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『サルゲッチュ3』で僕が発明してしまったもの

中学生の頃、『サルゲッチュ3』というゲームに夢中になった。

https://www.amazon.co.jp/ソニー・インタラクティブエンタテインメント-サルゲッチュ3/dp/B0009Q0DMU

「サルゲッチュ」シリーズとは

「サルゲッチュ」はSCE(=現SIE)が製作したゲームシリーズ。「ピポヘル」という知能を飛躍的に上昇させるヘルメットを被ったサル達=「ピポサル」が実験室から逃げ出し、その捕獲を命じられた主人公達が冒険を繰り広げるゲームです。1作目はプレイステーション、2作目と3作目はプレイステーション2で発売されました。

各ステージ上にいる「ピポサル」を背後からコッソリ近寄って捕獲(ゲッチュ)していくそのゲーム性は、一見「ポケモン」のようでありながら、それは実際のところ当時『メタルギアソリッド』シリーズの発明により一大ジャンルとして成長した「ステルスゲーム」に分類されるものだったのだと思います。その証拠に『サルゲッチュ3』と『メタルギアソリッド3』がコラボしたミニゲームが互いのゲームの中に収録され、それもまた無類に面白かった。

また「3」ではストーリーが「ピポサル達がテレビ局を乗っ取り、テレビ番組を通して人間達を征服しようとする」というもので、それにちなんで各ステージがテレビや映画のパロディで構成されていたのも楽しかった。カウボーイ姿のサルから中世騎士風、温泉街の観光客、赤と青のコスチュームでビルを這い上るあいつ風から、黒い甲冑のようなマスクにマントをたなびかせるあの方風まで様々。

このようにゲーム性の楽しさ、PS1で導入された「アナログスティック」を使った独創的な操作性など、本編も大変面白く楽しんだのですが、僕が何より楽しかったのは『サルゲッチュ3』に収録された『サルシネマパラダイス』というミニゲームです。

「サルシネマパラダイス」

前述のように本作のテーマは「映画/テレビ」だからということか、なんと本作には映画を撮影できるミニゲームが収録されていたのです!

本編で捕獲したサル達をキャスティングし、セット(書き割り背景)を選択、1分間という決まったの中でサル達に演技をあらかじめ指示します。何秒の間にここからここまで歩くとか、飛び上がったり振り向いたりというアクションをさせ、「ウキッ!」とか「ウキョ?」とかいうセリフを言わせる。あとからそのセリフに合わせて字幕を入れることも可能で、そうして演技プランを指定したらアクションスタート!1分の間にプレイヤーは3D空間の中を演技していくサル達を、カメラを自由に動かして撮影していきます。勿論カメラはズームなども自在で、これがミニゲームにしておくには勿体ないほど「映画撮影シミュレーション」として優れているんです!

当時中学生だった僕は夢中になって、さながら8mmフィルムカメラを手に入れた在りし日の映画少年のように、PS2のコントローラーを握りしめオリジナル映画を撮影しまくりました。そしていろいろカメラワークを研究していくうちに、僕は未だかつて誰も観たことのないカメラワークを発明してしまったのです。

その手法はとても不思議な感覚を想起させる映像を撮ることができ、それが果たして映像表現にどんな効果をもたらすのか、当時映画の知識が浅い僕には見当も付来ませんでしたが、「こんなこと誰も思いつかなかったに違いない」と、僕は全能感優越感に満たされました。

その手法の名は…

しかし高校生になり、古い物から新しい物まで、映画をたくさん観るようになった僕は知ることになります。そのカメラワークの名は「ドリーズーム」と呼ばれるもので、僕の発明するよりも遥か前、というか僕の生まれるより遥か前から存在し、多用されてきた技法であるということを…。

「ドリーズーム」とは、被写体に対してカメラ本体を近づけ(=ドリー)、それと同時にレンズはズームアウトさせる(またはそれぞれ逆にする)ことで、画面内の被写体の大きさは変わることなく、しかし視野が広がる(狭まる)ことで画面内に収まる背景の見える範囲が変化する、という映像が撮影できる手法です。ヒッチコックの『めまい』やスピルバーグの『JAWS』で使用されているのが有名。
これを使用することで、観客には「おかしい感じ」「奇妙な印象」を抱かせることができ、シーン内の「恐怖」「異変」を表現することができる……のですが、僕の場合は違います。僕はこの手法が映画で使用されているのを観るたびに、恥ずかしい気持ちになるのです。あの、自分が世界で初めてこれを発明したと思い上がっていた自分を恥じる気持ちに…。

なにはともあれ、(偶然にしろ)「ドリーズーム」まで再現できてしまう程、『サルゲッチュ3』のミニゲーム「サルシネマ」は本当に優れた「映画撮影シミュレーション」であることは間違いないのでおススメです。

しかし惜しむらくは、最近「PlayStation Plus」というゲームのサブスクサービスが開始され、過去のプレステソフトをたくさんプレイできるようになりましたが、現在そのラインナップには『サルゲッチュ3』どころか『サルゲッチュ』1作目もありません。
なので本作をプレイするには、PS2本体とPS2用ソフトを中古で手に入れるか、PS3でダウンロードソフトとして購入するかしかないのです。
どちらもいつまでも手に入れられるかは定かではなく、前者は言うまでもないですが、特に後者はいつPS3向けのダウンロードサービスが終了するか分からない為、早めの入手とプレイをおススメします!

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