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イツエとわたしの青②-『あの小鳥はいつ泣くの』


今回からは音源1枚ずつについて話そうと思う。けど、その前に。瑞葵さんのInstagramに激ヤバ事件が起こっていたので紹介させてください。キャプションも引用しちゃう。

ふいに見つけたラブレターを読みました。
言葉をひとつひとつ丁寧に、読みました。

わたしはあなたの旅の途中でしかないと、きっといつかは忘れられてしまうものだと思っていました。

けれど、一生消える事のない火傷の跡のような言葉がひりひりと、わたしの胸を熱くさせたのです。

イツエは、あなたの青春でした。
そして、あの時のわたしのすべてでした。


こうやってブログを書いている人間とは思えないくらい語彙力が低下してしまいますね。激ヤバ事件です。Twitterにいいねが来て「うおー!」って思っていたら直後にこれが投稿されていた。私、お風呂でガンガン泣いちゃったよ。私の言葉に対して何倍も素敵な言葉が返ってきたね。

読んでもらえたり反応してもらったりというのはもちろん嬉しい。でも何より、活休後の瑞葵さんからイツエについてのこういうコメントを引きだせたことがよかった。多分ファンはこういう言葉を聞きたかったと思うの。

本当、火傷みたいだ。


1st demo『あの小鳥はいつ泣くの』  2010.11.01

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さて、イツエが初めてリリースした音源について。小さいサイズのジャケしかなかったよ。

『あの小鳥はいつ泣くの』、廃盤になっているデモです。曲もジャケットも最初の音源がこれって、とんでもないバンドが出てきたと思った人はいたと思う。私はこのときまだイツエを知らない。

このあたりの音源を聴くとイツエが重いとか病んでるとか言われてしまう理由がわかるんじゃないかな。でも、遠巻きにしないで。本当はきちんと愛があってこういう曲を作っていることが、彼らの歩みを追うことで段々とわかってくる。ただこのときは伝え方がちょっとだけ不器用だったのね。その不器用さが、イツエを好きな理由。

それでは、1曲ずつ。

1. セトラ

私がイツエのコピーバンドを組んだら無理を押してでもやりたいのがこの"セトラ"という曲。最初の音の入りで頭を殴られてしまった曲でもある。ひとみみ惚れ? はじめの印象としては冷たく感じられるかも。このあたりではよく嘘とか失うことに関して歌っていることが多い。メンバー全員がメロディみたいなのにまとまっている。好きすぎる。


「呼吸と世界のリズムが同じこと知っているの」という歌詞を聴いたときに衝撃を受けた。そんなこと、生活のどのタイミングで思いつくんです? 20歳になる前の女の子がそんな言葉や思想を身体の内側に隠し持っていたのよ。少しでも知りたくて『美徳のよろめき』とか『シュガーレス・ラヴ』とかを読み始めた高校生の私。懐かしいな。

イントロのギターの音色。久慈さんの音作りって1歩間違えると「ださい」の範囲に入ってしまいそうに聴こえないですか。それなのに絶対にかっこよくて真似できないってコピバンをしていた人が言っていた。危ういのに強くて、それが美しい。前回書いた、瑞葵さんのこの頃の危うさと相まって不安定さが前面に置かれたような曲だと思う。歌詞にもある「よろめき」という言葉がぴったり。

でもよろめいているだけで倒れずに済んでいるのはリズム隊がいるから。活動の最後の頃を思い返しても、ベースの馬場さんとドラムの吉田さんは最初から一貫して強さみたいなものを持っていたと思う。「ベース、重たい音だな(笑)」ってはじめに思った。それが曲の負担になる、みたいなことはもちろん、一切ない。馬場さんのルーツを知れば大納得なんだけど、大々的に言っていいものかわからないので言わないでおく。

やっぱりドラムが曲にまとまりを持たせているのだろうか。スネアの音がすごく好きだな。サビ前の16分を叩いているときもうるさくないし、ほかのパートと喧嘩していないでしょ。そういう、シンプルにまとまっているけど合間を縫って印象的なフィルを入れてきたりする形はこの頃から。

どの曲も好きだけど、この曲を聴くと「ああ、やっぱりイツエが好きだな」って気持ちになる。活休前あたりの曲とは多少違う雰囲気だけど、芯はこのあたりのデモから変わっていないことが嬉しい。きっとイツエが昔から好きな人は「あーこれこれ」ってなるよね。1音目からイツエの青に飲み込まれる、そんな曲。


2. ソロウ

この曲のこと、覚えておいてね。『いくつもの絵』の話をするまでね。私がついに1度もライブで聴くことができなかった曲です。

どこにも音源は公開されていない。聴けるのは、デモを買った人だけ。この曲のイントロがとっても好き。どうしてもベースがメロディに聴こえる。久慈さんは音数は少ないのに存在感のあるフレーズを弾いていて、イツエで1番のメロディメイカーなのでは、と思っています。

サビのドラムが16分(また16分の話する)を刻みながらシンバルとタムの音を混ぜていて、それまでのビートは辞めちゃうの!? ってびっくり。ああ、聴いてほしいなあ。吉田さんのドラムは音の粒が綺麗なんだ。瑞葵さんはこの曲の歌詞が恥ずかしいって後に語っていた。多分サビの部分だろうな。「真っ白が染まる前に」という言葉が使われている。そうそう、色をよく歌詞に使っていて、当時はそれらすべてが素敵だと感じたんだった。今でもそう思っているよ。

「悲しみの季節が終わる頃 泣いているんだ」

悲しみの季節っていつだろう。悲しい季節が終わるのに泣いてしまうのはどうして。終わるから最後に泣くの。あの小鳥はいつ泣くの? 小鳥はその季節の終わりに泣くのか。そうやってイツエの世界ばかり考える10代後半は始まったのです。


あの小鳥はいつ泣くの

もう生で聴くことはできないイツエの青の、そのまた深い、でもさっぱりとした瑞々しい青の部分。私はその青を人生の色にして、生きていく。こうして音楽は残っていくのだな、と思う。たとえ世間が忘れても、私は絶対にイツエを忘れることなどできないから。一生をかけて大事に、抱きしめさせてくれ。


前回から時間が経ってしまったけど、また次も書きます。

またね。



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イツエ

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珈琲を飲みに行きます