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激情と静寂 Envy(バンド)について

高校時代、毎日学校では寝てばかり、周囲とも馴染めず自意識過剰で、
多感、暗い高校生活を送っていたときだった。
周りの友達が聴いている音楽、テレビ、ラジオ等から聴こえてくる安っぽい音楽、愛だの恋だのを聴いても、何かが違う。現代の閉塞感や、悲しみ、世界に対する敵意や不安、絶望など、自分の内面と照らし合わせてみてもどうもしっくりこない。
日本は平和だという一方で、年間3万人の自殺者がいる。毎日人身事故が起きている。
混沌から目を逸させる様なものばかりが溢れていて、意図的気に平和ボケさせられているのでは?なんて思っていた。
もっと切実なものが欲しかった。もっと本質的なものが。
この内面の不安と苦しみに真正面から向き合っているものが。
Envyの音楽を聴いた時、最初は戸惑った。代表曲の一つと言っていいLefthandや、chainwanderring deeplyを聴いた時の衝撃は大きかった。

参考動画

自分の内面にフィットし、
絶望や怒り、悲しみといった感情を、ここまでストレートに表現した音楽には出会った事が無かったのだから。心を鷲掴みにされた気分だった。
偽善や癒しなんかここには無い。耳障りの良い言葉など一切ない。
ストレートに表現するからこその切実さと、そして何よりそこには誠実さがあった。
だからこそ、救いがあった。このままの、ありのままの状態でいいんだ、と。
音楽的には激しくて暗いかもしれないが、不思議な安心感と、そのままを表現、見ることによる解放と癒しがあった。
そして、誠実だからこそ得られる、表現することができる、
希望や、優しさ、強さにも同時に出会う事ができた。
また、雑誌のインタビューなども受けず、ひたすらストイックに、
純粋に音楽のみで勝負している、という姿勢に感銘を受けたと同時に、
現代のヴィジュアルありきの音楽シーンがいかに本質からかけ離れているかという事を感じた。
「言葉で表現するのは野暮だと思うんで」と、Voの深川氏はライブの時に言っていたが、
ここまで言えるのは、純粋に音楽の伝わる力というものを分かっているからなのだと感じた。
情報ばかりが頭に入り、目と脳だけ動かしがちで、感性というものが育ちにくい、無視されやすいのが今の環境なのかもしれない。
しかし、感性こそが本当に人を豊かにし、同時にこれからの未来を切り開いていく力にもなるのではないだろうか。
そういった、感性を育てる、拡げる、といった意味でも、Envyの様な音楽に触れてみる事は価値のあることだと思う。

※2013年頃に書き上げたものです。
今でもこのバンドは一番のお気に入りです。
何回救われたか分かりません。

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