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d.schoolの教科書『CREATIVE ACTS FOR CURIOUS PEOPLE』に学ぶ -創造的思考と挑戦の実践-

こんにちは!UXteamのそらっちです。

今回はUXteamでアメリカ視察に行った際に購入したd.schoolの教科書「CREATIVE ACTS FOR CURIOUS PEOPLE」についてご紹介したいと思います。


そもそもどんな本?

「CREATIVE ACTS FOR CURIOUS PEOPLE」は直訳すると「好奇心旺盛な人のための創造的な行為」になります。こちらの意味について本書では具体的に以下のように解説しています。

現代の世の中では、複雑な問題に対処し、探究心や前向きな行動が不可欠です。『Creative Acts for Curious People』では、立ち直りや思いやり、自信を身につける方法が紹介されています。スタンフォード大学のd.schoolでは、様々なバックグラウンドを持つ人々が大胆なプロジェクトに取り組んでいます。この本は、不確実性に直面し、好奇心と創造性を育むためのツールを提供しています。80以上の革新的な演習や新しいアイデアの追求方法も紹介されています。さらに、観察力やコミュニケーション能力を向上させ、創造的なリーダーシップを発揮する方法も学ぶことができます。この本は、アイデアを行動に移し、より深い洞察を得る手助けとなるでしょう。

つまりあくまでデザイナーだけに向けた本ではなく、「複雑な問題に対処し、プラスの変化をもたらすためのスキルを身につけたい人々」に向けた「立ち直りや思いやり、自信を育む方法と不確実性に直面した際に好奇心や創造性を活かすための手法や演習」について記載されている本になりそうです。

今回は本書を引用しながら特に基本となる演習についていくつかご紹介したいと思います。

Blind Contour Bookend

この演習は、自分のアイデアがすべて素晴らしいというわけではないことを理解し、アイデアを出す時と評価する時を区別する習慣を身につける、自分の仕事の質に 自信がなくなったとき、または自分の可能性に疑問を感じたときに行うものです。自分を否定せずに作る楽しさを知ることができ、最後には自分を責めずに、ただ作りたいものを作ることができるようになります。

本書ではこのようなスキルを習得するために以下のような演習を提案しています。

1. ペンと紙を用意します。
2. あなたのいる場所から見える人を特定します。どこにいても構いません。たとえば、電車に乗っているときや公園にいるとき、会議中にいるときなどです。
3. その人物を見つめながら、1~2分間かけて描きます。重要なのは、紙を見ずに、またペンを紙から離さずに、相手を描くことです。手を上げたり、見たくなったりしても、紙を見てはいけません。これにより、自分の判断意識がどこにあるか、どのように感じるか、どのように聞こえるかを認識することができます。
4. 描き終わったら、じっくりと見ます。自分の判断が重要ですが、批評を保留することもできます。自分の絵について考え、以下ような質問に答えます。「素晴らしい絵を描けたか」「それはどんな感じだったか」「途中で笑ったか」「もしそうなら、その笑いは何についてのものか」「自分の心はどのようなことを感じたのか」「またそれは自身に何を訴えかけていたのか」
5. 最後に、自分の進歩を考えてみましょう。この演習を通じて、自己批評に向き合い、制作することを楽しむ能力を高めることができます。

Creative Acts for Curious People

この演習では見たものを書くという簡単な行為を通して、まずは少しやってみるというマインドセットを身につけることができるものだと思いました。デザイン思考の基本的な考え方として「build to think」というものがありますが、まさにこの演習が体現していることの一つだと感じました。

また、自身が考える範囲ではバイアスや自分の想像の範疇を抜け出すのは非常に難しいです。そのため物事を静かに観察し、手を動かすという意識を忘れずに創造的な活動をしていきたいと思いました。

How to Talk to Strangers

オンラインでのやり取りが増える中、今まで話したことのない人に直接話しかけることが難しくなっています。見知らぬ人との接触に対する警戒心や恥ずかしさが増幅されています。

デザインの仕事ではこの障壁を乗り越える必要があります。アイデアを見出したり、先入観を克服するためには見知らぬ人へアプローチすることが重要です。

本書ではこの問題に対し3つのレベル感で以下のような演習を提案しています。 

Level 1
1. 家から図書館などの目的地を設定します。
2. 目的地まで歩きます。
3. 途中で道ですれ違った人々に挨拶します。
4. 1分間で何人に挨拶したかを数えます。
5. 挨拶に対する反応を観察します。
6. 自分の心境や感情の変化を考えます。

Level 2
1. 初めて話した相手と共通して見える物体を見つけます。
2. その物体について素直な対話を行います。例えば、「すごいな…そのリンゴはこの食料品店で買えるの?ここで扱っているとは知らなかった。美味しいの?」のような感じでです。
3. 交流した感想や、選んだ物体について考えます。
4. これらの内容から自分の思い込みに挑戦することの価値を見出します。

Level 3
1. 道に迷ったふりをします。
2. 見知らぬ人に近くの特定の目的地への道順を尋ねます。
3. しかし、自分が本当に行きたいと思っている目的地を設定します。
人に道を教えてもらったら、地図を書いてもらいます。
4. 彼らが地図を描くことに同意した場合は、電話番号も教えてもらうように尋ねます。
5. 電話番号を教えることに同意した場合は、電話して応答するかどうかを確認します。
6. 応答した場合は、助けてくれたことに感謝し、目的地に到着したことを伝えます。

Creative Acts for Curious People

これを見て私はなかなか実行の難しい演習だと思いましたが、海外ならではの未知への挑戦へのアプローチだと感じました。具体的にそれぞれのレベルによって得られる学びとしては以下のようなものが考えられます。

level 1
・見知らぬ人と話すためのウォーミングアップを行うことができる。

level 2
・見知らぬ人との交流の恐れを克服することで解放感をもたらし、自己成長につなぐ。
・自分の思い込みを見直し、他者との関わり方を再考するきっかけを作る。
・最初のものと比較することで、経験の差を振り返ることができる。

level 3
・あなたに多くの豊かな感情と熟考する経験を与えてくれる。
・共感と洞察を得るためのスキルを向上させることができる。
・自身がいかに簡単に不透明なやり取りに陥ってしまうかを見直すことができる。

Creative Acts for Curious People

初めて話す人に対して、「挨拶をする」「共通点を見つけ身近なところからアプローチする」「無理を言ってしまったことに対して素直に伝えることと感謝を伝えること」はとても重要で基本かもしれませんが、オンライン化が進むにつれてつい忘れてきてしまうところだと思います。

この演習で新しいものや未知のものへリスペクトを持ちながら能動的及び積極的に物事へアプローチすることが重要であると学ぶことができると感じました。

A Seeing Exercise

この演習では、見えないものに注意を払うことで、デザインや創造的な仕事の多くの機会が生まれることを学ぶことができます。

脳はいつも情報を選り分けていますが、そのフィルターをコントロールすることで新しい気づきが得られます。また、このような観察力はデザイナーにとって重要であり、日常の詳細に注意を払うことで、よりリアルで生き生きとした作品を生み出すことができます。

本書ではこのようなスキルを習得するために以下のような演習を提案しています。

1. 実生活から描かれたドキュメンタリー写真を見つけます。
2.  選んだ写真をじっくり観察します。写真で何が起こっているのか、何が伝えられているのかを考えます。細部にも注意を払い、写真に映っているものやその状況について考えます。ここでは15分の制限時間を設けます。
3. 次に、自分にいくつかの質問を投げかけます。例えば、「この写真では何が起こっているのか?」「何がそう言うのか?」「他に何が見えますか?」「何がそう言うのですか?」などです。
4. 観察した内容や思考を日記や記録に残します。
5. この演習を定期的に行います。日記や記録をつけ、1日に1回のペースで演習を行います。最初は写真ごとに数ページを埋めることから始め、徐々に観察力を向上させます。

Creative Acts for Curious People

この演習の重要な点はこの一連の作業を定期的に行う点に挙げられると思います。ドキュメンタリーな写真や自分の身近な写真について観察し、目を鍛えることで普段生活している際も自然と観察眼を鍛えることができるようになると思うからです。

また、言語化することで自分が想像していることに客観性を持たせるトレーニングにもなるので抽象と具体の行ったり来たりを繰り返す練習にもなると感じました。

終わりに

私は英語をスラスラと読むことができないので今回は英書を翻訳しながら読み進めました。(想像以上に時間がかかり、まだ本書も読み進め中です。)また、英書についてはしっかりと読んだことがなかったので日本人にはない比喩の豊富さや演習を考える際のアプローチ、考え方などとても勉強になりました。

最後に本書の中に出てきたものの中で自分の指針としたいと思ったものを記したいと思います。

劇的な変化の時代には、未来を担うのは学び続ける人々です。知識豊富な人々は、自身がもはや存在しない世界に適応する能力を持っていることを自己認識することができます。

エリック・ホッファー


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