カタルシス 9-10

リサは言う

・・・

そこでのことは覚えているよ。
夏の休暇をみんなで暮らすサマーハウス。
仲良しのビッグファミリー。
わたしは本当に幸せだった。
これ以上なく満たされて、自信にあふれ、未来は希望だけだった。

そこから海へと続くはらっぱに、大きな一本の木があって、よく木登りしていたよ。
とても忘れられなくて、今生で産んだ娘の名前につけたほど。

これは誰にも秘密だけれど、わたしは彼女に、その景色に繋がる魔法をかけた。
何度も何度も、繋がってはひとりで泣いた。

そこで眺める星空が最高だった。
いつまでだってみていたよ。

ニューヨークを覚えているよ。
世界で一番行きたい場所は、ロックフェラー広場でのクリスマスツリー点灯式。ホリデーの喜びがきらきらと反射するスケートリンク。

今生で買った100年ノート「望み」のページに書いたくらい。

ブルックリンを覚えているよ。
大きな川沿いに連なる赤レンガ。誇りあふれるホームタウン。凍る街並みをみながら食べる、クラムチャウダーが大好きだった。


Ⅸ 隠者



覚えているよ。
わたしが死んでしまった海を。
わたしを探すお兄ちゃんの横顔を。
お母さんが泣いたこと。

愛されたこと覚えているよ。
忘れることなどできないよ。
心残りがありすぎて、わたしが分裂してしまったことを。

みんなにリサと呼ばれていた
エリザベスにも覚えがある

記憶がごっちゃになってるミシェルは多分、あの時呼んだ天使の名前
そして兄の名前かもしれない

助けろや(天使)と思うけど、たしかに共にはいてくれた

1961年8月生まれ1978年8月死去
あたたかい海で溺れしぬ
友人との手紙の末尾にxxxと書くのが流行り
ボストンシンフォニー、
寒い冬のクラムチャウダー、暑い夏のロブスター
性格はとても明るい
はらっぱの木に登って星をみるのが好き
家族親戚は多く、兄がいる


Ⅹ 運命の輪

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?