは地元の人のためのお店でもあります。「ラーメンの原料費を考慮すると、本当は1500円くらいで出さないと元が取れない」と苦笑いする岡住代表。しかし、価格を上げてしまうと地元の方々が気軽に来れなくなってしまうため、地元ファーストの意識を持ちながら、ギリギリまで削った価格で提供を続けています。

これまでラーメン店が存在しなかった町に生まれたおがや。岡住代表は「欲しいものは、自分で作っていけるんだよ」ということを、地元の子どもたちに見せてあげられたと胸を張ります。

国民食のラーメンで男鹿を活気づける

昨今の健康志向の高まりを受け、アルコール市場規模は縮小の一途を辿っています。稲とアガベが目指す地方創生の実現には、クラフトサケなどのお酒に限定すると少し難しいのかもしれません。

岡住代表が話す通り「ラーメンは国民食」です。ディープなファンが多いクラフトサケと求心力の高いラーメンを組み合わせることで、より幅広い人に男鹿の存在をアピールすることができます。

2023年12月現在、次の一手として袋麺の開発を進めているおがや。2024年2月末日まで、クラウドファンディングサービス「Makuake」にて先行発売を実施しており、すでに多数の支援を獲得しています。

全国の食卓におがやのラーメンが広がれば、秋田や男鹿へ興味を持ち、実際に足を運ぶ人も増えるはず。稲とアガベは、人々に愛されるラーメンのクオリティをさらに磨き、今後もより一層地域を活気づけていきます。

◆店舗情報
- 営業時間:11:00~ スープがなくなり次第終了
- 定休日:月曜・火曜
- 住所:〒010-0511 秋田県男鹿市船川港船川字新浜町13

この記事の担当ライター

新井勇貴
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターとして活動開始。飲食関連、地域情報を中心に執筆しながら日本酒に関する情報を発信しています。クラフトサケとの出会いは「稲とホップ」。
SAKE DIPLOMA/唎酒師
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